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感覚障害のリハビリ方法|疾患別の特徴やリハビリの種類、実施時の注意点をご紹介

公開日:2026.07.29

感覚障害のリハビリ方法|疾患別の特徴やリハビリの種類、実施時の注意点をご紹介

文:内藤 かいせい(理学療法士)

感覚障害のある患者さんに対して、どのようなリハビリを行えばよいのか知りたいかたもいるのではないでしょうか。感覚にはさまざまな種類があり、どこが障害されるかによって症状が大きく異なります。そのため、感覚障害について十分に理解したうえでアプローチすることが重要です。

この記事では、感覚障害の種類や具体的なリハビリ内容をご紹介します。どのようなリハビリがあるのかを知ることで、臨床で役立てられるでしょう。

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おもな感覚の種類

おもな感覚の種類

感覚にはさまざまな種類があり、それらの情報を受け取って安全に生活を送っています。ここでは、リハビリに大きく関係する感覚の種類について解説します。

表在感覚

表在感覚とは、皮膚で受け取る感覚のことで、おもに以下が含まれています。

  • ● 触覚(触圧覚):ものに触れたことが分かる
  • ● 痛覚:痛みを感じとる
  • ● 温度覚:熱さや冷たさを判別する

表在感覚は外部からの刺激に反応して、危険から身を守る役割もあります。熱いヤカンに触れたときに「熱い」と感じ、とっさに手を引っ込めるという反応が代表例です。しかし、病気やケガによって表在感覚が障害されると、こうした反応が鈍くなります。そのため、熱いお湯に触れても熱さを感じにくく火傷につながる場合や、足の傷に気づきにくく状態が悪化する場合など、けがや体調悪化のリスクが高まることがあります。

深部感覚

深部感覚とは、以下のような器官で感じとる感覚のことです。

  • ● 筋肉
  • ● 腱
  • ● 関節

これらの器官によって、自分の身体がどのような状態にあるかを脳に伝えます。深部感覚は意識できるものと、無意識なものの2種類に大きく分けられます。意識できる深部感覚は、以下のとおりです。

  • ● 位置覚:手足がどの位置にあるかが分かる
  • ● 運動覚:関節が動いている方向や速さが分かる
  • ● 振動覚:振動が分かる

これらが正常であれば、目を閉じていても自分の身体の情報を把握可能です。一方で、意識できない深部感覚は筋肉の長さや張り具合などの情報であり、これによって無意識のうちに姿勢を保っています。

深部感覚が障害されると、自分の手足の情報がわからなくなり、身体のバランスをうまく制御できない失調症状が現れやすくなります。その結果、動きがぎこちなくなる、フラフラして転倒しやすくなるなどの問題が生じるのです。

感覚障害が起こるおもな疾患

感覚障害が起こるおもな疾患

感覚障害が現れる代表的な疾患として、以下があげられます。

  • ● 脳卒中
  • ● 脊髄疾患
  • ● 末梢神経障害

ここでは、それぞれの疾患について詳しく解説します。

脳卒中

脳卒中は、脳内の血管に問題が起こることで発症する疾患の総称です。血管が詰まる脳梗塞や、血管が破れる脳出血などによって脳がダメージを受けると、身体から入る感覚情報が送られなくなるケースがあります。その結果、感覚障害が起こり、しびれや感覚異常などの症状が現れるのです。

脳卒中では、感覚障害だけでなく片麻痺や高次脳機能障害などのさまざまな障害が現れるのも特徴です。そのため、複数の障害を考慮したうえでリハビリを進めることが多い疾患といえます。

脳卒中について更に詳しく知りたいかたは、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:脳卒中に対するリハビリの流れを解説|リハビリの内容や重要性もご紹介

脊髄疾患

脊髄疾患も感覚障害を引き起こす原因となります。脊髄は脊椎を通っている太い神経の束で、脳と身体の感覚・運動情報をつなぐ役割があります。そのため、脊髄が損傷されると情報の伝達が遮断されて感覚障害を引き起こす場合があるのです。

おもな疾患として、交通事故や転落などで脊髄が傷つく「脊髄損傷」、椎間板が脊髄を圧迫する「椎間板ヘルニア」などがあげられます。また感覚障害に加えて、手足の運動麻痺や自律神経障害などを合併することも少なくありません。

末梢神経障害

末梢神経障害とは、脊髄から枝分かれして手足の先へと伸びている末梢神経が、なんらかの原因でダメージを受けた状態のことです。末梢神経は受け取った感覚を脊髄へ送り、そこから脳へと伝える役割があります。そのため、この神経が障害されると感覚障害が起こります。

末梢神経障害は糖尿病による合併症や、手首の関節で神経が圧迫される手根管症候群など、その原因はさまざまです。

感覚障害はリハビリで改善できる?

感覚障害に対するリハビリは、感覚の改善だけでなく、手足の動きをよくするためにも欠かせません。身体をスムーズに動かすためには、筋肉や皮膚から情報を脳へ送る必要があります。そのため、リハビリによって感覚を刺激することで、結果として運動機能の改善にも大きく役立つのです。

実際に「作業療法ガイドライン 脳卒中」では、感覚障害に対するリハビリの推奨グレードはB(行うように勧められる)と、ガイドラインにおいて一定の推奨が示されています。特に、発症後は可能な範囲で早期からリハビリを開始することが推奨されています(開始時期は病状や医師の判断により異なります)。すべての感覚が完全に改善するとは限りませんが、リハビリを継続することで、生活上の安全性を高められる可能性があります(効果には個人差があります)。

感覚障害に対するリハビリ内容

感覚障害に対するリハビリ内容

感覚障害に対するおもなリハビリ内容は、以下があげられます。

  • ● 直接的な感覚入力
  • ● 感覚の識別練習
  • ● 電気刺激
  • ● ミラーセラピー

ここでは、それぞれのリハビリ内容について詳しくみていきましょう。

直接的な感覚入力

シンプルなリハビリ方法として、直接的な感覚入力があげられます。外部からの刺激を送り続けることで、感覚経路の活性化につなげます。具体的な方法としては、以下のとおりです。

  • ● 歯ブラシで手をこする
  • ● 硬いものを足で踏む
  • ● 足でテニスボールを転がす

このようなリハビリをする際は、感覚が伝わりやすい強さや素材の刺激を選ぶことがポイントです。感覚入力をする際は、肌に道具を強く押しつけて傷にならないように注意しましょう。

感覚の識別練習

感覚入力だけでなく、識別練習をするのもおすすめです。このリハビリでは単に刺激を入力するだけでなく、触れた道具を当てる練習をします。具体的に、目を瞑ってもらった状態で道具を持ってもらい、それが何なのかを当ててもらいます。道具を選ぶ際は、以下のような異なる特徴があるものを複数ピックアップしてみましょう。

  • ● 重さ
  • ● 材質
  • ● 形

道具を目で見て答え合わせをしながら行うことで、脳が正しい感覚を学習しやすくなります。

電気刺激

電気刺激療法も、感覚障害のリハビリとして取り入れられています。皮膚の表面から微弱な電気を流すことで、神経を直接刺激して感覚の改善を図る方法です。電気刺激療法ではTENS(経皮的電気神経刺激)をはじめとした種類が用いられており、手や足にパッドを貼って電流を流します。

実際に、電気刺激により、しびれや感覚異常に伴う痛みの軽減がみられたとする報告もあります。ただし、電気刺激が強すぎると逆効果になったり、痛みを引き起こしたりする恐れがある点には注意しましょう。

ミラーセラピー

ミラーセラピーとは、鏡を使用したリハビリ方法です。このリハビリは、脳卒中の患者さんに対して行われることがあります。具体的な流れとメカニズムとしては、以下のとおりです。

  1. 1. 身体の中心に鏡を置き、麻痺側の手足を隠すようにする
  2. 2. 鏡に映った非麻痺側の手足を運動させたり、感覚刺激を入れたりする
  3. 3. 麻痺側が動いている、または感覚が入っていると錯覚し、脳の神経回路が活性化される

このような脳の錯覚をうまく利用し、感覚障害の改善を目指します。ミラーセラピーは脳卒中後の片麻痺だけでなく、幻肢痛(切断された手足が痛むこと)の治療にも行われることがあります。

感覚障害のリハビリを行う際の注意点

感覚障害のリハビリを行う際の注意点

感覚障害のリハビリを行う際、注意すべきなのは患者さんの安心感を確保することと、転倒を防ぐための安全管理です。感覚が障害されると手足がどこにあるのか、地面に足がついているのかがわかりにくくなります。そのため、感覚障害がある場合、身体の位置や接地感が分かりにくくなることがあり、不安や恐怖心を抱く方もいます。

患者さんの恐怖心をやわらげるためには、手すりや平行棒など、すぐにつかまれる環境を用意しましょう。大きな鏡を使って、姿勢や足元を目で確認して安心してもらうことも効果的です。

更に、痛みを感じにくい場合は、靴擦れや火傷などのケガに気づくのが遅れることもあります。リハビリの前後には皮膚の状態をチェックし、安全に配慮しながら進めていくことが大切です。

感覚障害の種類やリハビリ内容を知っておこう

感覚には表在感覚と深部感覚があり、それぞれ受け取る情報が異なります。感覚障害が起こる原因として、脳卒中や脊髄疾患、末梢神経障害など、神経が関わる疾患があげられます。

感覚障害に対するリハビリには、感覚の入力や識別練習、ミラーセラピーなどがあり、患者さんの症状にあわせたアプローチが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、リハビリ内容についておさえておきましょう。

参考

医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.7 脳・神経. メディックメディア, 2011, p.188.
稲富惇一ほか. 高知県作業療法. 2021, 1, p.37-42.
日本作業療法士協会|作業療法ガイドライン 脳卒中
近畿大学|https://www.kio.ac.jp/topics_press/76076/しびれ感に対する新たな経皮的神経電気刺激の効果~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
Nishi, Y. et al. Front Hum Neurosci. 2022, 24:16:937319.
高杉潤ほか. 脳科学とリハビリテーション. 2009, 9, p.29-34.

【監修者コメント】
感覚障害は、見た目では分かりにくい一方で、日常生活の安全性や動きやすさに大きく影響する重要な症状です。本記事では、感覚の種類や障害の特徴、リハビリの方法について、分かりやすく整理されています。
臨床の現場では、単に感覚を「良くする」ことだけでなく、その感覚をどのように日常生活の動作に活かしていくかがとても大切になります。例えば、物をつかむ、歩くといった実際の動作の中で感覚を活用する練習を取り入れることで、より実用的な改善につながります。
本記事の内容を参考にしながら、目の前の患者さん一人ひとりの状態に合わせた関わりを意識していただければと思います。
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