ゴニオメーターの正しい測定方法とは?よくある悩みと解決策を徹底解説
公開日:2025.05.20
文:かな(作業療法士)
リハビリの現場で関節可動域(ROM)を評価する際、ゴニオメーターは欠かせないツールです。正確な測定は患者さんのリハビリ計画の立案や経過観察に直結するため、適切な使い方を理解しておくことが大切です。そこで今回は、ゴニオメーターの基本的な測定方法やよくある悩みとその解決策、ゴニオメーターの種類について解説します。
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ゴニオメーターとは
ゴニオメーターとは関節可動域(Range of Motion)を測定するための器具で、主に理学療法士や作業療法士が患者さんの関節の動きやリハビリの進捗を評価するために使用します。
基本的な構造は円盤の中心軸もしくは円盤状の角度計の中心軸に2本のアームが取りつけられたものが一般的です。対象の関節のランドマークに合わせて角度を読み取り、可動域を測定します。素材や形状はさまざまで、プラスチック製、金属製、デジタル製などがあります。
ゴニオメーターはROMの評価や術後の回復過程、プログラムの効果測定に不可欠なツールです。しかし、使用経験が少ない人や長期間身体障害領域に携わっていなかった人は、使い方に不安を感じるかもしれません。ここで基本的な測定方法や注意点を再確認しましょう。
ゴニオメーターを使った測定の基本
ゴニオメーターでの測定は「どの姿勢で、どこに当てるか」が重要です。以下の点を事前に確認しておきましょう。
● 基本軸と移動軸の設定
● 参考可動域
● 使用するゴニオメーターの種類
また、基準値と比較してその後の経過を追うことも大切です。
測定の際に慌てることがないように、事前に自宅や職場で十分に練習やシミュレーションしてから行いましょう。
ゴニオメーターの使い方
ゴニオメーターの使い方は測定する関節運動によって異なります。例えば、膝関節屈曲を測定する場合は以下の手順で行いましょう。
2. 基本軸の設定:大腿骨に合わせてゴニオメーターをセットします。
3. 測定位置の確定:膝関節を限界まで曲げ、そこで止めます。疼痛がある場合は「pain」と記載します。
4. 移動軸の合わせ方:移動軸である腓骨にゴニオメーターを合わせ、アームがずれないように注意しながら測定します。
特に多関節筋が関与する運動では、正しい肢位で測定しないと正確な数値が得られません。例えば、膝関節屈曲の場合は股関節が屈曲位となっているかどうかも確認しましょう。
ゴニオメーター使用時のよくある悩みと解決策
関節可動域を測定するうえで不可欠なゴニオメーターですが、使用に際してさまざまな悩みやミスが発生することも少なくありません。
ここでは、特によく聞かれる悩みについて解説します。
ゴニオメーターの位置がずれないようにするには?
測定中にゴニオメーターが動いてしまい、正確に測定できないという経験をお持ちの方は多いでしょう。その対策としては、ランドマークを事前に確認し、ゴニオメーターをしっかりと固定することが重要です。
しかし、重たいタイプのゴニオメーターの場合、固定しづらく、角度を合わせている間にずれてしまうことがあります。そのような場合には、数値を固定できる機能が付いた「デジタル式ゴニオメーター」を使用するといいでしょう。また、目盛の読み間違いが多いという方にもおすすめです。
また、手指など特定の部位を測定する場合には手指用のゴニオメーターを使用するなど、測定箇所に適した器具を使いましょう。
測定者間の誤差を防ぐには?
同じ患者さんを測定しているにもかかわらず、測定者によって数値が異なる場合があります。
この場合、測定肢位や基準軸、移動軸の設定が一致していない可能性があります。そのため、各関節運動の測定方法を再確認し、同じ職場内で測定方法の統一が必要です。
ゴニオメーターの種類
ゴニオメーターにはいくつかの種類があり、医療機器専門店やECサイトで購入できます。勤務先の病院や施設によっては、カタログを見て注文することも可能です。
代表的な種類は以下の通りです。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
東大式 | ●丈夫 ●目盛が消えにくく見やすい |
●やや重い ●比較的高価 |
プラスチック製 | ●軽量で持ち運びしやすい ●様々な部位に使いやすい |
●強度がやや弱い ●目盛の数値が薄くなる場合がある |
伸縮式 | ●アームの長さを伸縮できるため、関節の大小にかかわらず容易に計測できる ●コンパクト |
●比較的高価 |
デジタル式 | ●数値が一目で分かりやすく読み間違いを防げる ●製品によっては数値固定機能がある |
●比較的高価 ●電池が必要 |
適切な測定を行うためには、関節の大きさに合ったゴニオメーターを使用するのが理想的です。
股関節や肩関節のような大関節であれば、アームの長いゴニオメーターが適していますが、手関節ならアームが15cm程度、手指なら5〜10cm程度のものが適しています。しかし、職場によっては持ち運びや使い分けが難しい場合もあるため、汎用性が高いプラスチック式や伸縮式を用いるのもいいでしょう。
東大式
東大式ゴニオメーターは、臨床現場でもよく見かける一般的な金属製のタイプです。大きいタイプを目にする機会が多いかもしれませんが、20cm程度の小さいタイプも販売されています。
丈夫で目盛も見やすいのがメリットですが、少し重たいのが難点です。大関節には使いやすい一方で、小関節には少し使いにくいかもしれません。
プラスチック製ゴニオメーター
プラスチック製のゴニオメーターは、医療系の学生がよく購入するタイプで、多くの方にとって馴染み深いものでしょう。
軽量で持ち運びしやすく、比較的さまざまな箇所を測定しやすいものの、大きな関節はやや測りにくいかもしれません。
また、使い方によっては目盛の数値が薄くなる場合もあります。しかし、安価であるため買い替えがしやすいというメリットもあります。
伸縮式ゴニオメーター
伸縮式ゴニオメーターはアームの長さを伸縮させられ、関節の大小にかかわらず容易に計測できるタイプです。
一般的に、大関節では東大式のような金属製の大きなタイプを使用する場合が多いですが、伸縮式であれば製品によっては軸を20cmから70cm程度まで伸ばせるため、これ一本で主要な関節を測定できます。
デジタルゴニオメーター
デジタルゴニオメーターは、アームを軸に合わせて動かしていくと、角度がデジタル表示されるものです。
アナログで起こりがちな見る位置や角度による誤差、読み間違いといったミスをなくせる画期的なタイプといえます。また、製品によっては、過去数回分の測定値が確認できるものや測定数値を固定できるものもあります。
まとめ|ゴニオメーターで測定する際は、合わせ方の練習もしよう
ゴニオメーターはリハビリにおけるROMの評価に不可欠なツールです。しかし、位置ずれや読み間違い、測定誤差といったミスが起こりやすいため、まずは正しいランドマークの確認と測定方法を遵守することが大切です。
また、できるだけ測定する関節に合ったサイズのものを使用する、事前に練習しておくなどするとより正確な数値を得られます。
ゴニオメーターにはいくつか種類があるため、それぞれのメリットとデメリットを踏まえたうえで、自分にとって使いやすいものを選択するといいでしょう。正確な測定ができるように、日頃から使い分けや練習を心がけましょう。
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かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。
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