拘縮を改善するためのリハビリは?おもな原因やリハビリ時のポイントを解説
公開日:2025.01.31

文:内藤 かいせい(理学療法士)
拘縮を改善するには、どのようなリハビリをするべきか気になる方はいませんか。拘縮は、ケガや病気を発症した患者さんに起こりやすく、日常生活にも支障をきたしやすい病態といえます。拘縮を予防・改善するためには、リハビリによるアプローチが重要です。
この記事では、拘縮の概要や具体的なリハビリ内容についてご紹介します。どのようなリハビリをすべきかを知り、実行することで拘縮の改善・予防が期待できるでしょう。
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拘縮とは?
拘縮とは、筋肉や腱などの組織が硬くなって柔軟性が低下し、関節の可動域が制限されている状態です。拘縮が起こると身体の動きが悪くなるため、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
ここでは、拘縮の原因や具体的な問題について解説します。
拘縮の原因
拘縮のおもな原因は、長期間にわたって関節を動かさないことです。関節の固定期間が続くことで、筋肉や腱などの組織の柔軟性・伸張性が徐々に低下し、拘縮につながります。長期間関節を動かさない状況としては、以下があげられます。
● 寝たきり状態
● ギプスによる関節の固定
● 骨折や靭帯損傷後の安静期間
拘縮は年齢に関係なく発症する可能性があり、とくにケガや病気によって活動量が低下している方は注意が必要です。
拘縮によって起こる問題
拘縮が進行すると関節が動かしにくくなるため、日常生活にさまざまな支障をきたす恐れがあります。たとえば、足関節が拘縮した場合、歩行や立ち上がりなどの動作が難しくなります。
股関節の拘縮であれば動作だけでなく、座り姿勢をうまくとれなくなるでしょう。拘縮によって今までできていたことができなくなると、生活の質(QOL)の低下にもつながります。
また症状が重度の場合は、介護が必要になることもあります。このように、拘縮は日常生活に大きな悪影響をおよぼす恐れがあるため、早期の予防・改善が重要です。
拘縮が起こりやすい関節
拘縮は身体のあらゆる関節で起こる可能性がありますが、とくに下肢に起こりやすい傾向があります。具体的な関節は以下のとおりです。
● 膝関節(伸展)
● 股関節(屈曲・外転・内旋)
下肢の関節は、寝た状態では股関節や膝が屈曲した状態になりやすいため、長期間同じ姿勢を続けると拘縮のリスクが高まります。下肢の関節は歩く・立つなどのさまざまな動作に関係しているので、拘縮が起こると生活に支障をきたしやすくなります。
拘縮を改善するためのリハビリ内容

拘縮は不可逆的なものではなく、リハビリによって改善が期待できます。ここでは、拘縮を改善するための具体的なリハビリ内容をご紹介します。
関節可動域訓練
拘縮改善のリハビリとして代表的なのが、関節可動域訓練です。ストレッチを中心とした関節可動域訓練で硬くなった組織を伸張させ、拘縮の改善を図ります。関節可動域訓練を行う際は、持続的にゆっくりと行い、筋肉や靭帯などの組織を伸張させることが重要です。
また、可動域訓練の効果を高めるために、物理療法を併用することもおすすめです。物理療法とは、熱や電気などの物理的な刺激を用いた治療法です。温熱療法や超音波療法などを用いることで組織の柔軟性が高まり、可動域訓練が行いやすくなります。
動作訓練
歩行や階段昇降などの動作訓練も、拘縮予防・改善につながります。各種動作によって関節運動が起きることで、活動量の増加とともに組織が硬くなるのを防ぎます。また拘縮が起きている場合、関節運動はストレッチのような役割を果たすこともあるのです。
動作訓練は単にリハビリの時間だけでなく、日常生活のなかで意識して行ってもらうことが大切です。普段から活動量を高めて身体を動かす習慣を作ることで、拘縮の予防効果が高まります。
マッサージ
マッサージを行うこともおすすめです。マッサージには筋肉の緊張の緩和や血行促進など、さまざまな効果が期待されています。
硬くなった筋肉をほぐすことで、柔軟性が向上して拘縮の改善につながります。マッサージは自分でも行えるので、こまめに筋肉をほぐすことを指導するのもよいでしょう。
ただし、痛みを感じるほど強い力をかけるのは避け、心地よいと感じる程度の力加減で行うことが大切です。
ポジショニング・シーティング
高齢者をはじめとした活動量が低下している方の場合、ポジショニングやシーティングも重要です。ポジショニングとは、寝ている状態や座っている状態で、身体の位置や向きを調整することです。
シーティングは、快適な座位姿勢を整えることで、こちらもポジショニングの1つとされています。例として、姿勢が不安定な患者さんに対して、クッションや枕を身体の隙間に入れ込みます。
これらの配慮をすることで、関節にかかる負担を軽減し、拘縮の改善・予防につながるのです。また身体にかかる圧を分散させることで、褥瘡予防にもなるでしょう。
拘縮改善のリハビリを行う際の注意点

拘縮改善のリハビリを行う際は、いくつかの点に注意する必要があります。ここでは、拘縮に対するリハビリの注意点を解説します。
拘縮部位の無理なストレッチは避ける
拘縮部位のストレッチを行う際は、無理に強く行うのは避けましょう。拘縮した部位に対して強引にストレッチを行おうとすると、筋肉や靭帯などの組織を傷つけてしまう恐れがあります。これによって痛みや炎症が起こると、かえって拘縮が悪化する原因となります。
ストレッチする際はゆっくりと持続的に行い、痛みの出ない範囲で行うことが大切です。拘縮はすぐに改善できるわけではないので、焦らずじっくりストレッチを行いましょう。
拘縮のリハビリは頻回に行う
拘縮のリハビリは、できるだけ頻回に行いましょう。拘縮は、長期間関節を動かさないことで起こる症状です。そのため、拘縮を予防・改善するにはリハビリを頻繁に行い、関節を積極的に動かすことが重要です。
ただし、リハビリの時間は多くても1日に数時間程度なので、それ以外の時間でも意識的に関節を動かしてもらいましょう。リハビリ中はもちろん、余暇時間でも活動量を高めてもらい、拘縮予防・改善を目指してみてください。
リハビリで拘縮の改善を目指そう
拘縮は筋肉や靭帯などの組織の柔軟性が低下した状態で、関節がうまく動かなくなることで日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。拘縮を予防・改善するためには、ストレッチや動作訓練など。関節を動かすためのリハビリを行うことが重要です。
また、拘縮部位を強く動かすのは避け、持続的に関節をストレッチするとよいでしょう。ぜひ今回の記事を参考にして、拘縮の改善を目指してみてください。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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