リハビリ職とは?人の「できる」を支える3つの専門職について解説
公開日:2025.09.07 更新日:2025.09.08

文:鈴木康峻(理学療法士)
将来の進路を考えている中で、リハビリ職について知りたいと思ったことがある方もいるでしょう。しかしリハビリ職といってもさまざまな職種があり、どのような違いがあるのかわからないのではないでしょうか。リハビリ職への理解を深めるには、各職種の役割を知ることが不可欠です。
本記事では、代表的なリハビリ職である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の具体的な仕事内容や対象者、活躍の場について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、将来の進路選択の参考にしてください。
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リハビリ職とは?
リハビリ職とは、病気やケガ、障害などによって生活に困っている方が、その人らしく自立して生きていく力を取り戻すためにサポートする専門職のことです。代表的なリハビリ職には、以下の3職種があります。
・作業療法士(OT:Occupational Therapist)
・言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)
これらの職種にはそれぞれに専門とする分野があり、対象者の社会復帰を支える重要な役割を担っています。
リハビリとは「リハビリテーション」の略語です。リハビリとは単に歩く練習や手を動かす訓練を指すだけの言葉ではなく、本来「その人がその人らしく生きられるようにする」ために行う幅広い支援を指します。
たとえば、次のような支援が含まれます。
・自信を取り戻すための関わり
・自分の力で生活できるようになるための環境の工夫
・学校や職場、地域での役割を再びもてるようにする支援
こうした取り組みのすべてがリハビリです。その意味では、医師や看護師、介護職員などもリハビリに関わっているといえますが、一般的には前述の3職種がリハビリ職と呼ばれています。
リハビリ職のそれぞれの役割について

リハビリ職は職種によって役割が異なり、それぞれの専門性を生かして活躍しています。しかし、どの職種がどのような働きをしているか、違いがわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで各職種の役割を詳しく理解するために、それぞれの仕事内容や主な対象者、活躍の場を詳しく解説します。
理学療法士の役割
理学療法士は、病気やケガによって低下した身体機能や、基本的な動作能力の回復を手伝う職種です。その役割は対象者が寝起きしたり、足で立ったり歩いたりして、社会生活に戻るための土台を作ることです。
運動療法や物理療法といった手段を用い、一人ひとりの状態に合わせたリハビリの計画を立て、実行します。
仕事内容:運動療法や物理療法による身体機能の回復のサポート
理学療法士の主な仕事内容は、運動療法と物理療法です。
運動療法とは筋力トレーニングやストレッチ、関節を動かす練習、歩行訓練など、体を動かして機能回復を目指す治療法です。たとえば、脳卒中により麻痺した手足を動かせるようにしたり、骨折したスポーツ選手の競技復帰を目指してトレーニングしたりする際には、理学療法士が深く関わっています。
物理療法は、温熱・電気・超音波・マッサージなどの物理的な手段を用い、痛みを和らげたり血行を促進したりする治療法です。運動療法の効果を高めるために、組み合わせて行われることも多くあります。
主な対象者:ケガや病気で運動機能が低下した方
理学療法士が関わる主な対象者は、以下のとおりです。
・スポーツでケガした方
・加齢によって足腰が弱くなった高齢者
・脳卒中やパーキンソン病などにより体の動きが不自由になった方
ケガや病気を予防する観点から、地域の転倒予防教室での住民との関わりや、発達支援の一環でお子さんとの関わりをもつこともあります。
活躍の場:医療機関、介護施設、在宅、スポーツ分野、行政機関など
理学療法士の一般的な勤務先は、病院やクリニックです。特に手術直後から関わる急性期病院、集中的にリハビリする回復期リハビリテーション病院、地域の整形外科クリニックでは多くの理学療法士が活躍しています。
その他にも、高齢者の生活を支える介護老人保健施設やデイサービス、対象者の自宅で行う訪問リハビリも大きな活躍の場です。スポーツチームやフィットネスクラブ、さらには市役所などの行政機関で働く理学療法士もいます。
作業療法士の役割
作業療法士は、作業を通じて心と体の両面からその人らしい生活を取り戻す手伝いをする職種です。作業とは食事や着替えなどの日常生活動作から、勉強や仕事、家事、趣味活動まで人が行うすべての活動を指します。
理学療法士が基本的な体の動きを回復させるのに対し、作業療法士はその動きを使って生活を再構築する役割を担っています。
仕事内容:食事や着替えなどの日常生活動作・仕事や趣味活動への復帰の支援
作業療法士の仕事は、実に多岐にわたります。
たとえば、脳卒中で右手が不自由になった方に対して、左手で文字を書く練習をしたり、着替えやすいように自助具(体の不自由さを補う道具)を選んだりします。
精神疾患によって意欲が低下している方には、園芸や手芸、スポーツなどの活動を通じて自信の回復を促し、人との交流につなげていく支援も作業療法士の重要な仕事です。
対象者の価値観や人生に寄り添い、やりたいことを実現するための具体的な方法を一緒に考え、練習します。
主な対象者:身体障害・認知症・精神障害・発達障害など心身機能が低下した方
作業療法士が関わる対象は、体に障害がある方に限りません。以下のように、さまざまな課題を抱えた方々と関わります。
・認知症の高齢者
・うつ病や統合失調症などの精神障害がある方
・学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達に特性のあるお子さん
このように、作業療法士は心のケアにも深く関わる点が大きな特徴です。対象者の年齢層も子どもから高齢者までと幅広く、一人ひとりの人生に寄り添って支援します。
活躍の場:医療機関・介護施設・特別支援学校・司法の場など
作業療法士は理学療法士と同様に、病院(精神科病院を含む)や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどの医療・介護分野で幅広く活躍しています。
さらに、発達に特性のあるお子さんを支援する療育センターや特別支援学校、受刑者の社会復帰を支援する刑務所など、活躍の場は医療・介護にとどまりません。人の暮らしがあるところすべてが、作業療法士の活躍の場となります。
言語聴覚士の役割
言語聴覚士は、言葉によるコミュニケーションや、嚥下(食事の飲み込み)に問題を抱える方を支援する職種です。人が社会で生きていくうえで不可欠な、話す、聞く、食べるなどの行為を手助けします。
脳卒中によりうまく会話できない方や、生まれつき言葉の発達に遅れがあるお子さん、食べ物がうまく飲み込めなくなった高齢者など、対象者は多岐にわたります。
声や発音、認知機能など、目に見えにくい問題に対応するのが主な役割です。
仕事内容:話す・聞く・安全に食べるための支援
言語聴覚士の代表的な仕事内容は、コミュニケーションと食事の支援です。
コミュニケーションの支援では、失語症(脳の損傷で言葉を発したり、理解したりできなくなる状態)の方に絵カードを使って言葉を引き出したり、発音に問題があるお子さんに正しい舌の動かし方を教えたりします。
食事の支援では、誤嚥(食べ物が誤って気管に入ってしまうこと)を防ぐため、安全な食事の姿勢の指導や、飲み込みやすく調理されたものを食べる練習などを行います。
主な対象者:失語症・構音障害・聴覚障害・嚥下障害・発達障害のある方
言語聴覚士が関わるのは、以下のような方々です。
・生まれつきの聴覚障害がある方
・加齢や病気による嚥下障害がある高齢者
・言葉の発達の遅れがあるお子さん
子どもから高齢者まで、とても幅広い年齢層が対象となります。
活躍の場:医療機関、介護施設、福祉施設、保健施設、特別支援学校など
言語聴覚士の主な職場には、急性期病院や回復期リハビリテーション病院などの医療機関があります。その他、介護老人保健施設や肢体不自由児施設、保健センター、特別支援学校といった、幅広い分野で活躍しています。
超高齢化が進む日本では、脳卒中や認知症などによって言葉や嚥下に障害を抱える方が増えており、今後も多くの場面でその活躍が期待できるでしょう。
リハビリ職は人の「できる」を支える専門職
リハビリ職の仕事は、単に体の機能を回復させるだけでなく、一人の人間の希望やその人らしい人生を取り戻させる非常にやりがいのある仕事です。それぞれの専門性を発揮できる分野で多くの方が活躍しています。
「人の役に立ちたい」「誰かを笑顔にしたい」という思いがある方は、リハビリ職を目指してみてはいかがでしょうか。
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参考
公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士とは」
一般社団法人 日本作業療法士協会「作業療法士ってどんな仕事?」
一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」

鈴木康峻(理学療法士)
2008年に理学療法士の免許を取得。介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務のかたわら、医療・介護ライターとして高齢者の疾患や制度などのさまざまな記事を執筆している。理学療法士の現場で働いているからこそ得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

監修:浅川 貴介(あさかわ たかすけ)
2010年私立東邦大学医学部卒業/ 浅川クリニック 副院長/ 合同会社世田谷産業医事務所 代表社員
リハビリ職は、病気の「治療」にとどまらず、患者さん一人ひとりの「生活」や「人生そのもの」を支える、非常に尊い専門職です。医師の立場から見ても、リハビリの現場における理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の皆さんの働きは、医療の質を大きく左右するものです。
特に超高齢社会を迎える日本では、リハビリ職の存在がますます重要になっています。急性期から在宅まで、あらゆるフェーズでの「再びその人らしく生きること」を支える専門家として、今後も大きな期待が寄せられています。
本記事が、リハビリ職を目指す方々にとって進路選択の一助となり、またご家族や地域で支え合う皆さまにとっても、リハビリへの理解が深まるきっかけとなれば幸いです。
医療や介護の現場で、専門職が連携しながら「できる」を増やす支援が広がることを、心より願っています。
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