老健での作業療法士の役割とは?仕事内容からやりがい、特養との違いを解説
公開日:2025.01.15
文:奏かえで(作業療法士)
作業療法士が活躍する場は、病院などの医療機関だけでなく介護施設もあります。その中の1つが老健です。
「老健ではどんな仕事をして、どんなやりがいがあるのか?」「特養との違いは?」「どんな人が向いているの?」などの疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
今回は老健で働く作業療法士の筆者が、老健での仕事内容、やりがいや苦労、特養との違い、向いている人の特徴を解説します。老健での作業療法士の仕事に興味がある人は、ぜひ最後までお読みください。
目次
老健は在宅復帰を目指す施設
老健の正式名称は「介護老人保健施設」といい、病院と在宅の間に位置する中間施設としての役割を果たす場所です。
入所サービスのほか、短期入所療養介護(以下、ショートステイ)や通所リハビリ(デイケア)などの提供も行います。入所は在宅復帰支援を、ショートステイと通所は在宅生活の継続支援が主な目的です。
老健は、主に次のような人々が利用します。
・在宅生活をしつつ機能維持・回復を目指す人
・退院後も専門的なリハビリを受けたい人
・日中家族が不在など、介護支援が必要な人
また、老健は介護保険の適用になった人が利用できる施設のため、老健で働く作業療法士の対象は高齢者が主となります。
老健で働く作業療法士の仕事内容
老健は、利用者さんの自立支援と在宅復帰を目的とした施設です。ここで働く作業療法士は、利用者さん一人ひとりの課題に合わせたリハビリ計画を立て、日常生活動作(以下、ADL)の維持・向上を目指します。
老健における作業療法士の仕事の流れ
老健利用の申し込みがあった場合、作業療法士はまず家屋調査を行い、利用者さんのご自宅の環境をチェックします。
このとき、実際の動作や生活場面を観察し、どのような困難があるかを確認しながらリハビリ計画を考えます。また、利用者さんやご家族の話をよく聞き、日常生活での困りごとを把握しておくことも大切です。
たとえば、玄関に段差があって利用者さんがつまずきやすく、転倒の危険があったとしましょう。この場合、リハビリで段差昇降の練習をしたり、手すりや段差解消など住環境の整備をしたりする必要があると考えられます。
こうした調査をもとに、起き上がりから移動、トイレ動作など、在宅での生活を想定したリハビリを行うのが作業療法士の仕事です。
リハビリ計画を立てた後は、内容に沿ってリハビリを進め、原則として3か月ごとに計画を見直します。この際に利用者さんの状態を再評価し、リハビリプログラムの継続・変更・終了などを判断することになります。
老健の利用は原則として3〜6か月とされていますが、利用者さんの状態によっては長期間のリハビリを行うことも珍しくありません。
他職種との連携
老健の作業療法士は、医師や看護師、介護士などと連携しながら、利用者さんのADL向上を支援します。特に介護士に対しては、集団体操のサポートや、利用者さんに合った介助方法の指導をすることもあります。
また、利用者さんのご家族ともコミュニケーションを取り、在宅復帰に向けた相談や介助のアドバイスを行うことも大切な仕事です。
老健で働く作業療法士のキャリア形成
老健では、認知症や複数の疾患を抱えた利用者さんへのリハビリなど、高齢期に特化したスキルを身に付けることができます。さらに、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)や福祉住環境コーディネーターの資格を取ると、地域での高齢者支援や住環境整備での活躍の場が広がります。
さらに、マネジメントや他(多)職種連携スキルを身に付けることで、老健での幅広いキャリア形成が可能となるでしょう。
老健で働く作業療法士のやりがい・苦労
老健で働く作業療法士の仕事には、特有のやりがいと苦労があります。
老健でのやりがいは、入所から在宅復帰、通所でのフォローアップまで、1人の利用者さんと長期にわたって関われることです。利用者さんが在宅に戻り、その後の生活の様子を報告してくれると、リハビリが日常生活に役立っていると実感できます。
「リハビリのおかげで、家でも1人でトイレができた」「手すりを使って家の中を歩けるようになった」といった声を聞いたときが、この仕事をやっていてよかったと思う瞬間です。なにより、懸命にリハビリに取り組む利用者さんの姿に触れ、自立をサポートできることが、老健で働くうえでの大きなやりがいです。
一方、老健ならではの苦労としては、病院の回復期病棟と比較して、リハビリの時間と回数に制限があることが挙げられるでしょう。
回復期病棟では医療保険のもと、必要に応じて1日最大で3時間のリハビリを、基本的に毎日実施できます。対して老健では、介護保険により入所から3か月間は週3日以上の短期集中リハビリが可能です。スタッフの数が充実している施設では、毎日リハビリを行うこともあります。
ただし、短期集中リハビリの期間が終わると、以降は週2日に減ることがあります。これは、短期集中後のリハビリが介護保険によって「入所者1人あたり週2回程度」と決まっているためです。加えて、老健での1回のリハビリ時間は約20〜30分が多く、回復期病棟と比べるとリハビリの時間が少ない傾向にあります。
ここでの数字はあくまで目安であり、実際は施設によって異なります。ですが、このように限られたリソースの中で自立・在宅復帰支援リハビリを行うには、柔軟な対応や工夫が欠かせません。
また、回復期病棟を経験してきた利用者さんやご家族からは、老健でも同じ頻度と時間のリハビリを期待されることがあります。この場合は、病院の回復期病棟と老健でのリハビリの違いを丁寧に説明し、理解してもらうことが大切です。
特別養護老人ホーム(特養)と老健の違い
特別養護老人ホーム(以下、特養)は要介護度が高く、長期的に生活支援が必要な高齢者が入居する施設です。
特養でのリハビリは「廃用症候群の予防」や「ADLの維持」が主な目的で、現状の機能維持に重点を置いています。そのため、特養では個別リハビリの機会は限られており、老健のような週2回などの定期的なリハビリは一般的ではありません。
代わりに、集団レクリエーションやADLを通じて身体機能の維持を図る「生活リハビリ」が中心となります。このように、特養は自立・在宅復帰を目指す老健とは施設としての目的が異なり、提供されるリハビリにも違いがあります。
老健での勤務に向いている人の特徴
老健での勤務に向いているのは、次の人です。
長期的な視点で支援に取り組める人
老健の利用者さんは高齢で、発症・受傷から時間がたっている場合も多く、リハビリの効果が出にくいことも少なくありません。そのため、利用者さんのペースに合わせて、長期的な視点でリハビリを続ける姿勢が求められます。
残存機能の維持と活用を目指せる人
認知症や進行性の疾患を抱えた利用者さんも多いため、大幅な機能改善が難しい場合もあります。そういった利用者さんに対しても、残存機能の維持と活用を目指したリハビリに取り組める人は、老健向きといえるでしょう。
他(多)職種連携やチーム医療に興味がある人
老健で働く作業療法士には医師や看護師、介護士、ケアマネジャー、時には訪問サービスなど、多くの職種との連携が必要です。利用者さんの生活を支えるチーム医療に興味があり、他職種と協力して仕事を進められる人も、老健に向いているといえます。
高齢化社会を支える老健の作業療法士
老健で働く作業療法士は、個別のリハビリ計画を立て、利用者さんの自立支援や在宅生活をサポートする大切な役割を担います。「超高齢化社会」「人生100年時代」といわれる日本では、老健での作業療法士の役割はますます重要なものになっていくでしょう。
生活に密着したリハビリができる老健で、高齢者支援のスキルを磨き、自立を支える喜びを感じてみてはいかがでしょうか。
参考
厚生労働省 個別事項(その5:リハビリテーション)
厚生労働省 介護老人保健施設(改定の方向性)
厚生労働省 介護老人保健施設(参考資料)

奏かえで(作業療法士)
医療専門大学を卒業後、回復期病棟を経験しつつ、介護老人保健施設に10年以上勤務。高齢の利用者さんの日常生活動作(ADL)や認知症リハビリに力を入れ、一人ひとりに寄り添った支援を大切にしている。ライターとしても活動しており、医療と介護の現場で培った知識と経験を活かし、健康や医療に関する記事を執筆している。
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