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筋緊張とは?異常時の反応や検査法、アプローチ法を解説

公開日:2025.02.13

筋緊張とは?異常時の反応や検査法、アプローチ法を解説

文:内藤 かいせい(理学療法士)

筋緊張とはどのような意味なのか、リハビリ場面でどのくらい重要なのか気になる方もいるのではないでしょうか。筋緊張は、身体をスムーズに動かすためには欠かせない要素です。病気の発症によって筋緊張の異常が現れる場合があり、その改善のためにリハビリをすることも珍しくありません。

この記事では、筋緊張の概要や異常時のリハビリ例についてご紹介します。具体的な内容を知ることで、リハビリに活用するきっかけとなるでしょう。

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筋緊張とは?

筋緊張とは、筋肉の緊張度合いのことです。私たちの身体は、普段から無意識のうちに筋肉の緊張を調整しており、これによって姿勢の保持や動作をコントロールしています。筋緊張は状況によって変化するため、常に一定ではありません。

たとえば、運動時に力を発揮する際は筋緊張が高くなる一方で、リラックスしている状態では筋肉が弛緩しやすいとされています。筋緊張は筋肉そのものの弾力性に加えて、脳や神経などによって制御されています。そのため、脳卒中をはじめとした病気を発症すると、筋緊張にも異常が現れることも少なくありません。

筋緊張が関係する代表的な反応

筋緊張とは?異常時の反応や検査法、アプローチ法を解説

筋緊張に関係する身体の反応には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な反応についてご紹介します。

伸張反射

伸張反射とは、筋肉が引き伸ばされたときに、反射的に収縮して筋緊張が高くなる現象です。この反応は、筋肉が過度に伸びることを防ぐための役割でもあります。伸張反射が起こる仕組みは、以下のとおりです。

【伸張反射の仕組み】
1. 筋肉が引き伸ばされる
2. 筋肉内の筋紡錘が引き伸ばされたことを感知する
3. 引き伸ばされた反応が脊髄に伝わる
4. 脊髄が筋肉に対して収縮の命令を出す
5. 脊髄からの命令が届いた筋肉が収縮する

伸張反射が関わっている例として、ストレッチがあげられます。反動をつけたストレッチがよくないといわれる原因として、伸張反射が起こりやすくなり、筋肉が収縮してしまうからです。

姿勢反射

姿勢反射とは、身体のバランスを崩したときに自動的に姿勢を戻そうとする反応です。姿勢反射では、脳内の筋緊張を調整する複数の仕組みが働いています。

感覚系や前庭系などの情報をもとに、大脳や脳幹によって特定部位の筋緊張を高めて、姿勢の制御を図ります。この姿勢反射があることで、つまずいたときにうまくバランスをとったり、スムーズに歩行したりできるのです。

筋緊張の異常によって現れる現象

特定の病気を発症すると、筋緊張に異常が現れることがあります。ここでは、筋緊張の異常によって起こる現象や、どのような病気が関係しているのかを解説します。

痙縮

痙縮とは、筋肉の伸張反射が過敏になり、筋緊張が異常に高まってしまう状態です。痙縮はおもに脳卒中によって引き起こされ、わずかな筋肉の伸張に対しても収縮しやすくなります。その結果、歩行時に足関節がガクガクする、スムーズに身体を動かせないなどの悪影響が現れます。

また、動かす速度が速くなるほど筋肉の抵抗が強くなり、持続的に伸張すると緊張が落ち着くのが特徴です。この特徴を「折りたたみナイフ現象」とも呼びます。

固縮

固縮とは、筋緊張が常に高くなっている状態のことです。これはおもにパーキンソン病をはじめとした、筋緊張をコントロールしている「大脳基底核」の障害によって引き起こされます。

固縮になった方の関節を他動的に動かすと一定の抵抗が感じられ、これを「鉛管現象」と呼びます。また、動かす途中で歯車のような断続的な抵抗を感じることがあり、これが「歯車現象」です。

筋緊張が高い状態なので、動作が緩慢になる、可動域制限が生じるなどの悪影響をおよぼす恐れがあります。

弛緩

弛緩とは、筋緊張が低下して筋肉の力が抜けている状態です。関節を他動的に動かしても抵抗がなく、スムーズに動きます。筋肉の弛緩は脳卒中の急性期や小脳の障害に起こりやすく、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

筋肉に力が入りにくい状態のため、姿勢の維持ができなかったり、歩行が困難となったりする恐れもあるでしょう。

筋緊張を調べる検査方法

筋緊張とは?異常時の反応や検査法、アプローチ法を解説

臨床で筋緊張を調べる際に、どのような検査が行われるのでしょうか。ここでは、おもな検査方法をご紹介します。

MAS

MAS(Modified Ashworth Scale)とは、筋緊張の程度を評価する代表的な検査方法です。関節を他動的に動かし、筋緊張の程度を6段階で評価します。MASの評価基準は以下のとおりです。

グレード 内容
0 筋緊張の増加なし
1 わずかな筋緊張の増加。関節を動かした終わりに引っかかりを感じる
1+ わずかな筋緊張の増加。関節可動域の半分未満で抵抗を感じる
2 ほとんどの関節可動域で筋緊張が増加しているが、容易に動かせる
3 筋緊張が増加しており、他動運動が困難
4 関節が固まって動かない

検査時は患者さんにリラックスしてもらい、背臥位の状態で実施します。

深部腱反射検査

深部腱反射検査は、筋肉の伸張反射を利用して筋緊張の状態を調べる検査方法です。検査方法はシンプルで、筋肉の腱をハンマーで叩いて反応を確認します。検査のポイントは以下の3つです。

● 事前に筋肉の緊張状態や関節可動域制限の有無を確認する
● 患者さんをリラックスさせた状態で行う
● 叩打の強さではなく、筋肉が伸張される速度を意識する

反射の程度は、以下の6段階で評価します。

● 消失(–):腱反射が出現しない
● 減弱(-):腱反射が弱い
● 正常(+):腱反射が正常に現れる
● 軽度亢進(++):腱反射が亢進。筋腱移行部では更新していない
● 中等度亢進(+++):腱・筋腱移行部で亢進している
● 高度亢進(++++):すべての反射が更新している

これらの評価結果を指標として、リハビリ方針を決めます。

【病気別】筋緊張異常に対するリハビリ例

病気によって筋緊張異常が起きている患者さんに対して、どのようなリハビリアプローチをするべきなのでしょうか。ここでは代表的な病気を例に、筋緊張異常に対するリハビリについて解説します。

脳卒中

脳卒中による筋緊張異常に対するリハビリは、症状や回復段階に応じて内容が変わります。とくに急性期から回復期、維持期までの段階によって、筋緊張の状態が変化する点に注意しましょう。筋緊張異常への具体的なアプローチとしては、以下があげられます。

● 関節可動域訓練(痙縮による拘縮や筋短縮の予防)
● ストレッチング(痙縮による筋緊張の緩和)
● 装具療法(痙縮の緩和および弛緩の補助)
● 物理療法(痙縮の緩和、弛緩した筋肉の促通)
● ボツリヌス療法(痙縮の緩和)

患者さんの状態にあわせて、これらのリハビリを組み合わせて筋緊張異常の改善を図ります。

パーキンソン病

パーキンソン病は固縮だけでなく、姿勢反射障害や動作の緩慢さなどが現れるケースも少なくありません。それらの症状も考慮しながらリハビリを進めることが重要です。具体的なリハビリ内容は、以下のとおりです。

● 関節可動域訓練
● ADL訓練
● バランス訓練
● 筋力トレーニング
● 生活環境の調整(手すりの設置など)
● 視覚的な目印の活用

パーキンソン病は、外的要因によって筋緊張が高まるケースもあります。身体的なアプローチ以外にも、自宅で安全に過ごせるように環境調整することも、筋緊張の亢進を予防する方法の1つです。

筋緊張に関する反応や現象を把握しておこう

筋緊張は筋肉の緊張度合いのことで、身体の状況によって常に変化しています。筋緊張に関係する現象として、伸張反射や姿勢反射などがあげられます。

また、病気を発症すると筋緊張異常が現れる場合があり、それが原因で日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。筋緊張異常を改善するためには、病気や状態にあわせたリハビリを実施することが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、筋緊張に対する知識を深めていきましょう。

内藤かいせい

内藤 かいせい

理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。

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