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運動失調に対するリハビリは?失調の種類や特徴、リハビリ中の注意点を解説

公開日:2026.07.26

運動失調に対するリハビリは?失調の種類や特徴、リハビリ中の注意点を解説

文:内藤 かいせい(理学療法士)

運動失調のある患者さんに対して、どのようなリハビリが考えられるか知りたい方はいませんか?
運動失調は協調的な運動が障害される症状で、種類によってもその特徴は異なります。

この記事では、運動失調の種類やリハビリ内容、注意点を解説します。症状への理解を深めることで、患者さんの状態に応じたリハビリを検討する際の参考になるでしょう。
 

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運動失調とは?症状の特徴

運動失調とは、筋肉の協調性が失われて身体の動きがぎこちなくなった状態のことです。動きが悪くなるものの、麻痺とは異なり筋力そのものは保たれている傾向にあります。運動失調の具体的な症状としては、以下のとおりです。

症状 内容
測定障害 目標に対して手や足が届かなかったり、逆に行き過ぎたりする
協調運動障害 複数の関節を滑らかに連動させられず、動きがバラバラになる
企図振戦 目標物に近づくほど手の震えが大きくなる
バランス障害 立位や歩行時にふらつきが生じやすくなる
構音障害 声がスムーズに出せず、話し方が断片的になる

これらの症状は単独で現れることもあれば、複数組み合わさって生じることもあります。

運動失調の代表的な種類と原因

運動失調の代表的な種類と原因

運動失調には以下のような種類があり、それぞれ特徴や原因が異なります。

  • • 小脳性運動失調
  • • 脊髄性運動失調
  • • 前庭性運動失調
  • • 大脳性運動失調

ここでは、それぞれの運動失調について解説します。

小脳性運動失調

小脳性運動失調は、脳卒中をはじめとした疾患によって小脳が障害されて起こる失調です。小脳は複数の筋肉や関節の動きを円滑にする働きがあり、ここが障害されるとスムーズな運動が難しくなります。

小脳が障害された部位によって症状が異なるのも特徴です。たとえば、小脳の外側部が障害された場合は上下肢が、中心部分が障害された場合は体幹部の運動失調が現れやすくなります。

脊髄性運動失調

脊髄性運動失調は、脊髄疾患等によって脊髄を通っている深部感覚の伝導路が障害されることで現れる失調です。深部感覚とは、自分の手足がどの位置にあるか、どの角度で動いているかを感知する感覚のことです。この情報が脳に届かなくなると、自身の手足の情報を把握できなくなり、動きの調整が困難となります。

小脳の機能は保たれているため、視覚情報を活用すればある程度動作の修正が可能です。反対に、視覚情報がなくなる閉眼時には更に運動失調が現れやすくなります。

前庭性運動失調

前庭性運動失調は、耳の奥にある前庭器官やそれに関連する神経が障害されることで起こる失調です。前庭器官は頭の傾きや回転などの平衡感覚を司る器官で、ここが障害されると反射的な運動によってバランスをとるのが難しくなります。原因となる疾患としては、メニエール病や前庭神経炎があげられます。

脊髄性運動失調と同じように閉眼時に症状が悪化する傾向にありますが、徐々に身体の動揺が大きくなるのが特徴です。回転性のめまいや眼振をともなうことが多いので、ほかの失調のタイプと鑑別する際の材料にもなります。

大脳性運動失調

大脳性運動失調とは、脳卒中をはじめとした疾患によって大脳半球が障害されて生じる失調です。発症メカニズムは完全に解明されていませんが、大脳と小脳をつなぐ神経回路が障害されることで運動失調が現れると考えられています。症状の特徴は小脳性運動失調と類似しており、鑑別が難しいケースも少なくありません。

運動失調に対する評価項目

運動失調のリハビリを進める際に、どの程度症状が現れているのかを把握するために評価を行います。評価の内容は多岐にわたりますが、代表的なものとしては「SARA」があげられます。これは運動失調の程度を評価する指標で、以下の8項目から構成されています。

項目 内容
歩行 通常歩行やつぎ足歩行でのふらつきの程度を確認する
立位 足をそろえた立位やつぎ足立位での安定性を確認する
座位 両上肢を前方に伸ばした状態での体幹の安定性をみる
言語障害 構音障害の程度を確認する
指追い試験 検者の指の動きに追従できるかを確認する
鼻指試験 鼻と検者の指を往復する際の振戦を確認する
手の回内・回外運動 すばやく正確に手の運動を行えるかを確認する
踵すね試験 踵をすねに沿って滑らせる動作を確認する

各項目は段階的なスコアで採点され、合計点が高いほど失調の重症度が高いことを示します。

運動失調に対するリハビリ内容

運動失調に対するリハビリ内容

運動失調に対するリハビリ内容としては、以下があげられます。

  • • 筋力トレーニング
  • • フレンケル体操
  • • 感覚入力
  • • バランス練習
  • • ADL動作練習

ここでは、それぞれのリハビリ内容についてみていきましょう。

筋力トレーニング

運動失調は筋力低下を引き起こす症状ではないものの、活動量の低下によって廃用症候群のリスクが高まります。そのため、筋力を維持するために筋トレが行われます。また、筋トレは筋力強化だけでなく、動作の反復によって運動の再学習を促す効果も期待できるでしょう。そのため、筋トレ内容は複雑な動きではなく、以下のようなシンプルな内容を繰り返します。

  • • 立ち座り
  • • 膝の曲げ伸ばし
  • • スクワット
  • • かかと上げ

運動量や強度については、患者さんの状態にあわせて調整していきましょう。

フレンケル体操

フレンケル体操とは、視覚によるフィードバックを活用しながら協調的な運動の獲得を目指す体操です。具体的な内容の例としては、以下のとおりです。

  • • 臥位の状態でかかとをつけながら片足ずつ膝を曲げ伸ばしする
  • • 座位で前方の目標物に向けて重心を前に移動させながらリーチする
  • • 立位で床につけた線に足を沿わせるように歩く

患者さんの症状の程度にあわせた難易度を設定し、失調の改善に向けた体操を行ってみましょう。

感覚入力

感覚入力によるアプローチもおすすめです。外部からの感覚刺激を増やすことで、運動時の感覚情報が得やすくなり、症状の軽減に寄与する可能性があります。。

代表的な方法として、手首や足首への重錘負荷があげられます。重りを装着することで感覚が増加し、企図振戦をはじめとした症状の抑制が期待できます。また、弾性包帯による股関節・肩関節などの圧迫も有効なアプローチの一つです。

バランス練習

運動失調によるふらつきを改善するために、バランス練習も行われます。基本的な流れとしては、安定した姿勢からバランス練習をはじめ、徐々に不安定な環境へと難易度を上げていきます。バランス練習の例としては、以下のとおりです。

  • • 平行棒内での重心移動練習
  • • つぎ足立ちの保持
  • • 不安定な足場での立位練習

次のような体幹の安定性を高めるトレーニングも、バランス能力の改善につながります。

【ドローイン】

  1. 1. あお向けになって両膝を立てる
  2. 2. 息を吸う
  3. 3. おなかをへこませるように力を入れつつ、口でゆっくり息を吐く
  4. 4. 息を吐ききったら、再び息を吸う
  5. 5. 3〜4の手順を10回×2〜3セット繰り返す
【バードドッグ】

  1. 1. 四つん這いになる
  2. 2. 右手と左足を体幹と平行になるように伸ばす
  3. 3. 手足を伸ばした状態を10秒ほどキープする
  4. 4. ゆっくりともとに戻る
  5. 5. 反対の手足で2〜3の手順を行い、左右で2〜3セットを目安に行う

ADL動作練習

運動失調があると、起き上がりや立ち上がりなどの基本動作にぎこちなさが生じ、転倒のリスクが高まります。このような日常生活で必要な動作を安全に行えるように、ADL練習を行います。

ADL練習の基本は、動作を一つひとつていねいに行いながら反復することです。たとえば、立ち上がり動作であれば、「前傾する→お尻を浮かせる→膝を伸ばす」という各段階を意識して行い、動きのパターンの再学習を促します。また、必要に応じて生活環境の調整も行うことが大切です。

運動失調のリハビリを行う際の注意点

運動失調のある患者さんに対してリハビリを行う際は、いくつかの点に注意する必要があります。ここでは、具体的な注意点について解説します。

転倒予防に努める

運動失調のリハビリを行う際は、転倒予防に注意しましょう。運動失調の患者さんはバランスが不安定になりやすく、ちょっとした動作によってふらつきや転倒につながる恐れがあります。転倒によって骨折やケガをするとリハビリの継続が難しくなるだけでなく、患者さんの意欲低下にもつながるでしょう。

リハビリ中はセラピストが常に患者さんの近くにつき、すぐに支えられる態勢をとっておくことが重要です。また、転倒リスクが高い時期では平行棒や手すりを活用した環境整備も徹底しましょう。

リハビリの難易度を慎重に設定する

リハビリの難易度を慎重に設定するのもポイントです。課題が難しいと動作がうまくいかず、転倒リスクが高まるだけでなく誤った運動パターンを学習してしまう可能性があります。リハビリの際は、まずは臥位のような安定した姿勢からはじめ、座位・立位・歩行へと順に移行するとよいでしょう。

リハビリを行う姿勢のなかでも介助あり・なしなど、難易度を細分化すると、より効果的なアプローチにつながります。患者さんの反応もよく確認しつつ、適切な難易度でアプローチしてみましょう。

運動失調の特徴をおさえてリハビリを実施しよう

運動失調は身体の動きがぎこちなくなる症状で、小脳性や脊髄性などのさまざまな種類があります。運動失調に対するリハビリとしては、筋トレや感覚入力、バランス練習などがあげられます。

アプローチの際は転倒リスクに注意しつつ、患者さんにあった難易度で行うことが大切です。ぜひ今回の記事を参考にして、運動失調に対するリハビリを実践してみましょう。

参考

後藤淳. 関西理学療法. 2014, 14,p.1-9.

【監修者コメント】
運動失調は「動きはあるけれどスムーズにいかない」という、外から見るとわかりにくい症状ですが、ご本人にとっては日常生活の負担が大きく、転倒リスクの高い状態でもあります。種類によってメカニズムが異なるため、画一的なアプローチではなく、症状の出方や生活背景に合わせたリハビリの選択が大切になります。
ご家族や患者さんにお伝えしたいのは、「焦らず、安全な環境で、繰り返し動作を経験すること」が運動の再学習につながるという点です。重錘や弾性包帯、杖や手すりといった補助具は「頼ること」ではなく「動きを安定させて練習の質を高めるための道具」と捉えていただきたいと思います。
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