脳卒中に対するリハビリの流れを解説|リハビリの内容や重要性もご紹介
公開日:2025.02.27
文:内藤 かいせい(理学療法士)
脳卒中とはどのような病気なのか、どのようなリハビリを行うのか知りたい方はいませんか?脳卒中は脳の障害の総称であり、片麻痺や感覚障害などのさまざまな症状が現れます。
これらの症状を改善させるためには、リハビリが重要です。
この記事では、脳卒中の症状や発症時期に応じたリハビリ内容について解説します。脳卒中について知ることで、発症後のリハビリの流れを把握できるでしょう。
脳卒中とはどんな病気?
脳卒中とは、脳の血管に異常が起きることで発症する病気の総称です。脳卒中(脳血管疾患)は日本の死因の第3位を占めているため、いかに危険な病気かわかるでしょう。脳卒中には、おもに以下の3つの種類に分類されています。
2. 脳出血:脳の血管が破れる病気
3. くも膜下出血:くも膜という脳を包む膜の下で起こる出血
それぞれ発症のメカニズムは異なりますが、いずれも脳の血管に関わる病気です。脳卒中の発症要因としては、以下があげられます。
● 糖尿病
● 喫煙
● 飲酒
● 肥満
脳卒中によって引き起こされる症状
脳卒中の症状は多様で、脳のどの部分に障害が起きたかによって変化します。脳卒中のおもな症状は以下のとおりです。
● 感覚障害
● しびれ
● ろれつの悪さ
● 言葉の出にくさ
● 聞き取りにくさ
● 視野障害
● 意識障害
● 記憶障害
● 注意の散漫
● 感情のコントロールの不良
身体的なものだけでなく、コミュニケーション能力や人が備わっている高い機能(高次脳機能)などが障害されることも珍しくありません。これらの症状が突然現れた場合は、脳卒中の可能性を考え、すぐに医療機関を受診することが重要です。
脳卒中に対するリハビリの重要性
リハビリは、脳卒中を改善するための重要な役割があります。脳卒中を発症した後に安静期間が続くと、身体機能が低下しやすくなり、症状の悪化につながります。そのため、早期からリハビリを行い、少しでも体力や身体機能を落とさないようにすることが重要です。
「脳卒中治療ガイドライン」によると、脳卒中の発症早期からの積極的なリハビリが強く推奨されています。脳卒中を発症したら早期から処置を行い、1日でも早くリハビリを進めることが症状改善のポイントです。
脳卒中の方に行われるリハビリの内容
脳卒中に対して行われるリハビリとしては、以下の3つがあげられます。
● 作業療法
● 言語聴覚療法
ここでは、それぞれのリハビリの内容について解説します。
理学療法
理学療法は、「立つ・座る・歩く」などの基本的動作の獲得を目指し、身体機能の改善を図るための治療法です。理学療法には、おもに「運動療法」と「物理療法」の治療が行われます。運動療法は、名前のとおり運動を中心とした治療のことで、以下のような内容が行われます。
● 関節可動域訓練(ストレッチ)
● 動作練習(歩行・立ち座りなど)
物理療法は、温熱・電気などの物理的な刺激を用いて、痛みの緩和や筋力強化などを図る治療法です。そして、このような理学療法を提供する職種が、「理学療法士」です。脳卒中の入院時は、理学療法士や後述する作業療法士・言語聴覚士などと一緒にリハビリを実施します。
作業療法
作業療法とは、「作業」に着目して日常生活に必要な動作の回復を目指す治療法です。作業とは、基本的な動作だけでなく、以下のような応用的な動作も含めた活動を指します。
● 洗濯
● 掃除
● 仕事
● 趣味活動
患者さんの生活状況や目標をもとに、その方に必要な動作の獲得に向けたリハビリが行われます。このようなリハビリを提供するのが、作業療法士です。作業療法士は、患者さんの状態を評価し、その方に適したリハビリプログラムを立案・実施します。
言語聴覚療法
言語聴覚療法とは、脳卒中によって生じた言語障害や嚥下障害(飲み込みの障害)の改善を目指す治療法です。脳卒中は、身体的な障害だけでなくコミュニケーションや食事に関わる機能が低下する可能性もあります。
言語聴覚療法は、そのような機能を回復させて、その人らしい生活を送れるようにサポートします。この言語聴覚療法を実施するのが、言語聴覚士です。
脳卒中を発症した後のリハビリの流れ
脳卒中を発症した時期によって身体の状態は変化するため、リハビリの内容も都度変わります。ここでは、発症時期に応じたリハビリ内容について解説します。
急性期のリハビリ
脳卒中発症直後の時期が、急性期です。この時期は安静による身体機能の低下を防ぐために、発症早期からリハビリが行われます。ただし発症直後で状態が不安定のため、無理のない範囲でリハビリを進めます。
この時期のリハビリは、ベッド上での関節可動域訓練や筋力トレなどが中心です。ベッド上から離れられる方は、立ち座りの練習や歩行練習なども行われます。
回復期のリハビリ
回復期を過ぎて、状態が安定してきた時期が回復期です。この時期では機能回復が見込める時期のため、より集中的なリハビリが行われます。回復期の病院へ転院する患者さんも多く、1日3時間のリハビリを行うケースも多いです。
さらに、リハビリを進めて自宅復帰の目処が立つようになったら、生活で必要な動作の獲得や家屋環境の調整なども行われます。
維持期(生活期)のリハビリ
回復期を過ぎて、機能改善のスピードがゆるやかになった時期が維持期です。維持期になると、医療機関を退院する、またはその目処が立っていることが多いといえます。この時期では、回復期で獲得した機能を維持しつつ、より安全に生活を送るためのリハビリが行われます。具体的には、筋トレや可動域訓練だけでなく、自宅の生活に必要な動作練習やアドバイスなどが中心です。
退院後の方も多いことから、介護サービスを利用してデイケアや訪問サービスなどでリハビリを受ける方も多いでしょう。
脳卒中のリハビリ内容や流れをおさえておこう
脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症する病気で、さまざまな症状が現れるのが特徴です。脳卒中のリハビリには理学療法や作業療法、言語聴覚療法などがあり、それぞれの特徴を活かしたアプローチが行われます。
また、発症時期によってどのようなリハビリが行われるのかが変わります。ぜひ今回の記事を参考にして、脳卒中のリハビリ内容や流れについて把握しておきましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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