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クリニック勤務の理学療法士はきつい?病院とクリニックでの働き方の違い

公開日:2025.02.02 更新日:2025.02.03

クリニック勤務の理学療法士はきつい?病院とクリニックでの働き方の違い

文:伊東浩樹(理学療法士)

理学療法士の勤務先は医療機関や福祉施設など、多岐にわたります。医療機関にも病院やクリニックなどがあり、職場ごとに働き方も異なります。

そうしたなか、「理学療法士として、クリニック勤務はきつい」という声もあるようです。実際に、病院とクリニックではどちらが働きやすいのでしょうか?

現役理学療法士が、クリニックと病院の働き方について、自身の経験も踏まえてお伝えします。

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クリニックで働く理学療法士の割合

日本理学療法士協会が公表した統計によると、登録されている会員の大半が医療機関での勤務となっています。

そのうち、病院で働いている理学療法士は急性期、回復期、慢性期を合わせると約57,000人。一方、クリニックで働いている人は有床、無床を合わせて約27,000人でした。

同じ医療機関勤務だけで比較すると、クリニックで働く理学療法士は病院勤務の約半分程度です。

病院とクリニック、理学療法士の働き方の違い

クリニック勤務の理学療法士はきつい?病院とクリニックでの働き方の違い

医療法において、病院とは入院できる病床数が20以上の施設を指し、クリニック(診療所)は19床以下、もしくは無床の施設を指します。

それぞれ規模が違うことがわかりますが、理学療法士の働き方としてどのような違いがあるのか、詳しく見てみましょう。

病院で働く理学療法士の仕事

病院には、内科、小児科、整形外科、脳神経外科などの診療科があり、それぞれの疾患を踏まえたリハビリを担当することになるため、幅広い知識が求められます。

病院の規模や、外来のリハビリを実施しているかどうかでも異なりますが、クリニックと比べて、1日で受け持つ患者さんの人数は多い傾向にあるでしょう。

また、病院では急性期、回復期、慢性期、終末期に分かれ、それぞれの容体にあった医療が提供されています。勤務先の病院がどのような受け入れをするかによって、理学療法士として対応する内容も変化します。

例えば、急性期病院の場合、脳卒中の発症直後の患者さんを担当することもあります。その場合、人工呼吸器や意識状態におけるリスク管理などの救急分野での知識が必要であり、改善に向けた相応のリハビリテーション技術や経験が求められます。

一方で、慢性期などでは、いかに今の状態を維持できるか、その人らしく暮らすためのリハビリに焦点をあてることになり、患者さん本人だけではなくご家族なども含めたケアが求められるでしょう。

このように多岐にわたる仕事内容に加え、幅広い知識が求められるため、常に変化を求めながら働きたい場合には、病院の方が向いているかもしれません。

クリニックで働く理学療法士の仕事

クリニック(診療所)は規模が小さく、病院のように急性期などの振り分けはありませんが、入院施設の有無によって担当する患者さんの状況が変わります。

例えば、入院施設のある整形外科系のクリニックの場合、膝関節の手術後に入院して経過を見ながら、リハビリをすることになり、段階的に急性期から回復期という流れで対応する必要があります。一方で、入院施設がない場合には、外来によるリハビリが中心です。

また、病院とは異なり、診療科が限定されている場合が多いため、より専門的なリハビリを担当することになるでしょう。整形外科や脳神経内科、外科など、その領域の患者さんを対象とするリハビリを展開する必要があります。

何かしらの分野に特化してリハビリを実施していくことが多いため、興味関心がある分野が定まっている人は、クリニック(診療所)の方がやりがいを感じやすいかもしれません。

「クリニック勤務がきつい」と言われるのはなぜ?

クリニック勤務の理学療法士はきつい?病院とクリニックでの働き方の違い

病院とクリニック、どちらも理学療法士としてやりがいのある仕事ができます。しかし、そうしたなかで「クリニックの方がきつい」と感じる理由として、以下のような点が考えられます。

理学療法士1人当たりの負担が大きい

病院とクリニックの大きな違いは、その規模にあり、勤務しているセラピストの数も差があります。病院もクリニックも、患者さんごとに向き合って理学療法を実施するのは同じです。

しかし、多くの場合、クリニックの方が配置されている理学療法士の数が少ない傾向にあります。そのため、病院勤務と比べると患者さん1人ひとりに対する理学療法士の負担が大きくなりがちです。

なかには理学療法士が1人しかいない職場で、交代要員がおらず、休憩や休みが取りにくくなってしまうことも考えられます。

もちろん、複数人の理学療法士が採用されているクリニックもありますが、傾向として人手不足になりやすいクリニックの方がきついと感じるかもしれません。

帰る時間が遅くなりやすい

クリニック(診療所)では、経営者や院長の方針により診療日や時間が決まっています。

なかには、夜間まで診療しているところもあり、リハビリ業務終了後に書類作成などをこなすとなれば、帰宅が遅くなることもあるでしょう。

また、専門領域に特化したクリニックであれば、患者さんのニーズに対応するため、診療時間後に、理学療法士向けの勉強会を実施する機会が多く見られます。

自己研鑽を望んで入職したとしても、終わりの見えない勉強の連続と、不規則な帰宅時間をきついと感じてしまうことがあるかもしれません。

賃金が割に合わない

クリニックでは、診療科を多く持つ病院と比べると、来院する患者さんの数も少ない傾向があります。患者さんの数は経営に大きく影響するため、病院と比べて、クリニックの方が給与は低くなりやすいと考えられます。

そのほか福利厚生においても、大規模な民間病院と比べると、十分でない可能性もあります。上述したように、勤務時間が不規則なうえ、給与も低いとなると仕事がきついと感じる人もいるでしょう。

自分に向いているかどうかで考えよう

病院とクリニックでは、その規模や待遇、働き方が異なります。それぞれに特徴があり、やりがいを感じられるところも多くあります。ただ、どのような職場で働いていても「きつい」と感じる部分はあるのではないでしょうか。

病院かクリニックか、どちらで働くか悩んだ時、大切なのは、どのような目的や理由、キャリアプランをもって選択したかどうかです。

多少のきつさがあっても、やりがいがまさることもあります。自分が楽しく仕事をできるか、向いているのかという点で職場選びを考えてみてはいかがでしょうか。

参考

日本理学療法士協会 会員の分布

伊東 浩樹(理学療法士)

伊東 浩樹(理学療法士)

理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。

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