膝蓋骨骨折のリハビリは自宅でできる？家庭でできるリハビリのポイントを解説

文：伊東浩樹（理学療法士）

膝蓋骨（しつがいこつ）とは、いわゆる「膝のお皿」と呼ばれている骨のことで、膝の曲げ伸ばしなどに関わるため、骨折してしまうと歩いたり座ったりすることが困難になります。

病院での治療とともに、リハビリが必要になる膝蓋骨骨折ですが、自宅でも動かしてよいのか悩む方がいらっしゃるかもしれません。

今回は、膝蓋骨骨折について、その原因や治療方法とともに、自宅でできるリハビリのポイントについて現役理学療法士が解説します。

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膝蓋骨骨折が起きる原因

膝蓋骨（しつがいこつ）とは、膝関節の前にある丸い骨で、膝の動きを滑らかにする役割があります。

膝関節は、日常、私たちが活動するうえで必要不可欠な「歩く」「座る」「立つ」などの動きを支えています。膝関節を円滑に動かすための膝蓋骨が骨折した場合、痛みが出るだけでなく、関節の動かせる範囲に制限が出たり、筋力低下を起こしたりするリスクがあります。

日常生活において膝蓋骨を骨折する要因としては、階段でつまずいて段差に膝をぶつけてしまうほか、転倒した際に膝をついてしまうことで生じることがあります。

男性よりも女性患者さんの方が多く、特に骨粗鬆症になっている方に生じやすい印象があります。

また、高齢者だけではなく、小児にも発生しやすいとされています。骨が未成熟の子どもは、ジャンプ動作などをした際の衝撃で、膝蓋骨を骨折してしまうケースもあります。

膝蓋骨骨折の治療

膝蓋骨を骨折した場合、治療は手術か保存療法かのどちらかが選択されます。

骨折によって、骨が本来の位置よりも大きくズレてしまっていれば手術、そうでない場合は基本的には保存療法が選択されるでしょう。

いずれの場合にも、医師の検査による提案後、患者さん本人や家族の同意のうえで決めることになります。

手術による外科的治療

膝蓋骨が割れていたり、散らばっていたりする場合には、針金で固定をして膝蓋骨の形を整える手術が選択されます。術後は、経過を見ながらリハビリなどを含めた治療を進めます。

ギプス固定などによる保存的治療

膝蓋骨に大きな割れやズレが見られない場合は、ギプスなどを使った保存療法が選択されます。

骨が大きく動かないように特殊なギプスや装具を着用し、元の位置で骨が固定されるように、経過を見ながら治療が進められます。

膝蓋骨骨折のリハビリ方法

膝蓋骨骨折の場合、手術であっても、ギプス固定であっても、比較的早い段階からリハビリが開始されます。

手術をして入院した場合には、膝蓋骨がズレてしまわないように経過を見ながら、理学療法士が膝関節周囲の筋力を強化する運動を実施します。

骨折をして3週間までは急性期として症状が最も急激に表れやすく、不安定な状態にあるため、膝関節に負担をかけないように生活をすることが大切です。歩いたり、階段の上り下りをしたりする際は、松葉杖などを使用します。

手術によってしっかり骨が固定されるため、術後は1週間ほどで膝関節の運動を開始するのに対して、ギプス固定などの保存療法の場合は、1ヶ月ほど状態を見て膝関節の運動をするのが一般的です。

早い場合、術後は2週間ほどで歩行練習を始めることもあります。一方で、ギプス固定などの保存的治療の場合は、6週間ほど経過を見てからリハビリが開始されるでしょう。

リハビリのスタート時期に違いがあっても、リハビリに必要な期間はどちらも12週間ほどかかります。

また、手術の有無に関わらず、膝関節の可動域練習を実施していく際には、初期では痛みが強かったり、曲げるときの可動域がなかなか改善しなかったりすることも多くあります。

骨を固定させるための期間があるため、改善には時間がかかります。根気強くリハビリと向き合うことが大切です。

膝蓋骨骨折における自宅でのリハビリ方法とポイント

どのような治療を行ったとしても、リハビリとしては、膝関節周囲の筋力の強化と関節の可動域を動かすような運動が実施されます。

自宅でリハビリをする場合も同様に、膝を動かすような運動を取り入れるとよいでしょう。

膝蓋骨の上には大腿四頭筋（だいたいしとうきん）という筋肉があります。この筋肉を動かすことで、関節まわりの筋力強化につながります。

具体的なやり方は以下のとおりです。

1. 仰向けに寝た状態で骨折していない足の膝を立てる
2. 骨折した方の足を伸ばした状態で、反対側の膝の上まで来るように足をゆっくり上げ下げする

また、膝の曲げ伸ばしができるようになったら、イスに座った状況で膝の曲げ伸ばしを実施するのもよいでしょう。その際、足を伸ばした状態でつま先を自分の方に向けると、大腿四頭筋の強化につながります。

どちらも関節周囲筋の強化を目的とした運動ですが、回数は30回程度が目安です。あくまで目安であり、痛みが起きないくらいの回数で実施しましょう。

膝蓋骨骨折を予防しましょう

膝蓋骨が骨折するのは、主に転倒が原因といえます。回復後には、再度、骨折を招いてしまわないように転倒予防につとめましょう。

特に、足を使った運動を行い、日頃から筋力強化を意識することが大切です。また、骨を強く保つためにも、骨を作るタンパク質やカルシウムなどを摂取するような食生活の見直しも行うとよいでしょう。

また、痛みを悪化させないためには、サポーターなどで膝を保護するのもおすすめです。

痛みが続く場合には、医師や理学療法士などの専門家からアドバイスを受けるだけでなく、自ら膝蓋骨骨折を予防するような生活を意識して、大切な膝関節を守っていきましょう。

参考

日本骨折治療学会
草加整形外科内科
東住吉森本リハビリテーショ病院

伊東 浩樹（理学療法士）

理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。