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失語症のリハビリ方法は?失語の種類・症状やリハビリ中のポイントを解説

公開日:2026.07.30

失語症のリハビリ方法は?失語の種類・症状やリハビリ中のポイントを解説

文:内藤 かいせい(理学療法士)

失語症のかたに対して、どのようなリハビリが行われるのか気になるかたもいるのではないでしょうか。失語症にはさまざまな種類があり、症状にあわせたリハビリが重要です。

この記事では、失語症のかたに行われるリハビリや実施中のポイントを解説します。具体的な内容を知ることで、適切なアプローチが可能となるでしょう。

 

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失語症の種類

失語症の種類

失語症とは、脳卒中や外傷などによって脳の言語を司っている領域が損傷することで起こる障害です。失語症には以下のような種類があり、それぞれ症状が異なります。

  • ● 運動性失語(ブローカ失語)
  • ● 感覚性失語(ウェルニッケ失語)
  • ● 伝導性失語
  • ● 全失語

ここでは、各失語症の種類と特徴について解説します。

運動性失語(ブローカ失語)

運動性失語は、相手の話は理解できるものの、言葉を発するのが難しいタイプの失語症です。具体的には、以下のような症状がみられます。

  • ● 言葉がつかえる
  • ● 単語だけの話し方になる
  • ● 発音が歪んでしまう

本人は「言いたいことがあるのに伝えられない」という状況を自覚しているため、もどかしい思いを抱えやすくなります。

感覚性失語(ウェルニッケ失語)

感覚性失語は、言葉を流暢に話せるものの、相手の話す内容が理解できなくなるタイプの失語症です。このことから、運動性失語とは反対の症状といえるでしょう。発音する機能には問題がないため滑らかに話せますが、以下のような特徴があります。

  • ● つじつまが合わない内容になりやすい
  • ● 言葉の言い間違いが多い
  • ● 日本語にない言葉を使う時がある

つじつまが合わない内容になりやすい
言葉の言い間違いが多い
日本語にない言葉を使う時がある

このように、自分が話している内容を正確に把握できないため、うまく会話が成立しない場合があります。

伝導性失語

伝導性失語は相手の話は理解でき、流暢に話せますが、言い間違いが起こり復唱が苦手になるタイプの失語症です。自分が意図した言葉とは異なる発音をしてしまう、「音韻性錯語」という症状が特徴です。例えば、「みかん」を「みたん」のように間違えてしまいます。

伝導性失語のかたは、自分が間違って発音したことに気づくため、何度も言い直そうとする様子がよくみられます。

全失語

全失語は、言葉に関する機能のすべてがうまく働かなくなってしまった状態のことです。具体的には、「話す・聞く・読む・書く」の能力が重い障害を受けており、話を理解できず言葉を話すことも困難となります。

全失語のかたの場合、コミュニケーションはほかのタイプの失語症よりも難しくなるのが特徴です。

失語症と構音障害の違い

失語症と構音障害の違い

失語症とよく似た症状に「構音障害」がありますが、それぞれ原因や症状が大きく異なります。失語症は「言葉に関する機能の障害」であるのに対して、構音障害は「発声するための筋肉や運動の障害」です。そのため構音障害では言葉を理解する能力や、読み書きの能力は保たれているのが特徴です。

しかし、声を出すための唇や舌などの筋肉に麻痺が起こるので、発音が不明瞭となり呂律がうまく回らない状態となります。このように、それぞれうまく話せない状態ではありますが、その背景には違いがある点をおさえておきましょう。

【時期別】失語症のリハビリ

失語症のリハビリでは、急性期と回復期以降で内容が異なります。ここでは、時期別にあわせた失語症のリハビリについて解説します。

【急性期】大まかなコミュニケーションの練習

発症直後の急性期では、細かい言葉の正確さよりも大まかなコミュニケーションの練習を中心にリハビリを進めましょう。この時期は脳が受けたダメージの影響が強く出ており、心身ともに不安定な状態にあります。そのため、積極的なリハビリはかえって患者さんのストレスになる恐れがあります。

「おはよう」「こんにちは」など、まずは日常の簡単なあいさつからはじめるのがよいでしょう。簡単なコミュニケーションによって意思の疎通を図り、リハビリへの意欲を少しずつ高めていきます。

【回復期以降】「聞く・話す・読む・書く」を組み合わせた練習

回復期以降では、「聞く・話す・読む・書く」を組み合わせたリハビリを実施します。ここでは、それぞれの要素を含めた具体的なリハビリ内容について解説します。

聞いたことを答える

聞いたことに答える練習は、相手の言葉を正しく理解し、それに対して的確に反応する能力を鍛えます。具体的には、日常のちょっとした会話や、ラジオから流れるニュースなどを活用します。ある程度まとまった話を聞いたあとに、その内容について質問をしてみましょう。

まずは短い文章を聞いて、内容をしっかりと把握する練習からはじめることをおすすめします。慣れてきたら、少しずつ文章を長くしたり、複雑な内容に挑戦したりして、難易度を上げていきます。

特定の内容について話す

この練習は、頭の中にあるイメージを言葉に変換し、相手に伝える能力を鍛えます。具体的には、患者さんの興味があることや、身近な出来事などについて話します。

例えば、好きな映画や今日のご飯などの問いかけをして、それについて答えてもらいましょう。更に具体的な質問を重ねて、会話を広げていきます。

読んだものを理解して伝える

この練習は、情報のインプットと言葉によるアウトプットを組み合わせたトレーニングです。具体的には、新聞のコラムや短い物語の本などを使います。

まずは短い文章を読んでもらい、そのあとになにが書いてあったのかを尋ねます。内容を要約して話してもらったり、印象に残った部分を教えてもらったりするのもよいでしょう。

日記やメモを書く

日記やメモを書く練習は、頭のなかにある言葉や気持ちを文字として伝える能力を鍛えられます。まずは、簡単な内容や短い言葉から書いてみましょう。「今日は晴れだった」「リハビリをした」など、その日の出来事を一言書くだけでも十分な練習になります。

買い物をする際のリストや家族への伝言を書くのもおすすめです。ひらがなやカタカナを使ってもよいので、言葉を文字に変換することを優先しましょう。

失語症のリハビリの4つのポイント

失語症のリハビリの4つのポイント

失語症のリハビリの際は、以下の4つのポイントをおさえておくことが大切です。

  1. 1. 短文でゆっくり話す
  2. 2. 返答を急かさない
  3. 3. ジェスチャーを活用する
  4. 4. 言葉を先回りしない

ここでは、それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

1. 短文でゆっくり話す

1つ目は、短文でゆっくり話すことです。長い文章で話すと情報の処理が追いつかず、内容をうまく理解できなくなる恐れがあります。例えば、「今日は天気がいいから、あとでいっしょに外に散歩に行きませんか?」と伝える場合、以下のように情報を小分けにします。

  • ●「今日は天気がいいですね」
  • ● 「あとで外へ散歩に行きませんか?」

また、「はい・いいえ」で答えられる質問(クローズドクエスチョン)を意識して使うのも効果的です。一つひとつの言葉の理解を促しながら、会話を進めていきましょう。

2. 返答を急かさない

2つ目は、返答を急かさないことです。失語症のかたは、言葉を出すまでに時間がかかりやすいです。その間に急かしてしまうと、焦って余計に言葉が出てこなくなる可能性があります。

返事を待つ際は無理に言葉を促すのではなく、「ゆっくりで大丈夫」という安心感を与えることが大切です。

3. ジェスチャーを活用する

3つ目は、ジェスチャーを活用することです。失語症のかたは言葉の情報以外にも、視覚的な情報があれば理解しやすくなります。例えば、「食べる」と伝える時に口に運ぶ動作をする、「大きい」と伝える時に手で円を描いてみる、などがあげられます。

そのほかにも、絵カードや写真などを使い、指さしで意思表示をしてもらう方法も有効です。

4. 言葉を先回りしない

4つ目は、言葉を先回りしないことです。相手が言葉に詰まっている時、ついこちらで先回りしてしまうこともあるでしょう。しかし、リハビリの場面では言葉の練習をしている以上、静かに待つことが大切です。状況によっては、先回りして答えることが本人の発話の機会を減らす場合があります。様子を見ながら、必要な時はヒントを出すなどの支援に切り替えましょう。

一方で、長時間言葉が出ずに困っている、助けを求めているなどの場合はヒントを出してサポートしましょう。

失語症のリハビリとそのポイントをおさえておこう

失語症はコミュニケーションに関する能力が障害された状態で、「聞く・話す・読む・書く」に関する症状が現れます。失語症のリハビリでは、急性期では大まかなコミュニケーションの練習を行い、徐々に細かい言葉の練習をします。

リハビリの際は短文で伝えるように工夫しつつ、相手の返答をゆっくり待つ姿勢が重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、無理のない範囲で取り入れてみましょう。。

参考

鳥取医療センター|失語症
前島伸一郎ほか. Jpn. J. Rehabil. Med. 2016, 53(4), p.273-279.
安保雅博. Jpn. J. Rehabil. Med. 2007, 44(9), p.522-527.

【監修者コメント】
失語症は、言葉によるコミュニケーションに影響を及ぼす障害であり、その症状や回復の経過は個々によって大きく異なります。そのため、一律の対応ではなく、本人の状態やペースに応じた関わりが重要となります。特に、焦らずに待つ姿勢や、短く分かりやすい言葉で伝える工夫は、日常生活の中でも実践しやすく、有効な支援となります。
また、失語症のリハビリテーションは専門職による介入だけでなく、家族や周囲の理解と関わりによってその効果が大きく左右されます。適切な知識をもとに関わることで、本人の安心感や意欲の向上につながり、結果としてコミュニケーション能力の回復を後押しすることが期待されます。日々の関わりを大切にしながら、長期的な視点で支援していくことが求められます。
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