頚髄症に対するリハビリ内容は?症状・原因や生活上の注意点も解説
公開日:2026.07.28

文:内藤 かいせい(理学療法士)
頚髄症はどんな疾患なのか、どのようなリハビリをすればよいのか知りたいかたも多いのではないでしょうか。頚髄症のリハビリでは、首や肩まわりの機能を高めつつ、頚部に負担をかけないようにすることが重要です。
この記事では、頚髄症の病態や治療法、リハビリ内容をご紹介します。具体的な内容を知ることで、効果的なアプローチが期待できるでしょう。
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頚髄症(頚椎症性脊髄症)とは

頚髄症とは、頚椎の変形によって神経の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫される状態のことです。ここでは、頚髄症の症状や発症原因などについて詳しく解説します。
頚髄症の症状
頚髄症のおもな症状は、以下のとおりです。
- ● 手のしびれ
- ● 指先の動かしにくさ
- ● 足の動かしにくさ
- ● 排泄障害
発症初期では、手のしびれや指先の動かしにくさからはじまります。特に、手先の細かい作業がうまくできなくなる「巧緻運動障害」が現れるのが特徴です。この障害では、お箸がうまく使えなくなる、洋服のボタンが留めづらくなるなどの問題が生じます。
症状が進行すると下半身にも影響が現れ、足がうまく動かなくなり歩行に支障をきたす恐れがあります。更に重症化すると尿が出にくい、漏らしてしまうなどの排泄障害が起こることも少なくありません。
頚髄症の原因
頚髄症が起こる主な原因は、加齢にともなう頚椎や周囲の組織の変形です。具体的には、以下のとおりです。
- ● 椎間板の膨隆やヘルニア
- ● 椎体に骨棘ができる
- ● 脊髄を支える靭帯が肥厚する
これらの変化によって脊柱管が狭くなり、なかを通る脊髄が圧迫されてさまざまな症状が現れやすくなります。そのほかにも、日常的に下を向くことや首のケガなども発症のリスクを高める要因となります。
頚髄症の診断方法

頚髄症の診断方法として、まずは医師による問診と身体検査が行われます。問診では生活上の困りごとを聴取し、身体検査では神経の反射や手足の動き・感覚について確認します。
これらの身体所見で疑いがあれば、次に行われるのが画像検査です。X線検査では骨の形や並びを、MRI検査では脊髄がどの程度圧迫されているかを詳細に確認します。最終的には、患者さんが訴える症状や画像所見などを総合的に照らし合わせたうえで、頚髄症の有無が判断されます。
頚髄症の重症度評価
頚髄症と診断された後、症状がどのくらい重いのかを客観的に判断するために評価が行われます。頚髄症の評価として代表的なのが、「JOAスコア」です。これは頚髄症の症状を点数化したもので、満点は17点で点数が低いほど重症であることを示します。評価項目は以下のとおりです。
- ● 上肢運動機能
- ● 下肢運動機能
- ● 知覚(上肢・下肢・体幹)
- ● 膀胱機能
これらの項目についてチェックし、点数をつけます。定期的にこの評価を行うことで、リハビリによって症状の改善度合いを定量的にチェックできるでしょう。
頚髄症の治療法

頚髄症の治療では、どのようなものが行われるのでしょうか。ここでは、頚髄症の治療法について詳しく解説します。
保存療法
手足のしびれや痛みなどの症状が軽い場合、まずは手術を行わない保存療法が行われます。具体的な方法としては、以下のとおりです。
- ● 薬物療法
- ● 装具療法
- ● リハビリ
薬物療法では、炎症を抑える薬や鎮痛剤を服用して様子をみます。首を安静に保つために、一時的に頚椎カラーを装着して首の負担を軽減する場合もあります。首の動きを制限し、負担の軽減を図る場合も多いです。リハビリでは首まわりの柔軟性を高めたり、弱っている筋肉を鍛えたりして症状の改善を目指します。
手術療法
保存療法では改善が見込めない場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合、手術療法が必要となります。狭くなった脊柱管を広げて、症状の改善を目指すことが手術のおもな目的です。
手術方法としては、「前方固定術」や「脊柱管拡大術」などがあげられます。前方固定術は、椎体を削った後に金属や人工骨で頚椎を固定し、神経への圧迫を取り除く手術法です。脊柱管拡大術は、椎体の椎弓(後方の突起部分)を切って脊柱管のスペースを広げる手術法です。
どのような方法を選ぶかは、圧迫されている場所や患者さんの首の状態によって変わります。術後は低下した身体機能を改善するために、リハビリを行います。
頚髄症のリハビリ内容

頚髄症に対するリハビリとしては、おもに以下があげられます。
- ● 筋力トレーニング
- ● 関節可動域訓練
- ● 姿勢改善
- ● 有酸素運動
ここでは、それぞれのリハビリ内容について詳しくみていきましょう。
筋力トレーニング
頚髄症によって弱った筋力を改善するために、筋力トレーニングが行われます。頚髄症では手足にも症状が現れるため、広範囲に筋力低下が生じる恐れがあります。具体的な筋トレ内容としては、以下のとおりです。
- ● 手指の巧緻動作練習(つまみ動作など)
- ● ボールを使った握力トレーニング
- ● 膝伸ばし
- ● スクワット
- ● かかと上げ
- ● あお向けの状態でのお尻上げ
- ● 座った状態での骨盤前後運動
筋力トレーニングは、患者さんの身体機能に合わせて無理のない範囲で行い、痛みやしびれの増悪がある場合は中止して医師や理学療法士に相談しましょう。負荷や回数は、状態を確認しながら段階的に調整します。
関節可動域訓練
肩甲骨をはじめとした関節の柔軟性が低下すると、日常動作に支障をきたす恐れがあります。そのため、関節可動域訓練によって筋肉や関節の柔軟性の改善を図ります。具体的な可動域訓練の内容としては、以下のとおりです。
- 1. 両腕を真横に広げて両肘を曲げる
- 2. 腕と肩甲骨を時計回りに20回ほど回す
- 3. 反時計回りに20回ほど回す
- 4. 2〜3の手順を2〜3セット繰り返す
- 1. 壁に対して横向きの状態で立つ
- 2. 腕を胸の位置まで上げて壁につける
- 3. 腕をつけたまま身体を前に突き出し、その状態を20秒ほどキープする
- 4. 反対側も同様に行う
姿勢改善
不良姿勢が続くと首への負担が高まり、症状の悪化につながります。そのため、姿勢改善によって正しい姿勢を維持し、首への負担軽減を目指すことが重要です。
例えば、座っている時は骨盤を後ろに倒さずしっかりと立てて、背筋を伸ばすように心掛けます。また、スマートフォンの操作や読書をするときに下を向きすぎないように注意し、目線をまっすぐにする工夫も大切です。
有酸素運動
頚髄症のリハビリでは、全身を動かす有酸素運動もおすすめです。有酸素運動は体力維持に役立つことがあります。行う場合は無理のない範囲で行い、痛みやしびれが強くなる場合は中止して医師や理学療法士に相談しましょう。
気軽に行える有酸素運動としては、ウォーキングがあげられます。最初は5分程度の運動でもよいので、患者さんの状態にあわせて行ってみましょう。
頚髄症のリハビリや生活での注意点

頚髄症のリハビリや生活上では、どのような点に注意すべきなのでしょうか。ここでは、具体的な注意点について解説します。
首を大きく動かさない
リハビリや日常生活では、首を大きく動かさないように注意しましょう。首を大きく動かすことで頚椎に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。動かし方や制限の程度は症状や治療方針によって異なるため、不安がある場合は医師や理学療法士に確認しましょう。
特に日常生活では、何かを見上げる、後ろを振り向くなどの動作で首を大きく動かすことがあります。このような動作は避け、首ではなく身体をうまく動かすような工夫をしましょう。
長時間下を向かない
長時間下を向いた姿勢が続くと、首まわりに負担がかかり症状が悪化する可能性があります。こまめに姿勢を変える、休憩を挟むなどを心掛け、症状が強い場合は医師や理学療法士に相談しましょう。
対策としては、スマートフォンや本をなるべく目線の高さにあわせることだけでなく、環境調整も重要です。パソコン作業ではモニターの位置を高くする、椅子の高さを調整するなどの工夫で姿勢を正しましょう。また、同じ姿勢で固まらないようにこまめに休憩を入れることで、首への負担を減らせます。
頚髄症のリハビリを実践してみよう
頚髄症は、頚椎やその周辺組織の変形によって脊髄が圧迫される疾患です。頚髄症が進行すると首だけでなく、手足の症状が現れるため、早期からの治療・リハビリが重要です。
リハビリでは筋トレや関節可動域訓練などを行いつつ、首に負担がかからないような動作の指導を行う必要があります。ぜひ今回の記事を参考にして、頚髄症のリハビリを実践してみましょう。
参考
日本整形外科学会|頚椎症性脊髄症
慶應義塾大学病院|頚椎症性脊髄症
北里大学|頚髄症
富山大学附属病院|Q:頚椎症性脊髄症の診断と治療
頚椎症性脊髄症(頚髄症)は、おもに加齢に伴う頚椎の変化によって脊髄が圧迫され、手のしびれや細かな動作のしづらさ、歩行の不安定さなどが現れる疾患です。症状はゆっくり進行することが多いため、早期に気づき適切な治療やリハビリを行うことが重要です。リハビリでは筋力や身体機能を維持・改善するとともに、首に負担をかけない姿勢や生活習慣を身につけることが大切になります。
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