海外で理学療法士の仕事はできる? 日本との違いを徹底解説
公開日:2025.07.13

文:まさ(理学療法士)
海外で理学療法士として働きたいと思ったことがある人もいるでしょう。しかし、いざ働こうと思っても、どんな情報を集めればよいかはなかなかわからないものです。
海外で理学療法士として働くには、日本と海外の制度の違いや免許取得の流れなどを正しく理解しておくことが不可欠です。
本記事では、日本と海外の制度や働き方の違い、海外で働くメリット・デメリット、免許取得の流れ、そして海外でのキャリアについて詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、海外での理学療法士のキャリアについての理解を深めてください。
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日本と海外の理学療法士制度・働き方の違い

理学療法士は日本国内だけでなく海外でも活躍しています。しかし、国によって制度や働き方が異なります。まずはそれらを理解していきましょう。
日本の制度と働き方
日本で理学療法士として働くには、国家資格を取得する必要があります。国家試験の受験資格を得るためには、次の養成校で3年以上学ぶ必要があります。
・短期大学(3年制)
・専門学校(3年制・4年制)
・特別支援学校(視覚障害者対象)
養成校で必要な知識と技術を身につけ、国家試験に合格すれば資格を取得できます。資格取得後は、病院やクリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリなどで勤務し、医師の指示のもとでリハビリを行い、患者さんの機能改善を支援します。
日本の理学療法士は名称独占資格であり、資格を持つ方のみが「理学療法士」という名称を使用できます。ただし、業務独占資格ではないため、資格を持たない人でもリハビリを行うことは可能です。また、独立開業権は認められていないため、単独で理学療法を提供することはできません。
参照元:公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士になるには」
厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法」
海外の制度・職域・責任範囲の違い
国によって制度は異なりますが、海外では理学療法士が医師の紹介なしに患者さんに直接アプローチできるところが多くあります。例えば、アメリカ、カナダ、オーストラリアでは、理学療法士が医師の診療なしに患者さんへ直接アプローチできる「Direct Access」の権利が認められています。この権利により、理学療法士は患者さんの治療方針を自ら決定し、独立して働くことができるのです。
職域は日本と同様に病院でのリハビリに加え、スポーツ領域、教育・研究分野など幅広く展開されています。
参照元:理学療法士養成における教育制度の国際動向 2013|J-STAGE
アメリカの理学療法|J-STAGE
海外で理学療法士として働くメリット・デメリット

海外で理学療法士として働くことには、さまざまなメリットとデメリットがあります。
海外で理学療法士として働くメリット
まず1つが、給与やキャリアの面でのメリットです。例えばアメリカでは、経験や専門性、勤務先によって年収は大きく異なりますが、平均年収は1,000万円以上とされています。日本の理学療法士の平均給与(約432万円)と比較すると、非常に高い水準であることがわかります。また、オーストラリアやカナダでも高収入が期待でき、特に都市部では需要が高まっています。
キャリアの面も、医師の指示を待たずに患者さんを診察してリハビリを行うことができるため、社会的地位も高い傾向にあります。また、海外では理学療法士が専門分野を持つことが一般的であり、キャリアアップの機会が豊富です。
労働環境は国によって異なりますが、多くの国では労働時間の上限が厳しく管理されており、残業が少ない傾向にあります。そのため、ワークライフバランスを確保しやすい職場環境が整っています。
海外で理学療法士として働くデメリット
一方、海外で理学療法士として働くには、多くの課題があるのも事実です。
その1つが言語です。日常会話での流暢な語学力はもちろん、医療専門用語を適切に使いこなすことも求められます。患者さんやスタッフとの円滑なコミュニケーションのために、語学力の向上は不可欠です。
文化の違いも重要な要素です。日本とは異なる文化背景を持つため、患者さんとの接し方や医療制度に適応する柔軟性が求められます。
また、海外で理学療法士として働くには、その国の資格を取得する必要があります。日本の資格を持っている場合でも、現地の試験や認証を受ける必要があるため、事前に情報を収集し、計画的に準備することが重要です。
海外で免許を取得する流れ
海外で理学療法士として働くには、主に3つの方法があります。
日本で理学療法士の資格を取得した後、海外で資格を取得する
日本で一定期間の実務経験を積んだ後、海外の理学療法士資格を取得する方法は、最も一般的なルートです。
アメリカ、オーストラリア、カナダなどの多くの国では、日本での資格や経験が評価され、現地の資格取得時に一部の手続きが免除される場合もあります。
このルートでは、日本で基本的な知識を土台にできるため、海外の現場でも信頼を得やすいメリットがあります。
しかし、国によっては日本の資格が認められず、書類審査や追加の教育課程、国家試験が必要となるため、手続きに時間や費用がかかる場合があります。また、現地の言語での専門的な試験に対応する語学力も重要です。
直接海外の理学療法士の資格を取得する
日本で資格を取得する前に、海外の大学や養成大学院に進学し、理学療法士の資格を取得する方法もあります。これは、若い世代や国際的な環境でキャリアをスタートさせたい人に適した選択肢です。
この方法では、国際的なカリキュラムで理学療法を学べるほか、卒業後にそのまま現地で就職できるメリットがあります。また、理学療法士の社会的地位が高い国では、学んだ内容が将来的なキャリアに大きく活かされます。
ただし、大学や養成大学院に入学するには、一定の語学力(IELTSやTOEFLのスコア)に加え、受験科目に対応できる十分な学力が求められます。また、学費や生活費の負担も大きい点に注意が必要です。
さらに、日本の理学療法士の資格ではないため、将来的に日本で働く場合は制限が生じる可能性があります。
青年海外協力隊などのボランティアスタッフとして海外に行く
海外で理学療法士として働く方法として、青年海外協力隊(JICA)もあります。主に開発途上国での活動になり、海外での実務経験を積むとともに、異文化を理解する貴重な機会になります。また、ボランティア活動を通じて得られる人脈や経験は、将来のキャリア形成に役立つでしょう。
ただし、活動は基本的にボランティアであるため報酬は少なく、生活環境も厳しい場合があります。また、派遣先によっては理学療法士としての活動が制限されることもあるため、柔軟性と適応力が求められます。
海外での理学療法士キャリアの可能性
海外で理学療法士として働くことは、日本とは異なる文化や制度の中で成長し、専門職としての経験を積む貴重な機会となります。
国ごとに医療制度やリハビリの考え方が異なるため、幅広い経験を積むことで国際的な視野が広がり、専門的な知識や技術を磨くことができます。さらに、海外でキャリアを積むことで、教育・研究職へ進む道や、国際機関でリハビリ支援活動に携わる機会が得られます。
帰国後も、海外で培った経験を活かし、管理職や教育者として活躍する機会があるなど、幅広い分野での活躍が期待されます。
自分のキャリアプランに合った選択を
理学療法士の制度や働き方は国によって異なります。日本では医師の指示のもとでリハビリを行いますが、海外では医師の指示なしで直接患者を診ることができる国もあります。さらに、給与や待遇が優れている国や、理学療法士の社会的立場が高い国も多くあります。
しかし、実際に勤務するには日常会話の語学力に加え、医療専門用語の理解も不可欠です。
海外で理学療法士として働く方法はいくつかあり、自分のキャリアプランや目的に合った選択をすることが重要になります。
海外での勤務経験は、今後のキャリアに大きな影響を与えるため、今回の内容を参考に、ぜひ一度検討してみてください。
参考
公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士になるには」
厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法」
理学療法の歩み「理学療法士養成における教育制度の国際動向2013」
徒手理学療法「アメリカの理学療法」
J. Chevanほか:Mind the Gap: An Analysis of Physical Therapist Earnings in the United States by Male/Female Sex.
賃金構造基本統計調査 「令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
公益社団法人 日本理学療法士協会「アメリカで理学療法士になるために」
公益社団法人 日本理学療法士協会「オーストラリアで理学療法士になるために」
公益社団法人 日本理学療法士協会「カナダで理学療法士になるために」
公益社団法人 日本理学療法士協会「国際活動で活躍したい方」

まさ(理学療法士)
2010年頃に理学療法士の国家資格を取得してから10年以上病院で勤務している。また理学療法士の資格だけでなく、ケアマネジャーの資格も取得しているため、医療・介護系の知識に精通している。それ以外にも、現在は管理職として在籍しているため、体のことだけでなく、医療・介護にかかわる制度など幅広い分野において情報を発信できる。

監修:関 勇宇大(理学療法士)
2014年、理学療法士免許を取得。回復期リハビリテーション病院にて、脳血管障害患者を中心にリハビリテーション計画を立案し、早期社会復帰を支援。訪問リハビリでは、在宅療養者とその家族に対し、生活環境に即した個別支援を提供。臨床経験で培った専門的知見をもとに、現在は医療ライターとして活動。運動療法クラウドサービス『リハサク』では、運動メニューの解説・動画制作も担当し、医療と表現の両面から、実用性と信頼性の高い情報発信を行っている。
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