アスレティックトレーナーとは?理学療法士との違いや共通点について解説
公開日:2025.01.06
文:rana(理学療法士)
スポーツ選手に携わる職種にはさまざまな種類があります。
理学療法士のなかでもトレーナーを目指し、アスレティックトレーナーの資格を取得しようか迷っている方もいるのではないでしょうか。
どちらも体や運動の専門家ですが、業務内容や活躍の場に違いがあります。
この記事ではアスレティックトレーナーと理学療法士についてそれぞれの特徴や共通点、違いについて現役理学療法士が解説します。
目次
アスレティックトレーナーとは
アスレティックトレーナーはスポーツトレーナーの一種です。
トレーナーのなかでも、よりスポーツ選手に特化して健康管理や怪我予防、パフォーマンス向上を目指すのが特徴です。
一般のトレーナーと比べて、より専門的な知識が必要で、解剖学や生理学、怪我の種類などの医療知識が求められます。
主な就職先はスポーツチームやスポーツ系の医療機関で、なかにはJリーグやプロ野球チームの専属トレーナーとして働く人もいます。
アスレティックトレーナーの仕事内容
アスレティックトレーナーの主な仕事内容は以下の通りです。
・現場での応急処置
・アスレティックリハビリテーション
・コンディショニング
・フィジカルチェック
・健康指導
・サポートスタッフへの教育
スポーツ選手が良いコンディションで最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートするのがアスレティックトレーナーの役割です。
トレーニングプランの作成の他、指導をしたり、体のケアをしたり、時には怪我の応急処置を求められることもあります。
筋肉や関節といった体の知識はもちろん、テーピングやリハビリメニューの立案など、より専門的な知識が求められるでしょう。
アスレティックトレーナーに必要な資格
アスレティックトレーナーになるには、資格取得は必須ではありません。
しかし、自分のスキルを証明して働き口を広げるためにも資格は取得しておいた方がよいでしょう。アスレティックトレーナーにおける主な資格についてまとめました。
JSPO(日本スポーツ協会)公認アスレティックトレーナー
JSPO公認アスレティックトレーナーは、JSPO(日本スポーツ協会)が認定している資格です。取得すれば、スポーツ医学、運動生理学、アスレティックリハビリテーションなどの知識とスキルを有している専門家である証明になります。
JSPO公認アスレティックトレーナーの受講資格を得るには、日本スポーツ協会が開催する養成講習会を受講しなければなりません。
受講するには満20歳以上かつ関連団体の推薦と日本スポーツ協会の認可が必要ですが、推薦を受けるには関連団体においてアスティックトレーナーとしての実績がないと難しい場合があります。
さらに、養成講習会にも参加人数に制限があります。実績がなく推薦が受けられない場合、日本スポーツ協会の承認校に進学する方法もあります。
養成講習会と比べて資格取得までに時間がかかりますが、卒業すると、試験の一部が免除されるのがメリットです。
JATAC-ATC(ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチックトレーナー)
JATAC(ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会)によって認定される資格です。
ただし、JATAC-ATCの資格取得のハードルは高く、以下の指定された医療系国家資格のいずれかを所持している必要があります。
・理学療法士
・はり師・きゅう師
・作業療法士
・看護師
・保健師
・助産師
・救急救命士
・あん摩マッサージ指圧師
・栄養士
・薬剤師
・養護教諭
・言語聴覚士
これら資格のいずれかを取得していることに加えて、JATAC認定の講習を受講し、さらに通信教育講座のスポーツ科学分野で所定の単位を取得しなければいけません。
ただし、2年制以上の専門学校か大学、大学院でスポーツ科学系のカリキュラムを修了している卒業生は、国家資格がなくとも講習を受ければJATAC-ATCの取得が可能です。
BOC-ATC(米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)
BOC-ATC(米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)は、BOC(Board of Certification)が認定する資格で、米国でアスレティックトレーナーとして活動するために必要な資格です。
なお、米国では州ごとに法制度が異なり、BOC-ATC資格に加えて各州の認定や免許が必要な場合があります。
BOC-ATCを取得するには、アスレティックトレーニング教育認定委員会が定める大学のカリキュラムを修了し、修士レベルの教育プログラムを卒業する必要があります。
その後、アメリカの国家試験「BOCExam」を受験し合格すれば資格を取得できます。
アスレティックトレーナーと理学療法士の違い
どちらもスポーツに関わる仕事ですが、アスレティックトレーナーと理学療法士はどのような違いがあるのでしょうか。その違いについてまとめました。
活躍する場所
アスレティックトレーナーは主にスポーツチーム(プロ、アマチュア、実業団)、スポーツクラブ、トレーナー派遣会社などで働きます。基本的にスポーツ現場に携わるのが特徴です。
一方、理学療法士は病院、クリニック、介護施設、スポーツチームなどが主な就職先です。スポーツ現場だけではなく、医療分野でも広く活躍するのが理学療法士といえるでしょう。
資格の有無
アスレティックトレーナーとして働くには必ずしも資格を取得する必要はありません。ただし、知識やスキルの証明、肩書きになるような資格を有していた方が、就職を有利に進められるでしょう。
第一線で活躍するアスレティックトレーナーのほんどは何らかの資格を有しています。一方、理学療法士として従事するためには、国家資格の取得が必須です。
仕事内容
アスレティックトレーナーはスポーツ選手の体のケア、トレーニング、コンディショニング、リハビリなど、スポーツパフォーマンスに直結するサポートが主な仕事内容です。
理学療法士はスポーツ選手だけではなく、高齢者から小児まで幅広い層のリハビリを実施します。また、怪我だけではなく、脳血管障害、呼吸器疾患、難病など対象疾患も多岐にわたります。
スポーツトレーナーとして活躍するにはアスレティックトレーナーの資格取得も目指すべき?
スポーツトレーナーとして活躍するには、実績やスキル、人脈などが重要視されることがほとんどです。アスレティックトレーナーをはじめとする資格を持っていた方が有利ですが、理学療法士の資格のみでプロチームトレーナーとして活躍している人も大勢います。
どちらもスポーツトレーナーの道を開ける資格ですが、理学療法士の資格のみでもスポーツ分野に携わる機会は多く、スポーツトレーナーとして活躍することは可能といえるでしょう。
ただ、より専門的な知見を得たり、肩書きに強みを持たせたりするにはアスレティックトレーナーの資格取得は有効になります。将来を見据えて資格取得を目指すのも一つの選択肢といえるでしょう。
アスレティックトレーナー、理学療法士、それぞれの特徴を理解して検討しよう
アスレティックトレーナーと理学療法士は、どちらもスポーツ分野に携われる職種ですが、アスレティックトレーナーはよりスポーツに特化した資格といえます。
将来的にスポーツ分野で活躍したいと考えるならアスレティックトレーナーの資格取得を検討するのもよいかもしれません。
それぞれの特徴を理解し、今後のキャリアプランを検討したうえで、働き方や資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。
参考
アスレティックトレーナー|JASPO
JATAC-ATCについて|JATAC(特定非営利活動法人ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会)
ABOUT BOC-ATC|JATO

rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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