胸郭出口症候群に対するリハビリ内容は?症状や原因、介入時のポイントを解説
公開日:2026.08.17

文:内藤 かいせい(理学療法士)
胸郭出口症候群に対して、どんなリハビリをすべきなのか知りたい方もいるのではないでしょうか。胸郭出口症候群は、筋肉の緊張や姿勢などが関与して発症する場合があり、状態に応じたリハビリが検討されます。
この記事では、胸郭出口症候群の症状や原因、リハビリ内容をご紹介します。疾患に対する知識を身につけることで、患者さんに適切なアプローチが行えるようになるでしょう。
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目次
胸郭出口症候群とはどんな症状?
胸郭出口症候群とは、首から肩・腕に走っている神経や血管が圧迫・牽引されてさまざまな症状が現れる疾患です。胸郭出口症候群のおもな症状は、以下のとおりです。
- ● 腕や手、肩のしびれ
- ● 痛み
- ● 冷感
- ● 筋力低下
特に、つり革につかまる動作や洗濯物を干す動作など、腕を高く上げたときに症状が強まる傾向にあります。
胸郭出口症候群の原因

胸郭出口症候群は神経や血管の圧迫や牽引などによって発症しますが、その代表的な原因としては以下の3つがあげられます。
- ● 斜角筋症候群
- ● 肋鎖症候群
- ● 過外転症候群
ここでは、それぞれの原因について詳しく解説します。
斜角筋症候群
斜角筋症候群とは、首の横にある前斜角筋と中斜角筋という筋肉の間を通る神経・血管が圧迫されて起こる障害です。この2つの筋肉の間のスペースは狭いため、通り道が制限されて胸郭出口症候群につながりやすくなります。
例として、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などで頭が前に出た姿勢が続くと、斜角筋が常に緊張した状態になります。その結果、神経や血管が圧迫されやすくなり、斜角筋症候群につながるのです。
斜角筋について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:斜角筋とはどんな筋肉?おもな役割や斜角筋症候群との関係性を解説
肋鎖症候群
肋鎖症候群とは、鎖骨と第1肋骨の間のスペースが狭くなることで、神経や血管が圧迫される障害です。この障害は、以下のように鎖骨が下方へ下がりやすい特徴がある方に発症しやすいです。
- ● なで肩の方
- ● 重いものを日常的に持っている方
- ● 鎖骨を骨折した方
肋鎖症候群をともなう場合、腕を下げたときにしびれや痛みが強まることが多く、上肢全体が腫れたように重く感じられるケースも少なくありません。
過外転症候群
過外転症候群とは、胸の深部にある小胸筋の下を通る神経・血管が圧迫される障害です。腕を高く上げる、大きく外転する際に小胸筋が引き伸ばされ、それにともない神経・血管が圧迫されます。特に美容師や工事士など、腕を上げたまま作業を続ける職業の方によくみられる傾向にあります。
また、猫背の姿勢の方も注意が必要です。猫背になると小胸筋が固まりやすく、少し腕を上げただけでも圧迫が起きやすくなります。
胸郭出口症候群の診断方法
胸郭出口症候群の診断は、身体所見や複数の徒手検査、画像検査などを組み合わせて行われます。代表的な徒手検査の方法は、以下のとおりです。
| 検査名 | 検査方法 | 陽性の判断 |
|---|---|---|
| アドソンテスト | 被検者の頭部を患側へ回旋させ、患側上肢を伸展・外旋させる その後頭部を伸展させる |
脈拍が微弱になる、または消失 |
| ライトテスト | 被検者の患側上肢を外旋し、更に過外転させる | 脈拍が微弱になる、または消失 |
| モレーテスト | 被検者の前斜角筋の腱付着部位を圧迫する | 圧痛または放散痛が現れる |
更に画像診断では、X線やCTを使って骨の形に異常がないか、神経の通り道が極端に狭くなっていないかをチェックします。これらの検査結果を総合的に判断し、胸郭出口症候群の有無を判定します。
胸郭出口症候群の治療内容

胸郭出口症候群の治療では、薬物療法やリハビリなどの保存療法が選択されることがあります(症状や原因、重症度により異なります)。具体的なリハビリ内容は後述しますが、ストレッチや姿勢改善などを行い症状の軽減を図ります。痛みが強くて動作に支障がある場合は、神経ブロック注射によって症状をコントロールすることもあるでしょう。
一方で、保存療法で十分な改善が得られない場合には、医師が適応を判断したうえで手術が検討されることがあります。
胸郭出口症候群のリハビリ内容
胸郭出口症候群のリハビリ内容としては、おもに以下があげられます。
- ● ストレッチ
- ● 軽いマッサージ
- ● 姿勢改善
- ● 動作指導
ここでは、それぞれのリハビリ内容について詳しくみていきましょう。
ストレッチ
筋肉の緊張によって胸郭出口症候群が起こっている場合、ストレッチを行います。ストレッチによって固まった筋肉を緩めることで、緊張が改善されて症状の緩和につながります。具体的なストレッチ内容としては、以下のとおりです。
- 1. 右手で反対側の頭の横をおさえる
- 2. 頸部を伸展させながら、手を使って頭を右方向に倒す
- 3. 痛みが出ない範囲で首を倒し、その状態を20秒ほどキープする
- 4. 反対側で行う
- 1. 右手で胸の中心からやや左方向(胸骨体の側面)をおさえる
- 2. 左手を45度ほど上げた状態で外旋しつつ、後ろに動かす
- 3. 痛みが出ない範囲で後ろに動かした状態を20秒ほどキープする
- 4. 反対側で行う
マッサージ
ストレッチに加えて、状態によっては軽いマッサージが役立つ場合もあります。痛みやしびれが強い場合は、医療従事者に相談してください。
斜角筋をマッサージする際は鎖骨の上のくぼみにある部分を、小胸筋の場合は烏口突起(肩の前側にある骨の突起)の下方向を目安にほぐします。マッサージでは強く押しすぎると揉み返しや症状の悪化を招く可能性もあるため、気持ちよいと感じる強さで行いましょう。
姿勢改善
不良姿勢によって胸郭出口症候群を発症している場合は、ふだんの姿勢を改善して身体のバランスを整えることが重要です。猫背や巻き肩などの不良姿勢が続くと、神経・血管が圧迫されやすくなり、しびれや痛みの慢性化につながります。
座位や立位姿勢をとる際は骨盤をしっかりと立てて背筋を伸ばし、身体のラインが一直線になるように意識することがポイントです。また背中が丸まらないように、肩甲骨を軽く寄せて胸を開くことを心掛けましょう。
動作指導
胸郭出口症候群の症状を軽減するために、動作指導によって日常生活での動作を見直します。しびれや痛みには、ふだんの動きや姿勢などが影響している場合があります。たとえば、重いカバンを肩にかける習慣や、満員電車でつり革に長時間つかまる動作は、鎖骨まわりの神経を圧迫しやすくなるでしょう。
また、デスクワークで肘を浮かせて肩をすくめたまま作業することも、筋肉に負荷をかける要因となります。これらに対しては、以下のような工夫が大切です。
- ● カバンをリュックに変えて重さを左右に分散させる
- ● つり革ではなくポールにつかまる
- ● 肘をデスクで支える
胸郭出口症候群のリハビリの際のポイント

胸郭出口症候群のリハビリを進める際は、どんな原因で症状が起きているのかを把握することがポイントです。この疾患は神経・血管が圧迫されるポイントによってアプローチ方法が異なるため、原因にあわせた対策が必要です。
例として、斜角筋が硬いタイプでは首まわりの柔軟性を高めることを優先しますが、不良姿勢が原因の場合は姿勢の改善が重要となります。まずは評価によってどのような問題が起こっているのかをチェックし、そこからプログラムを組み立てましょう。
胸郭出口症候群の症状にあわせたリハビリを行いましょう
胸郭出口症候群は神経・血管が圧迫されたり牽引されたりして起こる疾患で、上肢のしびれや痛みが現れます。この疾患に対するリハビリ内容としては、ストレッチやマッサージ、姿勢改善などがあげられます。
リハビリを行う際は原因を把握したうえで、そのかたにあわせたアプローチを行うことが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、胸郭出口症候群のリハビリを実施してみましょう。
参考
日本整形外科学会|胸郭出口症候群
慶應義塾大学病院|胸郭出口症候群
松澤正, 江口勝彦. 理学療法評価学 改訂第4版, 金原出版. 2013.
胸郭出口症候群は症状の出方が多彩で、評価に悩むセラピストも多い疾患です。本記事にもある通り原因部位によってアプローチが変わりますが、臨床で鍵になるのは「どの動作・姿勢で症状が誘発されるか」をていねいに聞き取り、再現することだと考えています。デスクワークの姿勢、荷物の持ち方、就寝時の腕の位置など、生活背景に圧迫・牽引の要因が潜んでいることは少なくありません。徒手検査の結果だけで判断せず、日常動作と症状の関連を紐解く視点を持つと、介入の的が絞りやすくなります。
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