理学療法士が一般企業で働くためには?おすすめの企業や転職時のポイントを解説
公開日:2025.10.01 更新日:2025.10.03

文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士のなかで、一般企業への転職を考えている方もいるのではないでしょうか。理学療法士は医療機関や介護施設などで働く割合が多いですが、一般企業で働く方も一定数います。
この記事では、理学療法士に向いている一般企業の種類や、転職時のポイントをご紹介します。どのような企業があるのか、どんなメリットがあるのかを知ることで、転職を決めるきっかけになるでしょう。
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目次
一般企業で働く理学療法士は多い?
一般企業で働く理学療法士は決して多くありませんが、一定数存在しています。令和4年度の厚生労働省の調査によると、理学療法士をはじめとしたリハビリ職の約7〜8割が医療機関、約1割が介護分野で勤務しているとされています。このことから、ほとんどの理学療法士は医療機関や介護分野で働くことが多いといえるでしょう。
しかし、理学療法士の知識を活かし、一般企業で活躍している方も存在します。実際に、筆者の知り合いの理学療法士で一般企業に勤めている方がいるため、決して珍しくないといえます。
理学療法士におすすめの一般企業の種類

一般企業への転職を検討する際、理学療法士の知識を活かせる分野の職場を目指すのがよいでしょう。ここでは、理学療法士におすすめの一般企業の種類を解説します。
医療・福祉機器メーカー
医療・福祉機器メーカーは、理学療法士の専門知識を活かしやすい企業の一つです。これらの企業ではリハビリで使用する医療機器や福祉用具の開発・販売を手がけており、理学療法士としての経験や専門知識が重宝されます。
製品開発の際は、理学療法士として「こんな機能があればいいのに」という声を反映しやすくなるでしょう。医療・福祉機器メーカーであれば、より多くの患者さんや医療従事者の役に立つ仕事に携われます。
介護支援領域の企業
介護支援領域の企業は、高齢化とともに需要が拡大している分野です。これらの企業では介護事業者向けのサービスを提供したり、介護用品の選定・販売を行ったりしています。
理学療法士であれば、どのような介護用具が使いやすいか、安全かという専門的な視点からアドバイスできるのが大きな強みです。
住宅関係の企業
住宅関係の企業も、理学療法士のスキルを活かせる転職先です。理学療法士は患者さんの自宅訪問を行い、生活動線の確認や住宅改修の提案をする場合もあります。そのため、安全な住環境をセッティングするスキルを持っています。
高齢化にともない、バリアフリー住宅や介護に適した住環境への需要が高まっていることもあり、理学療法士の知識を必要としている企業も多いでしょう。設計のサポートや住宅説明だけでなく、利用者の身体機能や生活スタイルにあわせた改修プランも提案できます。
ヘルスケア関係の企業
ヘルスケア関係の企業では、健康経営サポートや予防医療サービスなどの開発を手がけています。そのため、理学療法士としての運動や身体機能に関する深い知識が重宝されるでしょう。
一般の人々に向けた健康セミナーの講師や、正しい運動方法を指導するオンライン指導などでも活躍できます。身体機能の向上や疾患予防などの知識を活かして、これからの予防医療の分野で大きく貢献できます。
理学療法士が一般企業で働くメリット

理学療法士が一般企業で働くメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットをご紹介します。
新しいスキルを獲得できる
病院や介護施設での業務とは異なる環境で働くことで、新しい分野の知識や技術の獲得につながります。具体的には、以下のようなビジネススキルがあげられます。
●マーケティング知識
●プレゼンテーションスキル
●ビジネスマナー
●チームマネジメント
そのほかにも、医療機器メーカーであれば商品企画や開発に関わる知識、ヘルスケア系企業であればITスキルやデータ分析能力なども習得できるでしょう。これらの新しいスキルは理学療法士にとって大きな武器となり、キャリアの選択肢を広げるきっかけとなります。
給料アップが期待できる
一般企業への転職によって、将来的な給料アップが期待できます。令和6年度の調査では、理学療法士の平均年収は「約444万円」とされています。全体の平均年収が「461万円」であることから、理学療法士の給料はやや低い水準にあるのが現状です。
そのため、一般企業へ転職すれば給料アップの可能性が高くなります。理学療法士としての専門知識も備わっているので、キャリアアップをともなう昇給も期待できるでしょう。
体力面のキツさを解消できる
一般企業で働くことで、体力面のキツさの解消につながります。理学療法士の業務は体力仕事の側面があり、身体的負担が高い傾向にあります。起立・歩行介助をはじめとしたリハビリの繰り返しで、肩こりや腰痛を引き起こす理学療法士もいるでしょう。
実際に、筆者も臨床で働いていたころ、腰痛でコルセットを装着しながらリハビリをしていた先輩がいました。一般企業であればデスクワークが中心となる職種も多く、こうした身体への負担軽減が期待できます。
理学療法士が一般企業で働く際の注意点
理学療法士が一般企業で働く際、いくつかの点に注意する必要があります。ここでは、具体的な注意点をご紹介します。
新しい仕事に慣れる必要がある
まずあげられるのが、新しい仕事に慣れる必要がある点です。臨床現場とはまったく異なる環境で働くため、業務内容から職場の文化まで、多くのことを一から覚え直さなければなりません。
パソコンを使った事務作業や資料作成など、これまで経験してこなかった業務にも取り組むことになるでしょう。転職直後の一定期間は、新しい環境に適応するまで精神的にも体力的にも負担を感じることがあります。
理学療法士とは違ったノルマに向き合うことがある
これまでとは異なるノルマに向き合う必要がある点にも注意しましょう。医療現場では、患者さんにリハビリを提供して単位を取得することがおもなノルマです。
しかし、一般企業では売上目標や営業成績などの目標が設定されることがあります。たとえば、営業職では月間の売上目標や新規顧客の獲得数などが求められます。個人の成績だけでなく、チーム全体での目標達成も重要視される場面も増えるでしょう。このような環境では、数字に対するプレッシャーや競争的な雰囲気に慣れるまで時間がかかることがあります。
理学療法士が一般企業に転職する際の3つのポイント
理学療法士が一般企業に転職する際のポイントとして、以下の3つがあげられます。
2.自分にあった企業を徹底的にリサーチする
3.自分の強みをアピールできるように面接対策をする
ここでは、それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
1. 自分のしたいことを明確化する
まずは、自分のしたいことを明確化することが大切です。一般企業といってもその種類は多様で、自分がなにをしたいかによって選択肢は大きく異なります。
自分のやりたいことを明確にするためには、まず自己分析をしっかり行いましょう。これまでの経験やスキルを棚卸しし、今後どのようなキャリアを築いていきたいかを深く考える必要があります。
2. 自分にあった企業を徹底的にリサーチする
したいことが明確になったら、自分にあった企業を徹底的にリサーチしてみましょう。公式ホームページを確認することはもちろん、職場見学や会社説明会への参加も必須といえます。実際の職場の雰囲気や働いている方の様子を見ることで、ホームページだけではわからない企業の実態を把握できます。
また、どのような人物像が求められているかも重要な情報です。求人票や面接で企業が重視するポイントを理解し、自分の経験やスキルとマッチするかを確認しましょう。
3. 自分の強みをアピールできるように面接対策をする
転職したい企業が決まったら、自分の強みをアピールできるように面接対策を行いましょう。今までの経験を振り返り、理学療法士として培ったスキルや知識をどのように企業で活かせるかを具体的に整理します。
また、理学療法士から一般企業に転職する点について、ネガティブな理由ではなく前向きな理由で答えられるよう準備することが大切です。模擬面接を行ったり、想定される質問への回答を事前に考えたりして、本番で自信を持って話せるよう練習を重ねましょう。
理学療法士は一般企業で働くことも選択肢の一つ
理学療法士は医療機関や介護分野だけでなく、一般企業で働くことも選択肢の一つです。一般企業への転職は、新しいスキルの獲得や給料アップにつながるメリットがあります。
転職の際は、自分のしたいことを深掘りしつつ、それにあった企業のリサーチと面接対策を十分に行うことが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、一般企業への転職を検討してみましょう。
参考
厚生労働省|厚生労働白書
政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査 / 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
国税庁|1 平均給与

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。

監修:中原 義人(理学療法士)
札幌医科大学保健医療学部理学療法学科 卒業
急性期病院、訪問看護ステーション、慢性期病院にて勤務。通所・訪問リハビリテーションの立ち上げを経験。
時代とともに一般企業で働く理学療法士は増加している印象があります。理学療法士の専門性が、従来の医療介護分野以外の様々なフィールドで発揮されることは、社会貢献の意味でも大変有意義と考えられます。一般企業での就業を希望する場合には、日頃から様々な産業領域や社会情勢に目を向け、見識を深めておくことが有効となります。様々な分野の方と交流したり、実際の経験者に話を聞くなどして、来るチャンスに備えておくことが自身のキャリアにおいても重要と考えられます。
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