スクワットすると膝が痛い!原因と対策、指導のポイントを解説
公開日:2025.08.05 更新日:2025.08.22

文:かな(作業療法士)
スクワットは、下半身の強化や健康維持に効果的な運動です。しかし、「スクワットをすると膝が痛い」と悩む人も少なくありません。正しいフォームで行っているつもりでも、個々の身体特性や既往歴によっては痛みを伴うことがあります。
本記事では、作業療法士の視点からスクワット中の膝の痛みにどう対応するか、原因や指導方法などを解説します。
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スクワットで膝が痛くなる原因
スクワットで膝が痛くなる原因は、主に「フォーム不良による関節への負担」「可動性制限や筋力バランスの影響」「疾患や術後の組織ストレス」の3つに分けられます。
フォーム不良による関節への負担
膝痛の原因として最も一般的なのは、フォームの崩れによる関節への過負荷です。特に、膝がつま先よりも前に出すぎたり内側に入ってしまったりする「ニーイン」の姿勢は、膝蓋大腿関節および脛骨大腿関節に不要なストレスを生じさせます。
股関節や体幹の安定性が低い場合はこのような動作が無意識に起こりやすく、繰り返すと痛みに発展しやすいため注意が必要です。
可動性制限や筋力バランスの影響
膝関節は周囲の関節に強く影響される構造です。そのため、股関節の屈曲や外旋可動域が不足している、または足関節の背屈制限があると、正しいしゃがみ込み動作が困難となり、膝関節が過剰に動いてしまうのです。
また、大腿四頭筋とハムストリングス、殿筋群との筋力バランスの不均衡も、膝に負荷が集中する原因となることがあります。
疾患や術後の組織ストレス
変形性膝関節症や半月板損傷、前十字靭帯(ACL)再建術後など、解剖学的・組織学的な変化が生じている場合、わずかな荷重や関節角度の変化でも痛みを誘発することがあります。炎症や滑膜の反応が高いタイミングでは、運動刺激自体が疼痛増悪因子となりやすいため、スクワットの適応は慎重に判断しましょう。
膝痛を訴える対象者の評価ポイント

スクワットで膝の痛みを訴える人に対して、「痛いなら止めておきましょう」というのは簡単です。ただ中止させるのではなく、動作分析やROMなどの評価を行って、痛みの原因を把握できるよう心がけましょう。それぞれの評価ポイントについて解説します。
動作分析
まずスクワット動作の観察を行いましょう。確認ポイントは以下のとおりです。
●体幹が過度に前傾していないか
●左右差がないか など
痛みが出る瞬間のフォームに注目し、再現性をもって確認することが重要です。
ROM・筋力などの確認
股・膝・足関節の関節可動域、特に股関節外旋や足関節背屈の可動域を測定し、制限の有無を確認しましょう。同時に、大腿四頭筋・中殿筋・内転筋などの筋力をMMT(徒手筋力検査)でチェックし、動作時の安定性との関連を評価します。さらに、しゃがみ込み・立ち上がりなど、痛みが誘発される動作の特定も行いましょう。
疾患別の留意点
膝をはじめとする下肢体幹の整形疾患が、どのように膝に影響しやすいかを理解しておくことも大切です。以下のような各疾患に応じた評価視点を持つと、安全な運動指導につながります。
●半月板損傷:曲げ伸ばしの際に痛みが出やすい
●術後:瘢痕や関節包の緊張などが起こりやすい
膝の痛みが出にくいスクワットの方法

明らかな疾患がない患者さんでも、スクワットの際に痛みが出ることがあります。そのような場合には、フォームに注意し、浅めのスクワットを勧めましょう。
安全なフォームで行う
膝痛を防ぐためには、膝が内側に入らないようにフォームの指導をする必要があります。
膝とつま先が正面を向くように意識するのがポイントです。
また、お尻を後ろに引くように(股関節を曲げるように)しながら膝を曲げると、膝への負担を軽減できます。
体幹の安定性を高めることも大切です。体幹がぶれないように腹圧をかける(下腹部に力を入れる)よう伝えます。このとき、息を止めないように気を付けましょう。
浅いスクワットをする
疼痛がある場合や高齢者には、椅子などを用いた浅いスクワット(深くしゃがみ込まないスクワット)から始めるとより安全です。
フォームは前述したものと同様ですが、椅子や手すりなど身体を支えられるところを確保して行うことが大切です。膝の痛みが出ないところまで膝を曲げるよう指導しましょう。
指導時のポイント
スクワットを指導する際には、より効果的かつリスクを排除できるような工夫をしておきたいものです。声かけの工夫や自主トレーニングの提案などを行いましょう。
具体的に伝える
膝が痛いといわれたとき、「フォームが悪いから」だけで終わらせると、患者さんもいまいちピンとこないかもしれません。
「膝に頼りすぎて股関節や足首がうまく使えていないと膝に負担がかかりやすいので、お尻を後ろに引くよう意識しましょう」など具体的に説明すると、患者さんも意識しやすくなるでしょう。
自主トレ―ニングを提案する
外来のリハビリの場合は患者さんによって来院する頻度も異なり、運動が続かないことがあります。そのため、痛みがない状態なら自主トレーニングとしてスクワットを提案するのもよいでしょう。
その際は、1日何回程度行う、どのような兆候が現れたら止めておくといった判断基準も併せて伝えておきます。
運動は継続が大切です。無理なく生活に取り入れられるよう、歯磨きをしながらスクワットをする、家事をしながらスクワットをするなど、手軽に取り組める方法も提案するとよいでしょう。
生活環境の確認や福祉用具の活用を視野に入れる
病院や施設では比較的安全な環境で運動ができますが、訪問リハでは「床が滑りやすい」「手すりがない」などの環境要因が痛みや転倒リスクにつながる恐れがあります。
床の材質や椅子の高さ、履物など生活環境の確認をして、必要に応じて福祉用具の活用も視野に入れるとリスクを軽減できるでしょう。
膝の痛みが起きないよう注意してスクワットを指導しよう
スクワット中の膝痛はフォームの問題だけでなく、筋力や可動域、疾患、環境など多くの要因が関与しています。「動作評価 → 原因の特定 → 適切な修正と代替メニューの提案」という一連の流れを明確にし、適切な指導を行いましょう。
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参考
膝の痛みに有効な運動、ストレッチ|森整形外科リハビリクリニック
変形性膝関節症|丸太町リハビリテーションクリニック
膝の痛みに有効な運動、ストレッチ|森整形外科リハビリクリニック
筋トレで膝が痛い-変形を防ぎながら痛みを和らげるコツ|足立慶友整形外科

かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。

監修:関 勇宇大(理学療法士)
2014年、理学療法士免許を取得。回復期リハビリテーション病院にて、脳血管障害患者を中心にリハビリテーション計画を立案し、早期社会復帰を支援。訪問リハビリでは、在宅療養者とその家族に対し、生活環境に即した個別支援を提供。臨床経験で培った専門的知見をもとに、現在は医療ライターとして活動。運動療法クラウドサービス『リハサク』では、運動メニューの解説・動画制作も担当し、医療と表現の両面から、実用性と信頼性の高い情報発信を行っている。
スクワットは下肢機能の維持・向上において非常に有効な運動ですが、間違ったフォームや筋力・可動域のアンバランスがあると、膝関節に過剰なストレスを与え、痛みの原因となることがあります。膝関節は単独で動くものではなく、股関節や足関節、さらには体幹の動きとも密接に関連しています。そのため、「膝だけを見る」のではなく、動作全体を評価し、痛みの原因を多角的に分析することが大切です。また、高齢者や術後の方など、身体的な制約がある対象者には、浅めのスクワットや椅子を活用するなど、安全性を確保した代替手段を提案することも求められます。理学療法士や作業療法士など専門職は、機能評価から適切な運動指導、生活環境の調整まで一貫して関わることができる存在です。
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