福祉用具専門相談員とはどんな仕事?なり方や向いている人などを解説
公開日:2025.03.14
文:かな(作業療法士)
理学療法士・作業療法士のなかで、「福祉用具専門相談員」という仕事が気になっている人もいるでしょう。
福祉用具専門相談員は、利用者の生活を支える役割を担う職種です。基本的に介護保険制度のもとで、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づき、福祉用具の選定や調整などを行います。
本記事では、福祉用具専門相談員の仕事内容やなり方、働く場所を解説します。年収やどのような人が向いているのかについてもあわせて解説します。
福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員は、介護や福祉の現場で利用者の生活をサポートするために欠かせない存在です。利用者のニーズに応じた福祉用具を提案し、使い方の指導やアフターケアを行って、QOLの向上に寄与しています。
しかし、セラピストのなかには福祉用具専門相談員と関わる機会がなく、どんな仕事をしていて、どんな場所で活躍しているのか知らない人も多いでしょう。ここからは福祉用具専門相談員の具体的な仕事内容と職場について解説します。
福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員の主な業務は以下の通りです。
● 貸与や販売:各事業所で利用者に対して行う
● 利用者宅への訪問や用具の調整:住宅の構造や環境に合わせた調整や説明、点検などを行う
● 書類作成:ケアマネジャーのケアプランをもとに福祉用具の利用計画を立て、計画書を作成する
このように、利用者に福祉用具を提案するところから、提供やその後の調整、事務的な書類仕事まで行います。
福祉用具専門相談員が働いている場所
福祉用具専門相談員の働く場所は、基本的に介護保険の指定を受けた福祉用具の貸与や販売を行う事業所(福祉用具貸与事業所)です。福祉用具の貸与や販売を行う事業所では、2名以上の福祉用具専門相談員の配置が義務付けられています。
また、介護保険関連以外でも福祉用具専門相談員が働く場所はあります。その専門性から福祉用具を販売している店舗が活躍の場となるため、百貨店やホームセンターなども職場になりえます。
福祉用具専門相談員のなり方
福祉用具専門相談員になる方法は2通りあります。「講習と試験を経て福祉用具専門相談員の公的資格を取得する方法」と「特定の国家資格を所有する方法」です。以下でそれぞれ解説します。
指定講習会・試験合格で資格を取得する
福祉用具専門相談員の資格は、講習を受けて試験をパスすれば取得できます。受験資格は特にありません。
都道府県が指定する事業者が講習を行っているため、講習を受講後に試験を受けて合格すると資格取得となります。
指定講習会は50時間あり、内容は、福祉用具専門相談員の役割・介護保険制度に関する基礎知識・介護医療に関する基礎知識・福祉用具に係るサービスの仕組みの知識などが含まれます。
受講料は講習実施者により異なりますが、4万円前後の場合が多いようです。
特定の国家資格を有している
特定の国家資格保有者は福祉用具専門相談員として、業務に従事できます。
福祉用具の知識があるとされる国家資格は、介護福祉士・社会福祉士・理学療法士・作業療法士・看護師・保健師・義肢装具士です。
これらの資格保有者は特別な試験を受けなくても、福祉用具の貸与や販売をしている事業所で福祉用具専門相談員として勤務可能です。
福祉用具専門相談員に関するよくある疑問
ここからは、福祉用具専門相談員に関するよくある疑問に答えていきます。
福祉用具専門相談員に向いている人は?
福祉用具専門相談員の仕事は、以下のような人が向いています。
探究心や向上心が強い人:福祉用具は新しい製品が次々と出てくるため。
身体機能や環境条件を考えられる人:同じ疾患でも利用者の身体機能により適切な福祉用具も異なる。そのため、利用者の身体機能と使用環境を総合して福祉用具の選定が必要であるため。
コミュニケーションが得意な人:利用者や家族からヒアリングして福祉用具の提案をする必要があるため
新しい福祉用具にアンテナを張れる人、利用者や家族とのコミュニケーションが苦にならず最適な提案を考えられる人なら、福祉用具専門相談員として活躍できるでしょう。
福祉用具専門相談員の年収は?
福祉用具専門相談員として働くことを検討するうえで、年収も気になるポイントの一つです。
公的な年収のデータである賃金構造基本統計調査において、福祉用具専門相談員は「その他のサービス職業従事者」という分類で、他の職種とまとめられているため、福祉用具専門相談員のみ年収がわかるデータはありません。しかし、求人サイトに記載されている求人の月給を見ると、22~33万程度に設定されているケースが多いようです。
福祉用具専門相談員の仕事は大変?
福祉用具専門相談員の仕事は大変なのか気になる人もいるでしょう。福祉用具専門相談員の通常業務のなかには、大きな福祉用具の運搬をしたり組み立てたりといった仕事もあります。そのため、想像していたよりも身体的な負担が大きいと感じる人もいるかもしれません。また、利用者や家族と関わる仕事のため、精神的な負担を感じる人もいるでしょう。
ただし、どの仕事にも大変だと感じる側面はあるものです。今の仕事と比較して、自分の得意不得意とあわせて考えると良いかもしれません。
「福祉用具プランナー」や「福祉用具選定士」との違いは?
福祉用具専門相談員には類似する資格があるため、違いが気になる人もいるでしょう。
よく耳にする「福祉用具プランナー」や「福祉用具選定士」は民間資格です。いずれも受験資格として、「福祉用具専門相談員としての実務経験2年以上」が必要です。そのため、福祉用具専門相談員の上位資格といえます。
まとめ|セラピストは資格不要で福祉用具専門相談員として働ける
福祉用具専門相談員は、福祉用具の専門家として利用者に最適な福祉用具の提案や調整などを行う仕事です。利用者の生活を支えるやりがいのある仕事であり、高齢化により活躍の場も増えていくと予想されます。
福祉用具専門相談員になるには、講習会の受講に加え、試験に合格する必要があります。ただし、理学療法士や作業療法士をはじめとした福祉用具の知識があるとみなされる国家資格を保有していれば、講習や試験は必要なく「福祉用具専門相談員」として働けます。
福祉用具専門相談員は、福祉用具を介して 利用者の役にたつ、QOLにも関わる仕事です。興味のある人は、求人を探してみましょう。
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かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。
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