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多系統萎縮症のリハビリ方法とは?おもな症状やリハビリ中のポイントを解説

公開日:2026.08.16

多系統萎縮症のリハビリ方法とは?おもな症状やリハビリ中のポイントを解説

文:内藤 かいせい(理学療法士)

多系統萎縮症の患者さんに対して、どのようなリハビリを行うべきか知りたい方も多いのではないでしょうか。この疾患は運動失調やパーキンソン症状が現れるのが特徴で、それぞれにあわせたアプローチが重要です。

この記事では、多系統萎縮症の代表的な症状やリハビリ内容をご紹介します。どのようなリハビリを行うべきかを知ることで、適切な介入が可能となるでしょう。

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多系統萎縮症とは?代表的な症状

多系統萎縮症(MSA)とは、脳内の特定部位の萎縮や異常が現れる疾患で、難病にも指定されています。多系統萎縮症の代表的な症状として、以下の3つがあげられます。

  • • 小脳性運動失調
  • • パーキンソン症状
  • • 自律神経障害

ここでは、それぞれの症状についてみていきましょう。

小脳性運動失調

多系統萎縮症によって小脳が障害されている場合、運動失調が現れることがあります。運動失調とは、手足の動きがぎこちなくなったり、身体のバランスを保つことが難しくなったりする症状のことです。

この失調症状により、手の細かい動きがしにくくなる、歩くときにふらつきやすくなるなど、日常動作に支障が出ることがあります。そのほかにも、発声時に呂律が回らなくなる構音障害が現れるケースも少なくありません。これらの運動失調が目立つ場合の多系統萎縮症を、MSA-Cと呼びます。

パーキンソン症状

身体をスムーズに動かすための神経回路である「錐体外路」に障害が起こると、パーキンソン症状が現れやすくなります。この症状が中心となる多系統萎縮症をMSA-Pと呼びます。この状態ではパーキンソン病と同じような症状が現れ、代表的なものとしては以下のとおりです。

  • • 振戦(手足の震え)
  • • 動作緩慢(動きがゆっくりになる)
  • • 固縮(筋肉のこわばり)
  • • 姿勢反射障害

一般的なパーキンソン病と類似していますが、症状の特徴が異なり薬の効果が限定的であるなどの違いがみられます。

自律神経障害

体調を整える自律神経の働きが障害されることもあり、その症状が中心の場合を「シャイ・ドレーガー症候群」と呼びます。自律神経障害を引き起こすと、以下のような症状が現れます。

  • • 排尿障害
  • • 起立性低血圧
  • • 発汗障害
  • • 体温調節障害

特に排尿障害や起立性低血圧は、日常生活やリハビリに大きく影響する可能性があるでしょう。立ち上がったときに血圧が低下し、めまいなどが生じることがあるため、リハビリを行う際は患者さんの体調の変化に十分に注意する必要があります。

多系統萎縮症の原因

多系統萎縮症の原因

多系統萎縮症は脳内の特定部位が障害されることで発症しますが、はっきりとした原因は完全には解明されていません。現在では、特定のタンパク質が過剰に蓄積することが発症に関わっていると考えられています。多系統萎縮症の多くは遺伝とは関係のない「孤発性」によるものですが、ごくまれに家族内で発症するケースもあるとされています。

多系統萎縮症の治療方法

多系統萎縮症を根本から治す方法は確立されておらず、現段階では症状をやわらげるための治療が中心です。たとえば、パーキンソン症状が現れている場合は初期段階で薬物療法を実施し、症状の進行予防を図ります。

運動失調症状に対してはリハビリによる身体機能の改善を目指し、自律神経障害では血圧低下を予防するために弾性ストッキングを装着します。発症早期から治療や介入を行うことで、筋力低下や拘縮などの二次的な合併症の予防につながる場合があります。

多系統萎縮症の評価内容

リハビリを効果的に進めるためには、評価を通じて身体の状態を正しく把握することが重要です。多系統萎縮症では複数の症状が現れる可能性があるため、失調症状やパーキンソン症状などを細かく確認する必要があります。具体的な評価内容としては、以下があげられます。

  • • SARA(運動失調評価)
  • • ホーン・ヤール分類(パーキンソン症状の進行度評価)
  • • 血圧測定

このように、小脳性運動失調に対しては「SARA」を、パーキンソン症状の進行度を評価する際は「ホーン・ヤール分類」を用いることが多いです。また安全なリハビリを行うために、動作時の血圧変動もチェックしておく必要があります。

多系統萎縮症のリハビリ内容

多系統萎縮症のリハビリ内容

多系統萎縮症のリハビリ内容としては、以下があげられます。

  • • 筋力トレーニング
  • • 感覚入力
  • • バランストレーニング
  • • 歩行練習
  • • ADL動作練習
  • • 発声練習

ここでは、それぞれのリハビリ内容について解説します。

筋力トレーニング

多系統萎縮症による二次的な筋力の低下を防ぐために、筋トレを行います。この疾患では直接的に筋力が低下することは少ないですが、運動失調やパーキンソン症状などによって筋肉を使う機会が減り、廃用が進む恐れがあります。

筋トレによって筋力を維持できれば、効率的にリハビリを進められるでしょう。具体的な内容としては、以下のような自重トレーニングが中心です。

  • • スクワット
  • • かかと上げ
  • • 膝伸ばし
  • • 臥位でのお尻上げ
  • • 立ち座り

感覚入力

小脳性の運動失調症状が現れている場合、感覚入力によるリハビリが行われます。外部の刺激を増やすことで感覚を脳に伝えやすくなり、失調症状をおさえる効果が期待できます。

具体的な方法としては、手足に重りをつける、関節周囲に包帯を巻くなどです。この状態で動作の練習を行い、症状の軽減を目指します。重錘を使用する際は、重量が重すぎると逆に動作がしにくくなり、疲れやすくなります。そのため、患者さんが無理のない状態でリハビリができるように重さを調節しましょう。

バランストレーニング

運動失調による転倒のリスクを減らすためには、バランストレーニングが欠かせません。運動失調のある多系統萎縮症では姿勢が崩れてふらつきやすいので、リハビリでバランス能力の改善を図ります。

具体的な練習内容としては、四つ這いの姿勢で片手を上げる、立位で左右に重心移動するなどがあげられます。バランストレーニング中は手すりの周囲や平行棒内などで行い、転倒に十分注意しながら段階的に負荷を上げていくことがポイントです。

歩行練習

多系統萎縮症では歩行時のふらつきや足のすくみが現れやすいので、リハビリで安全に歩くための練習を行います。まずは平行棒や歩行器などを使用して歩行を行い、状態や経過にあわせて、杖の使用や介助下での練習を検討します。

最終的には障害物や段差を想定した練習も取り入れ、実際の生活環境に近い状況での対応力を養うことも重要です。歩行補助具を使用する際は身体機能や家屋環境を考慮しつつ、どのようなものが適切かを検討するとよいでしょう。

ADL動作練習

日常生活の動作をスムーズに行うために、ADL練習を行います。多系統萎縮症では症状の進行にともない、食事や着替えなどの動作に時間がかかり、転倒のリスクが高まる恐れがあります。そのような問題を解消するために、動作の練習や症状にあわせた工夫を行うことが大切です。

具体例として、パーキンソン症状がみられる患者さんの場合は目印となるテープを活用して動作の練習をします。失調がある患者さんの場合は、1つの動作をいくつかの段階に細分化して、ていねいに行うとふらつきを軽減しやすくなるでしょう。

発声練習

多系統萎縮症では喉や口の周りの筋肉のコントロールが難しくなり、構音障害が現れる場合があるでしょう。そのため、発声練習によって言葉のコミュニケーションの維持を目指します。

具体的な内容としては、まずは姿勢を正して深く息を吸い込む腹式呼吸からはじめ、大きくはっきりした声で発声する練習を繰り返します。また、声の大きさに抑揚をつけたり、話し方のスピードを調整したりすることも有効な方法です。

多系統萎縮症のリハビリを行う際のポイント

多系統萎縮症のリハビリでは、患者さんの症状を把握したうえで、安全に配慮したアプローチが重要です。多系統萎縮症は運動失調やパーキンソン症状、自律神経障害などのさまざまな症状が複雑に絡み合っています。そのため、それぞれのリスクについて十分に理解してリハビリを行いましょう。

具体的には、運動失調では立位はもちろん、座位でもふらつきに注意が必要です。パーキンソン症状では思うように身体を動かせず動作が緩慢になりやすいので、焦って転倒しないように声をかけます。また起立性低血圧の対策として、起き上がり・立ち上がりの際はゆっくりと行ってもらうように説明するとよいでしょう。

多系統萎縮症のリハビリ内容を知っておこう

多系統萎縮症は運動失調やパーキンソン症状などが現れる疾患で、難病にも指定されています。この疾患に対するリハビリ内容としては、筋トレや歩行練習、ADL練習などがあげられます。

リハビリの際はどのようなリスクがあるのかを把握したうえで、症状にあわせた対応が重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、多系統萎縮症のリハビリ内容をおさえておきましょう。

参考

宇多野病院|多系統萎縮症
北海道病院|多系統萎縮症について
厚生労働省|17 多系統萎縮症

【監修者コメント】
多系統萎縮症のリハビリでは、筋力や歩行能力だけを見るのではなく、小脳性運動失調、パーキンソン症状、自律神経障害がどの程度生活に影響しているかを総合的に確認することが大切です。特に、ふらつきによる転倒、起立性低血圧によるめまい・失神、のみ込みや発声の変化には注意が必要です。無理に運動量を増やすよりも、その時期の身体機能に合わせて、安全に動ける環境を整えることが重要になります。医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士と連携しながら、生活の質を少しでも保てるよう段階的に進めていきましょう。
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