PT学生とは?理学療法士になるまでの流れやOTとの違いを解説
公開日:2025.01.23
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士を目指そうと思ったとき、PT学生はどのようなことをするのか気になる方はいるのではないでしょうか。PT学生は、養成校で授業やテストを受け、臨床実習を実施したのち、最終的に国家試験の合格を目指します。
この記事ではPT学生が理学療法士になるまでの流れや、作業療法士との違いについてご紹介します。PT学生になった後の流れを知ることで、将来のビジョンが明確になるでしょう。
PTとはどんな仕事?
PT(理学療法士)とは、身体機能が低下した方に対してのケアや日常生活の自立を支援するリハビリ職です。PTの具体的な仕事は、以下のとおりです。
・リハビリプログラムの立案
・リハビリの実施(運動療法や物理療法、日常生活動作指導など)
・福祉用具の選定や使用方法の指導
・自宅環境のアドバイス
PTは医療機関だけでなく、介護施設や在宅などの幅広い領域で活躍しています。このように、PTは医学的な知識や技術を駆使しながら、患者さんの生活をサポートする職種です。
PT学生とは?入学から卒業までの流れ
PT学生になると、どのようなことをするのでしょうか。ここでは、PT学生の入学から卒業までの流れについて解説します。
PTの養成校に入学する
PT学生になるには、まずは理学療法士の養成校に入学する必要があります。養成校には大学や専門学校などがあり、3年制と4年制の2種類に分かれます。
3年制は4年制よりも1年早くPTになれる一方で、カリキュラムが詰め込まれているため、授業で忙しくなる傾向にあります。4年制は理学療法士になるタイミングは1年遅くなるものの、余裕を持って授業を受けられるメリットがあります。
基本的に朝から授業がある昼間部がほとんどですが、なかには夜間部を設けている養成校も少なくありません。
養成校は全国にあり、日本理学療法士協会によると2024年9月時点で「279校」あるとされています。それぞれの特徴を考慮しながら、自分にあった養成校を選ぶことが大切です。
PTに必要なカリキュラムを受ける
PT学生になったら、理学療法士に必要な知識・技術を身につけるために、指定されたカリキュラムを受ける必要があります。カリキュラムは一般教養科目から専門科目まで幅広く構成されており、学年が上がるにつれてより実践的な内容となります。
たとえば、1年次では以下のような基礎的な科目が中心です。
・生理学
・運動学
・理学療法士概論
学年が上がると、座学だけでなく実技による科目も増えます。
臨床実習を行う
最終学年になると行われる大きな課題には2つあり、その1つが「臨床実習」です。臨床実習では、実際の医療現場で患者さんと接しながら、理学療法の実践を学びます。PT学生にとって臨床実習は、学んだ知識や技術を実践で活かす重要な機会です。
実習先は病院やクリニック、介護施設などさまざまで、指導者のもとで患者さんの評価やリハビリなどを実施します。養成校によって期間は異なるものの、臨床実習は4〜6か月間ほど行われるものなので、ハードと感じる方も少なくありません。
国家試験に合格する
最終学年における大きな課題のもう1つは、「国家試験」です。PT学生にとって、理学療法士の国家試験に合格することは最終的な目標です。国家試験に合格することで、PTの資格を取得できます。
理学療法士国家試験は毎年2月中旬ごろに実施され、内容はマークシートによる筆記試験です。参考として、2024年から過去5年間の合格率は以下のとおりです。
年度 | 合格率 |
---|---|
2024年度 | 89.2% |
2023年度 | 87.4% |
2022年度 | 79.6% |
2021年度 | 79.0% |
2020年度 | 86.0% |
このように、直近5年間は合格率が80〜90%あたりなので、しっかりと国家試験対策をすれば合格は難しくありません。
出典:日本理学療法士協会|統計情報
厚生労働省|第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について
PTとOTの違いは?
PTと同じリハビリ職に、OT(作業療法士)があります。どちらもリハビリを提供する職種ですが、それぞれ役割が異なります。ここでは、PTとOTの違いについてみていきましょう。
作業を通してリハビリを提供する職種
OTとは、日常生活に必要な「作業」を通じてリハビリを提供する専門職です。OTのおもな仕事は、患者さんの日常生活動作の改善や社会復帰の支援です。
具体的には、食事や着替えなどの基本的な動きだけでなく、仕事や趣味といった社会生活に関わる動作のリハビリも行います。
簡単にまとめると、PTとOTの違いは以下のとおりです。
・OT:応用的な動作の獲得
ただし、実際の現場ではPTが応用的な動作のリハビリを中心に行うことも珍しくありません。患者さんの身体機能やニーズによって、提供するリハビリ内容は変化します。
カリキュラムの構成はPT学生と異なる
OT学生に関しては、PT学生とはカリキュラムの構成が異なります。OT学生に特徴的な科目例としては、以下のとおりです。
・作業治療学
・地域作業療法学
これらの科目では、患者さんの状態を適切に評価し、日常生活に即した作業を分析・選択する能力を養います。ただし、どちらもリハビリ専門職を目指す学生のため、解剖学や生理学などの基礎的な科目には共通しています。
国家試験の難易度はPTと大きな差はない
国家試験の難易度は、PT・OTどちらも大きな差はありません。国家試験の形式はOTも変わらず、マークシートによる筆記試験です。2024年までの過去5年間の合格率について、以下の表にまとめました。
年度 | 理学療法士の合格率 | 作業療法士の合格率 |
---|---|---|
2024年度 | 89.2% | 84.1% |
2023年度 | 87.4% | 83.8% |
2022年度 | 79.6% | 80.5% |
2021年度 | 79.0% | 81.3% |
2020年度 | 86.0% | 87.3% |
このように、それぞれを比較しても大きな差がないことがわかるでしょう。どちらも、しっかり国家試験対策の勉強をすれば十分に合格できる範囲といえます。
出典:厚生労働省|第55回理学療法士国家試験及び第55回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省|第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省|第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省|第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省|第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について
PT学生を卒業した後の就職先
PT学生を卒業した後の就職先としては、以下のとおりです。
● クリニック
● 介護施設
● 福祉施設
● スポーツ分野
PTの就職先としてもっとも一般的なのは、病院やクリニックなどの医療機関です。
介護老人保健施設(老健)やデイサービスなどの介護施設でも、多くのPTが働いています。また、PTとしての経験を積めば、以下のような職場で働くことも可能です。
● 研究機関
● 行政機関
このように、PTは非常に幅広い分野で活躍できる職種といえます。
PT学生に向いている方・向いていない方
自分がPT学生に向いているのか、気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、PT学生に向いている方・向いていない方の特徴について解説します。
PT学生に向いている方の特徴
PT学生に向いている方の特徴としては、以下があげられます。
● 観察力が鋭い
● 勉強意欲が高い
PTは患者さんと直接関わる機会が多いため、相手の気持ちを理解し、適切な言葉かけができることが重要です。患者さんの細かな変化や違和感に気づく能力も、適切なリハビリプランを立てる上で欠かせません。PTは学生時代だけでなく、就職した後も勉強が必要となるので、自己研鑽を積極的に積める方は素質があるといえるでしょう。
PT学生に向いていない方の特徴
PT学生に向いていない方の特徴は、以下のとおりです。
● 自己研鑽が苦手
PTは接客業の側面もあるため、コミュニケーションが苦手だと、就職後も苦労しやすくなります。そして勉強が苦手で自主的に学ぶ習慣がないと、国家試験はもちろん、PTのキャリアにも悪影響を与える可能性があるでしょう。
ただし、これらの特徴は努力次第で改善できる部分もあるため、PT学生を目指す上で参考程度に捉えることをおすすめします。
PT学生からPTになるまでの流れを把握しよう
養成校に入学してPT学生になった後は、指定されたカリキュラムを修め、最終的に国家試験の合格を目指します。
国家試験の合格率は、毎年80〜90%程度なので、決して難易度が高いわけではありません。
PTの就職先は幅広く、さまざまな分野で活躍できる職種でもあります。ぜひ今回の記事を参考にして、PTを目指してみましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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