肺理学療法とは?評価のポイントや具体的な方法、注意点について解説
公開日:2025.01.08

文:伊東浩樹(理学療法士)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコの煙や大気汚染など有害物質を吸い込むことが原因として肺や気管支に炎症が起きてしまう疾患です。日本で約530万人の患者さんがいると推測されており、日本人の死亡原因9位に挙がります。
未治療の人も多い疾患といわれており、その実数はもっと多くなるのかもしれません。こうしたCOPDをはじめとする呼吸器疾患も、理学療法士のリハビリテーション(以下、リハビリ)対象です。
今回は、肺疾患に対する肺理学療法について解説します。
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肺理学療法とは?
肺理学療法とは、呼吸機能を回復するために行われる理学療法です。
別名「呼吸理学療法」とも呼ばれ、呼吸筋のトレーニングや、マッサージなどによるリラクゼーションを実施することで、肺機能や呼吸の不調の緩和を目指すものです。
肺理学療法を実施する目的

肺理学療法は、重度の慢性閉塞性肺疾患の方や、気管支拡張症の方、神経筋疾患の方、嚢胞性線維症の方、下肺領域における肺炎などの疾患がある方が主な対象です。
呼吸器の不調による息切れや運動耐用性低下、呼吸機能障害で生じる労作時の呼吸困難の緩和、呼吸困難による日常生活動作の低下改善などを目的に実施されます。
その他、気道感染や肺炎などで肺の中に痰が溜まっている場合において、増悪予防として痰などを外に出すお手伝いをすることもあります。
肺理学療法は症状の改善のみではなく、ADLやQOLの拡大と向上も目指すものです。
肺理学療法の評価方法
呼吸状態、肺の状態を評価する方法はいくつかがありますが、まずは所見で喫煙歴があるか否かを問診します。その後、咳、痰の有無を評価します。
さらに労作時の呼吸苦などを調べますが、いずれも確定要素としての評価項目とはなりません。
数字で見るべきなのは、スパイロメトリーなどを用いた呼吸機能検査の評価です。加えて、X線やCTなど画像所見を共有してもらいつつ肺機能等の全体像を評価します。
また、聴診器を活用して排痰がうまくできているかも確認しましょう。場合によっては、痰の位置を評価して排痰を促す手技につなげる必要があります。
肺の動きを見るために胸郭可動域も評価しておくとよいでしょう。
急性期で人工呼吸器を装着している場合は、ベッドサイドで経過と各種モニターからの数値の評価も行ってください。臥床時間が長い場合には、血液検査の結果から、筋力の評価や栄養状態も評価する必要があります。
その際、動脈血液ガスの所見もしっかり取っておきましょう。
回復期等を迎えると、パルスオキシメーターを装着してもらいSpO2を測定すること、また運動耐用性を評価するために6分間歩行などを行うといった評価に進めます。
自宅に帰ることを想定する段階になれば、ADL評価を実施したうえで、自宅に帰って呼吸で苦しむことなく生活することができるのかを判断する必要があります。
肺理学療法として実施される具体的な方法

肺理学療法として呼吸機能の回復を目指す際、いくつかの方法があります。代表例を紹介します。
リラクゼーション
呼吸器疾患の患者さんは、前傾姿勢を保つことで、リラクゼーション効果を与え、肺機能改善につながります。
呼吸苦や疲労度の減少を促すために上肢で体幹を支え、肘をついたような姿勢で前傾を保ち過ごしてもらいます。そのほか、歩行器歩行などを活用して前傾を保ってもらうこともあります。
呼吸練習
呼吸練習として、「横隔膜呼吸」と「口すぼめ呼吸」などが挙げられます。ただし、横隔膜呼吸に関しては、重症例ではかえって増悪してしまうという過去事例もあるため、注意が必要です。
まずは口すぼめ呼吸を実施し、一回あたりの換気量や酸素飽和度を増大させる訓練を意識した方がよいでしょう。
体位ドレナージ、タッピング
体位ドレナージやタッピングは、喀痰量が多い患者さんに適応される方法です。聴診によって痰の貯留が認められる肺野に対して、痰が排出しやすい体位へ調整することから始めます。
その際、胸部を軽打、もしくは振動を併用したタッピングを用いて痰の排出を促します。
呼吸筋トレーニング
中等度、もしくは重症の患者さんに対して行うのが、呼吸筋のトレーニングです。呼吸筋には、横隔膜や肋間筋などがありますが、意識して練習をすることが難しい筋肉でもあります。
具体的には、肩の上げ下げでリラックスしてもらったあと、深呼吸をする。その際に腹部を意識して息を吐き切るイメージで繰り返してもらうとよいでしょう。
肺理学療法を実施する際の注意点
肺理学療法を実施する患者さんのなかには、在宅酸素療法などを導入している方も少なくありません。
リハビリを実施する際には、SpO2などの急激な低下や疲労感、呼吸苦といった症状を見逃さないようにしましょう。
加えて、他の疾患や合併症がある場合や、体力のない患者さん、高齢患者さんにはリハビリによって増悪する可能性があるため、様子を見ながら無理なく進めましょう。
小児の場合には、呼吸介助の手技が有効なケースもあります。基本的なことではありますが、肺理学療法においても、年齢や疾患なども踏まえて、総合的に評価したうえでリハビリを実施することが大切です。
肺理学療法の注意点とまとめ
肺理学療法は普段、整形疾患や脳疾患に対して理学療法を行うことが多い理学療法士にとって、苦手意識を持つ分野かもしれません。
しかしながら、COPDをはじめとして呼吸苦等の症状を訴えている方も患者様のなかに多く見受けますので医師等と相談のうえ少しでも諸症状が良くなるようにリハビリを実施していきましょう。
参考
参考
MCDマニュアル 呼吸理学療法
日本リハビリテーション医学会 肺理学療法をめぐって
日本呼吸器学会
慢性閉塞性肺疾患 エビデンスに基づく理学療法

伊東 浩樹(理学療法士)
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。
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