片麻痺に対するリハビリは?時期に応じた内容や自宅でのメニューをご紹介
公開日:2025.02.26
文:内藤 かいせい(理学療法士)
片麻痺になるとどのような状態になるのか、どのようなリハビリが行われるのか知りたい方はいませんか?片麻痺は脳卒中によって引き起こされる症状で、半身が動きにくくなるのが特徴です。この症状を改善するには、リハビリの実施が重要です。
この記事では、片麻痺のリハビリ内容や自宅で行えるメニューをご紹介します。片麻痺に関する知識を深めることで、より実践的なリハビリの実施につながるでしょう。
目次
片麻痺とは?
片麻痺とは、身体の左右どちらかの半身が動きにくくなる症状のことです。手や足だけでなく顔面の動きも不自由になる恐れがあり、日常生活では以下のような動作に支障をきたしやすくなります。
● コップを持って水を飲む
● 着替える
● トイレをする
● 食べ物を食べる
また、麻痺した側の感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりすることもあるでしょう。片麻痺の程度は人によってさまざまで、後述する脳卒中の重症度によって大きく変化します。
片麻痺の原因
片麻痺の代表的な原因は、脳卒中です。脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症する病気です。脳卒中は、以下の3つに大きく分類されています。
● 脳出血
● くも膜下出血
脳梗塞は、脳の血管が詰まって脳組織が死んでしまう病気のことです。脳出血は、脳の血管が出血することで発症する病気です。くも膜下出血は、「くも膜」と呼ばれる脳を覆っている膜の下で、出血を起こすことで発症します。
脳には、身体の動きをコントロールする「運動野」と呼ばれる部分があります。この運動野は前頭葉(頭の前の部分)にあり、脳卒中によってその領域が障害を起こすと、片麻痺の発症につながるのです。
片麻痺に対して行われるリハビリ内容
片麻痺に対して行われる代表的なリハビリとして、以下があげられます。
● 物理療法
● 装具療法
ここでは、それぞれのリハビリ内容について詳しく解説します。
運動療法
運動療法は、運動を中心に麻痺した部位の機能回復や、日常生活動作の改善を目指す治療法です。運動療法の内容としては、以下のとおりです。
● 関節可動域訓練
● バランス訓練
● 動作訓練
これらのトレーニングによって、片麻痺によって動きにくくなった半身に刺激を入れます。「脳卒中治療ガイドライン」によると、運動療法の実施は脳卒中の機能障害やADL(日常生活動作)を改善するとされています。その重要度から、運動療法は片麻痺のリハビリのメインとなる治療法といえるでしょう。
物理療法
物理療法とは、熱や電気などの物理的な刺激を用いて治療を行う方法です。物理療法は、種類によってさまざまな作用が期待できます。片麻痺に対してよく行われているのが、電気刺激による治療です。
電気刺激によって筋肉の収縮をサポートして、片麻痺の機能改善を図ります。実際に、電気刺激を活用したリハビリを行うことで、麻痺側の筋萎縮の予防や機能改善がみられたという報告もあります。
装具療法
装具療法とは、装具を使用して麻痺した部位をサポートする治療法です。装具を使用することで、効率的に運動療法を行えるメリットがあります。たとえば、片麻痺によって足が動きにくい方に対しては、下肢装具を使用します。下肢装具によって足の固定性が高まり、立ったり歩いたりする際の安定性が高まるのです。
また上肢の場合は、肩の筋力低下による脱臼を予防するためのスリングを使用するケースもあるでしょう。このように、装具はさまざまな種類があり、その方に適したものを使用することで高い効果を発揮します。
片麻痺を発症した時期に応じたリハビリ
片麻痺を発症した時期によって、身体の状態は大きく異なります。具体的な時期として、大きく以下の3つに分けられます。
● 回復期
● 維持期(生活期)
ここでは、それぞれの時期によるリハビリの内容についてみていきましょう。
急性期
脳卒中を発症して片麻痺の症状が現れはじめた時期が、急性期です。この時期は症状が不安定となりやすいですが、安静による寝たきり状態が続くと、関節の硬さや筋力低下が進む恐れがあります。そのため、早期からのリハビリが行われます。
急性期で行われるリハビリは、以下のとおりです。
● 座位保持の練習
● 立位保持の練習
● ベッドから車椅子の乗り移り
病状を確認しつつ、無理のない範囲でリハビリを進めていきます。
回復期
急性期を過ぎて、症状や状態が安定してきた時期が回復期です。回復期では損傷した脳の機能が少しずつ戻るとされているので、片麻痺をはじめとした症状の改善が期待できます。そのため、この時期では積極的なリハビリが実施されます。
リハビリによって機能の改善を図りつつ、生活に必要な動作の獲得や退院に向けた環境調整なども並行して行うのも特徴です。
維持期(生活期)
回復期を過ぎて、脳卒中の改善度合いがゆるやかになった時期が維持期(生活期)です。維持期では、回復期で得た機能の維持・向上を目的としてリハビリが行われます。生活期でのおもなリハビリ内容は、以下のとおりです。
● 体力維持のための運動
● 趣味活動を通じたリハビリ
● コミュニティでの活動参加
これらは、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリなどのサービスを利用しながら行われます。
自宅でできる片麻痺のリハビリ
ここでは、自宅でできる片麻痺のリハビリについてご紹介します。
● 両手を持って痛みの出ない範囲で上下に動かす
● 両手を持って身体ごと左右に動かす
● 非麻痺側を使って麻痺側の指を伸ばす
● 机の上に両手を乗せて、前方に伸ばす
● 座った状態で膝を伸ばす
● 座った状態でもも上げをする
● 手すりを持ちながら立ち座りを繰り返す
● スクワットをする
● かかと上げをする
これらのリハビリは、痛みの出ない範囲で行いましょう。足のリハビリでふらつきがみられる場合は、手すりや壁につかまりながら行うと安定して行えます。
介護サービスによる片麻痺リハビリの検討も
片麻痺のリハビリを継続的に行うために、介護保険サービスの利用を検討してみましょう。病院を退院したあとも、デイケアや訪問リハビリなどのサービスを活用することで、継続してリハビリを受けられます。
デイケアは、医療機関や介護老人保健施設などの施設に通い、リハビリを受けられるサービスです。施設によっては食事や入浴のサービスもあるので、家族にかかる負担も軽減できます。訪問リハビリは、専門職が自宅を訪問してリハビリを受けられるサービスです。外出しなくとも、自宅で質の高いリハビリを行えるのがメリットです。
これらのサービスを利用するには要介護認定を受ける必要があるため、希望する場合はまずケアマネジャーに相談してみましょう。
片麻痺のリハビリで身体機能の維持・改善を
片麻痺とは、身体の半身が動きにくくなる症状で、脳卒中によって引き起こされます。片麻痺のリハビリには運動療法や装具療法などがあり、時期によっても内容が変化します。
片麻痺の症状を改善するためには、医療機関や自宅でのリハビリだけでなく、介護サービスの利用もおすすめです。ぜひ今回の記事を参考にして、リハビリを継続していきましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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