オーストラリアで理学療法士として働くには?年収の目安や目標設定のポイントも紹介
公開日:2025.08.03 更新日:2025.08.04

文:伊東浩樹(理学療法士)
日本で理学療法士として働いている人のなかには、将来的に海外でのキャリアを考える人もいるかもしれません。数ある渡航先の選択肢のなかで、オーストラリアは「医療福祉の先進国」といわれ、理学療法の教育水準が高いことに加え、理学療法士の権限が大きいといった魅力があります。
オーストラリアで理学療法士として働くためには、いくつかのステップを踏む必要があります。この記事では、オーストラリアで理学療法士として働くための方法から、年収の目安、向いている人の特徴、そして目標設定のポイントについて解説していきます。
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目次
オーストラリアで理学療法士として働くための2つのルート

前提として、日本の理学療法士免許はオーストラリアでは通用しません。オーストラリアで理学療法士(Physiotherapist)として働くには、現地の医療従事者登録・審査機関である「Australian Health Practitioner Regulation Agency(AHPRA)」への登録が必要です。
AHPRAへ登録するためのルートとしては、大きく以下の2つがあります。
2.日本の理学療法士免許の書き換え試験を受ける
ルート① オーストラリアの大学・大学院の卒業
オーストラリアの大学または大学院で理学療法コースを修了し、卒業と同時に登録資格を得るルートです。コースは学部4年または大学院2年が一般的で、日本の理学療法士免許や職歴により期間短縮が可能な場合もあります。
なかには日本人の進学実績があり、語学コースを経由できる大学もあるため、英語が完璧でなくても進学しやすいルートといえるでしょう。
ルート②理学療法士免許の書き換え試験への合格
日本の理学療法士免許の書き換え試験に合格し、登録資格を得るルートです。
日本の理学療法士養成課程は、オーストラリアの学士課程とは一部教育内容や臨床実習時間に差があるため、「①書類審査」「②文化、安全トレーニングの受講」「③筆記試験」「④実技試験」を段階的にクリアする必要があります。
英語力の証明として、IELTS(Academic)で各項目7.0以上、またはOET(Occupational English Test)でBグレード以上のスコアが必要です。日本人にとってはこの英語要件が最初の大きなハードルになるかもしれません。併せて、現地で通用する臨床力が求められ、実技試験のための対策が不可欠です。
このルートは、オーストラリアの大学もしくは大学院を卒業するよりも費用や時間を抑えられる可能性がありますが、準備や試験の難易度を考慮するとハードルは高めです。
AHPRA登録後に必要なこと
上記いずれかのルートでAHPRAに理学療法士として登録した後、実際にオーストラリアで働くには、雇用主のサポート(雇用主とのスポンサー契約)を得てビザを取得する必要があります。多くの場合、一時的な就労ビザである「サブクラス482(Temporary Skill Shortage visa)」を利用しますが、就労者のための永住権である「サブクラス186」の取得を目指す道もあります。
また、働く州によっても規定や必要条件が細かく異なるため、希望勤務地の州や地域の詳細な規定を事前に確認して準備を進めることが重要です。
オーストラリアの理学療法士の年収
オーストラリアにおける理学療法士の年収は、経験年数や勤務先、地域によって異なりますが、60,000〜90,000AUD(オーストラリアドル)といわれています。これは、日本円にすると約564〜846万円(※)となります。
※2025年6月22日現時点でのレート(1AUD=94円)で計算
オーストラリアでは、政府が地方勤務を奨励していることから、都市部よりも地方都市や農村地域で働く方が収入は高くなるケースもあります。
また、オーストラリアでは医療・福祉系の職業に対して柔軟な勤務体制が整っており、パートタイムやフリーランス契約でも安定した収入を得ることができるといわれています。
オーストラリアの理学療法士に向いている人・向いていない人

オーストラリアで理学療法士として働くことには、多くの魅力がある一方で、適性や心構えが求められます。オーストラリアで理学療法士として働くことに、向いている人・向いていない人を紹介します。
●英語でのコミュニケーションに前向きに取り組める
英語が完璧でなくても、患者や同僚と積極的に意思疎通を図れる姿勢が重要です。
●新しい環境に柔軟に適応できる
……文化や医療制度の違いを楽しめる柔軟さが求められます。
●慣習や制度に対する柔軟性が低い
海外では、自己判断と責任が求められる場面も多く、日本のチーム体制とは異なる対応が必要です。
●ストレス耐性が低い
生活環境や言語の違いに強いストレスを感じやすい方は、慎重に判断することが大切です。
目標を立てるポイント
海外で働くことは一朝一夕には実現できません。特に理学療法士としての就労には、語学力の向上や資格認定、ビザ取得など、多くの準備が必要です。そこで大切になるのが「具体的な目標を立てること」です。
たとえば以下のような段階的な目標設定が有効となってきます。
●1年以内にAHPRAのスクリーニング申請
●2年以内に臨床評価通過とAHPRA登録
こうしたスモールステップを定めることで、最終的なゴールに向けて着実に前進できます。
また、モチベーションを維持するために、SNSや現地に住む日本人理学療法士の体験談を参考にするのも助けになるでしょう。
グローバルに活躍したい理学療法士の方へ
オーストラリアで理学療法士として働くことは、キャリアアップや新たなライフスタイルの実現につながる魅力的な選択肢です。しかし、その道は決して平坦ではなく、語学、制度、生活習慣などの違いを乗り越えるためには明確な目標と長期的な視点が必要です。今後、国際的な視野を持って働きたいと考える理学療法士の方は、まずは一歩ずつ情報収集と準備を進めていくことから始めてみてはいかがでしょうか。
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参考
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伊東 浩樹(理学療法士)
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長も経験。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。

監修:関 勇宇大(理学療法士)
2014年、理学療法士免許を取得。回復期リハビリテーション病院にて、脳血管障害患者を中心にリハビリテーション計画を立案し、早期社会復帰を支援。訪問リハビリでは、在宅療養者とその家族に対し、生活環境に即した個別支援を提供。臨床経験で培った専門的知見をもとに、現在は医療ライターとして活動。運動療法クラウドサービス『リハサク』では、運動メニューの解説・動画制作も担当し、医療と表現の両面から、実用性と信頼性の高い情報発信を行っている。
理学療法士として海外、特にオーストラリアでのキャリアを検討することは、専門職としての成長のみならず、ライフスタイルそのものを大きく変える可能性を持っています。オーストラリアでは理学療法士の専門性が高く評価されており、医師の診断なしに理学療法を提供できる「ファーストコンタクト」の権限があることも大きな魅力です。一方で、AHPRA登録や英語要件、臨床評価試験など、越えるべきハードルも少なくありません。また、臨床力と英語力の両面で高い水準が求められるため、準備期間を設けて段階的に目標を設定することが重要です。海外での就労は、自身の視野を広げるとともに、日本の医療制度を客観的に見つめ直す貴重な経験となります。
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