専門理学療法士を取得するには?取得までの流れやメリットを解説
公開日:2025.02.22
文:内藤 かいせい(理学療法士)
専門理学療法士とはどのような資格なのか、どのような方法で取得するのか知りたい方はいませんか?専門理学療法士は特定分野のスペシャリストのことで、資格の取得によってさまざまなメリットを得られます。
この記事では、専門理学療法士の取得の流れやメリットについてご紹介します。資格に関する知識を深めることで、うまく計画を立てながら取得を目指すきっかけになるでしょう。
目次
専門理学療法士とは?
専門理学療法士とは、どのような資格なのでしょうか。ここでは専門理学療法士について詳しくみていきましょう。
高い専門性を有したスペシャリストのこと
専門理学療法士とは、理学療法士のなかでもより高度な専門知識と技術を持ったスペシャリストのことです。この資格は、日本理学療法士協会が認定する制度の1つであり、定められた条件を満たすことで取得が可能です。
日本理学療法士協会によると、専門理学療法士の取得者(延べ人数)は2024年3月の時点で「4,137名」とされています。協会の総会員数が139,556名であるため、専門理学療法士の割合は全体の約3%となります。このことから、専門理学療法士は非常に希少性の高い資格といえるでしょう。
専門理学療法士の認定分野
専門理学療法士には13の認定分野があり、そのなかから選択して取得を目指します。そのため、実際の名称は「○○専門理学療法士」となります。認定分野の種類は、以下のとおりです。
2. 神経理学療法
3. 小児理学療法
4. 運動器理学療法
5. スポーツ理学療法
6. 心血管理学療法
7. 呼吸理学療法
8. 糖尿病理学療法
9. 地域理学療法
10. 予防理学療法
11. 支援工学理学療法
12. 物理療法
13. 理学療法教育
これらの分野から選択したうえで、専門理学療法士の取得を目指します。
専門理学療法士の取得までの流れ
専門理学療法士を取得するための流れは、以下のとおりです。
2. 登録理学療法士になる
3. 専門理学療法士に必要な要件を満たす
4. 専門理学療法士の口頭試験に合格する
ここでは、それぞれの流れについて詳しく解説します。
1.日本理学療法士協会の会員になる
専門理学療法士になるには、まず日本理学療法士協会の会員になる必要があります。日本理学療法士になるための流れは、以下のとおりです。
2. 基本情報を登録する
3. 入会金や年会費の支払いをする
4. 入会が承認され、会員証を受けとる
入会申請してから、すぐに会員になれるわけではない点に注意しましょう。申請後、約1〜2週間経過したら承認されるので、そのタイミングで会員のサービスを受けられます。
2.登録理学療法士になる
日本理学療法士協会の会員登録後は、登録理学療法士を目指す必要があります。登録理学療法士とは、協会による生涯学習制度の1つで、認定・専門理学療法士の基盤となる資格といえます。
指定された「前期・後期研修」を履修することで、この資格の取得が可能です。それぞれの研修の内訳について、以下の表にまとめました。
前期研修 | 座学:22コマ(33時間) 実地研修:32コマ(48時間) |
---|---|
後期研修 | 座学:51コマ(76.5時間) A. 臨床推論 B. 臨床疫学 C. 領域別研修(座学) D. 関連領域 E. 領域別研修(事例・育成) 実地経験:3年(36か月) |
前期の最短履修期間は2年、後期は3年です。そのため、登録理学療法士になるには最短でも5年の期間が必要です。
3.専門理学療法士に必要な要件を満たす
登録理学療法士になった後は、専門理学療法士になるための要件を満たす必要があります。おもな要件は以下のとおりです。
● ブロック学会の参加
● 都道府県学会の参加
● 日本理学療法学会連合の会員団体が主催の学術大会での発表
● 査読付き原著論文業績
これらの要件を満たした後に、専門理学療法士の申請を行います。
4.専門理学療法士の口頭試問に合格する
専門理学療法士の申請後は、口頭試問が行われます。この試問に合格したら、認定証が発行され、専門理学療法士として名乗ることが可能です。口頭試問は専門分野に関する資質を確認することを目的としており、提出した論文を審査するものではありません。
専門理学療法士と認定理学療法士の違い
日本理学療法士協会の生涯学習制度には、専門理学療法士だけでなく認定理学療法士という資格もあります。認定理学療法士とは、専門理学療法士と同じように特定分野のスペシャリストであることを証明する資格です。こちらも登録理学療法士を取得後に目指すもので、おもな要件は以下のとおりです。
● 臨床認定カリキュラムの受講
● 日本理学療法学術研修大会の参加
これらの要件を満たしたうえで、認定試験に合格すれば資格の取得が可能です。要件の違いから、専門理学療法士と比較すると、認定理学療法士のほうが取得難易度は低い傾向にあります。
実際に、認定理学療法士の取得者(延べ人数)は2024年3月の段階で、「17,145名」とされています。専門理学療法士の取得者が4,137名なので、認定理学療法士のほうが4倍以上も多いことがわかるでしょう。
専門理学療法士を取得するメリット
専門理学療法士を取得することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。
理学療法士としての希少性が高まる
専門理学療法士を取得することで、理学療法士としての希少性が高まります。前述したように、専門理学療法士の資格取得割合は会員全体の約3%と、非常に少数です。そのため、特定分野における専門家として高い評価を得やすいといえるでしょう。
超高齢社会における医療ニーズの多様化に伴い、専門性の高い理学療法士の需要は今後さらに高まることが予想されます。
転職が有利になりやすい
専門理学療法士の資格は、転職活動でも大きなアドバンテージになります。専門的な知識や技術を持っている理学療法士は、どの職場からも高い評価を受けやすい傾向にあります。
専門理学療法士を取得しておけば、特定領域のスペシャリストであることを証明できるため、優遇されやすくなるのです。職場によっては、給料アップや昇給などの高待遇を得られるケースもあるでしょう。
新しいキャリアを目指すきっかけにもなる
専門理学療法士の資格取得は、理学療法士としての新たなキャリアが生まれるきっかけにもなります。たとえば、専門的な知識や技術を持つことで、教育機関での講師や医療機関での実習指導者として活躍可能です。さらに、専門理学療法士を取得する過程で得た知識や経験をもとに、研究機関での仕事を目指すきっかけにもなる可能性もあります。
専門理学療法士の資格は、理学療法士としてのキャリアの幅を大きく広げる可能性を秘めているのです。
専門理学療法士を取得した後の注意点
専門理学療法士を取得した後の注意点として、更新があることです。専門理学療法士の資格は永続的なものではなく、5年ごとに更新する必要があります。更新に必要な条件は、以下の3つです。
● 都道府県理学療法士会学術雑誌への投稿
● ブロック主催学会での一般発表の筆頭演者
● 都道府県理学療法士学会での一般発表の筆頭演者
2. 維持・研鑽のための活動における100点の取得
3. 更新時研修
また、専門理学療法士に加えて、登録理学療法士の更新もする必要がある点に注意しましょう。登録理学療法士も5年ごとの更新が必要で、一定のポイントを取得したうえで、特定の研修を受講する必要があります。これらの更新をしないと資格の保持ができないので、この点を必ずおさえておきましょう。
専門理学療法士を取得してキャリアアップを目指そう
専門理学療法士は日本理学療法士協会が定めた資格で、取得にはさまざまな要件が求められます。専門理学療法士を取得することで理学療法士としての信頼性が高まり、新しいキャリアを目指せるきっかけにもなります。
この資格は永続的なものではなく、5年ごとの更新がある点には注意しましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、専門理学療法士の取得を目指してみてください。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
他の記事も読む
- パーキンソン病にリハビリは効果的!リハビリの具体的な方法と注意点・禁忌まで詳しく紹介!
- 高齢者に多い大腿骨頸部骨折!リハビリの流れと再発予防のポイントを解説
- 【失敗談】転職した言語聴覚士(ST)の失敗事例|転職で後悔しないための注意点を紹介
- 福祉用具専門相談員とはどんな仕事?なり方や向いている人などを解説
- 作業療法士必見!関わる機会が多い福祉用具の種類と選定のコツを解説
- 理学療法士と看護師のダブルライセンスのメリットは?取得の流れについて解説
- 理学療法士の男女比は?女性理学療法士が活躍している背景や今後の需要
- 下肢のMMTのやり方を解説|評価基準や実施中の注意点もご紹介
- 脳卒中に対するリハビリの流れを解説|リハビリの内容や重要性もご紹介
- 片麻痺に対するリハビリは?時期に応じた内容や自宅でのメニューをご紹介
- パーキンソン病のリハビリメニューとは?自宅で行える内容をご紹介
- 自宅でできる脳梗塞のリハビリ内容は?おすすめのリハビリサービスもご紹介
- 脊柱管狭窄症のリハビリ内容は?普段の生活での注意点も解説
- 理学療法士の養成校の学費はなぜ高い?理由や学費のおさえ方を解説
- 筋緊張とは?異常時の反応や検査法、アプローチ法を解説
- 【理学療法士も必見!】マッサージのやり方は?具体的な効果や注意点をご紹介
- 腱板断裂とは? 原因、症状、リハビリ方法をわかりやすく解説
- 認知症のリハビリとは?流れとアプローチ4選を解説
- 言語聴覚士になるには「手話」が必要?手話を学ぶべき理由と勉強方法を解説
- 理学療法士の国家試験に落ちる人の特徴は?合格のためのポイントも解説