【理学療法士も必見!】マッサージのやり方は?具体的な効果や注意点をご紹介
公開日:2025.02.12
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士としてマッサージが必要な場合、どのようなやり方があるのか知りたい方はいませんか?マッサージはただ単に行うのではなく、どの組織にアプローチするのかを把握しながら実施することが重要です。
この記事では、マッサージの手法や効果、実施の際の注意点をご紹介します。適切な方法を知ることで、リハビリの幅を広げるきっかけとなるでしょう。
マッサージの具体的なやり方
マッサージは、やり方によって以下のような手技に分かれています。
● 強擦法
● 圧迫法
● 揉捏法
ここでは、それぞれの手技について詳しく解説します。
軽擦法(けいさつほう)
軽擦法とは、手のひらや指を使って、皮膚表面をやさしくなでるようにマッサージする手技です。対象部分によってやり方が変わり、手のひら全体を使用して行うこともあれば、指や握りこぶしで施術するケースもあります。
施術時は心臓に向かって行うことで、皮膚表面にある血液の循環促進につながるのが特徴です。軽擦法は、おもにマッサージの開始時と終了時に行われます。
強擦法(きょうさつほう)
強擦法とは、軽擦法よりも強い圧をかけて行うマッサージ手技です。この手技のおもな目的は、皮膚の深部にある筋膜にアプローチすることです。
筋膜とは、身体全身を覆っている膜のことで、筋肉の動きをサポートする役割があります。強擦法によって硬くなった筋膜の柔軟性を高めることで、身体のパフォーマンス向上が期待できます。
一方で、強い刺激を与える手技のため、マッサージ中や施術後に痛みが出現する可能性がある点に注意が必要です。
圧迫法(あっぱくほう)
圧迫法とは、親指や肘などを使い、筋肉に圧を加えながらゆっくりとマッサージする手技です。筋肉に持続的な圧迫を行うことで、緊張をほぐして柔軟性を高めやすくなります。筋肉によっては、指でつまみながら圧迫を加える方法もあります。
圧迫を行う際は、急激な力を加えすぎないように注意が必要です。患者さんに不快感を与えないようにするには、ゆっくりと圧を加えることがポイントです。
叩打法(こうだほう)
叩打法とは、手のひらや指でリズムよく身体表面をたたく手技のことです。肩たたきのような要領でリズミカルに刺激を与えることで、筋肉や血管の活発化につなげます。叩打法はマッサージに加えて、強擦法や圧迫法を実施した後の不快感を解消することを目的で行うケースもあります。
この手技も、たたく強さによっては筋肉に負荷をかける恐れがある点に注意が必要です。患者さんがどのように感じるのかを聴取しながら実施しましょう。
マッサージによる効果
マッサージをすると、身体にどのような影響が現れるのでしょうか。ここでは、マッサージによる代表的な効果を解説します。
血流の改善
マッサージによって血管を刺激することで、血流の改善が期待できます。血流量が増えることで、以下のようなメリットを得られます。
● むくみの改善
● 冷え予防
効率的に血行を促進させるためには、末梢から心臓に向かってマッサージすることが重要です。この流れでマッサージすることで、末梢で滞っている血液が心臓に戻りやすくなり、循環の改善につながります。実際に施術する際は、この点を意識しておきましょう。
筋緊張の緩和
適度な強さで行うマッサージによって、筋肉の緊張緩和が期待できます。筋緊張が緩和することで、肩こりや腰痛などの筋肉が関係している身体の不調の改善につながります。
また、筋肉の柔軟性が高まれば、運動時のケガ予防にもなるでしょう。筋緊張を効率的に緩和させるには、筋肉の走行に沿って丁寧にアプローチすることが大切です。
理学療法士におけるマッサージの適応・禁忌
マッサージは多くの方に対して実施できますが、疾患によっては避けるべきケースもあります。ここではマッサージの適応と、どのような疾患では避けるべきなのかを解説します。
マッサージの適応
マッサージの適応としては、おもに以下のとおりです。
● 整形疾患(例:変形性膝関節症)
● 肩関節周囲炎
● 腰痛症
● 筋肉痛
● 便秘
● 貧血
● 身体の疲労
このように、身体の不調改善や疲労回復を目的としたものだけでなく、疾患に関しても適応となっています。マッサージは幅広い方に対して行えるため、リハビリプログラムの1つとして選択してみましょう。
マッサージを避けるべき疾患
マッサージは場合によって、患者さんに悪影響をきたす恐れがあります。マッサージを避けるべき疾患としては、以下のとおりです。
● 骨折や脱臼の直後
● 重度の内臓疾患
● 動脈硬化や動脈瘤などの血管性疾患
このように、血管や筋肉などの組織に問題がある場合は、マッサージによって症状が悪化する可能性があります。これらの症状または疾患を抱えている方に対しては、別のアプローチを検討しましょう。
理学療法士がマッサージをする際の注意点
理学療法士がマッサージをする際は、必ず患者さんの状態を適切に評価することが重要です。事前にバイタルや身体所見などをチェックし、マッサージ中も痛みや不快感がないか聞くとよいでしょう。
また、マッサージは理学療法士が行う治療手技の1つです。リハビリの効果を高めるためには、マッサージだけでなく、運動療法や物理療法などを組み合わせる必要があります。決してマッサージだけに頼るようなリハビリを提供しないように注意しましょう。
理学療法士としてマッサージのやり方をおさえておこう
マッサージには軽擦法や揉捏法などのさまざまな手技があり、それぞれ目的や効果が異なります。マッサージは幅広い方を対象に行える一方で、なかには避けるべき方もいる点に注意する必要があります。
また、理学療法士のリハビリはマッサージだけでなく、患者さんにあわせて運動療法や物理療法を取り入れることも心がけましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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