セラピストが被介助者の力を引き出すための基本5つ
公開日:2019.07.08 更新日:2021.04.07

文:福辺 節子
理学療法士/医科学修士/介護支援専門員
「もう一歩踏み出すための介助セミナー」では、理学療法士や介助をするご家族・医療関係者など向けに、相手の力を引き出すために必要な5つの基本を伝えています。
内容は以下の通りです。
この5つをもう少し詳しく説明しましょう。
1.できること、できないことを知る
第6回でも書きましたが、セラピストにとっては「評価」、看護・介護の場面では「アセスメント」です。
看護・介護では、「アセスメント」は「評価」とほぼ同じ意味で使われますが、「評価」は再評価の際にしか使われないので、カンファレンスなどで他の職種と話をする場合は少し気をつけてください。
看護職や介護職は、セラピストのように動作分析や評価の方法を学んではいません。しかし、最近は介護でもアセスメントはその必要性が問われており、研修なども多くなっています。
セラピストは評価に特化した専門職といえますが、評価に基づくケア、あるいは対象者の生活と結びついたケアの指導ができているでしょうか。他職種に適切な評価とそれに基づいたケアをきちんと説明できるようになりたいものです。
すでに「第7回 理学療法士として、効果につなげる評価をしよう」でお話ししたように、「評価」で特に重要な要素は、「対象者の主訴を探る」「仔細な評価をする」の2つです。
アバウトな評価では、介助には役立ちません。仔細な評価とは、「何ができていて、何ができないのか、なぜできないのか」ということです。仔細な評価によって得られた、対象者のできることを対象者自身でしてもらい、できないことだけを援助する。これで初めて、対象者の力を引き出すことが可能になります。
できることを介助者がしてしまうと、対象者の機能は低下していきます。また、できないことを頑張ってやってもらおうとすると、異常な反応を引き起こしたり痛みや変形を作ってしまうこともあります。
どちらの場合も、対象者にとっては失敗体験です。成功感を味わえず、尊厳や意欲、機能を低下させてしまいます。
2.介助の基本(支え方・動きの伝え方・声かけ)
介助の基本は「支える」「動きを伝える」の2つです。しかし、その重要性はあまり認識されていません。「声かけ」に関しては重要視されていますが、実際の実技や方法論までは言及されていないのが現状です。
3. 感じる
“感じる”は、看護・介護の教育で、最もおざなりにされているように思います。
私たちの職種は、自分自身の身体と身体能力を使って対象者の身体に触れ、対象者の動きを引き出します。にもかかわらず、セラピスト以外は身体や動きについてほとんど学ばず、感じることも学びません。なぜなら「被介助者を動かす介助」なら、相手を感じる必要がないからです。
しかし、被介助者に動いてもらうためには、相手がどのくらいの介助を必要としているか、どちらの方向にどれくらいのスピードで動こうとしているのか、などを感じ取る能力が必須です。その能力がなければ、必要以上に(あるいは以下に)支えてしまったり、相手の意図と違う方向に相手を動かそうとしてしまうからです。違う方向への誘導は被介助者の恐怖と痛みをつくり出してしまいます。
4. 人間の正常な反応を利用する
私たちが緊張せず、大きな努力もせずスムーズに動くことが可能なのは、正常な反応を利用しているからです。例えば「体軸内回旋」や「立ち直り反応」です。
例えば寝返りの介助の際に、肩と腰、あるいは肩と膝といった2ヶ所を同時に介助する方法は、被介助者の体軸内回旋を妨げてしまっています。寝返りの介助の際の誘導は2ヶ所ではなく1ヶ所でよいのです。
また、歩行には絶対必要な体重移動を引き出さずに、被介助者を傾けたり、引っ張って足を出させようとする歩行介助も、人間の正常な反応から大きくかけ離れています。
5.人間の通常の動き方をなぞる
立ち上がりの際の介助は、上方に引っ張るのではないことは知られています。しかし現実には、ほとんどの介助者が上向きの力を加えてしまっていたり、お辞儀をする立ち上がりを教えています。
人は立ち上がるときにわざわざ上向きや下向きの力を加えません。介助者が誘導する方向は被介助者の前方向だけでよいのです。
キリがありませんが、このようにこれまでの介助の常識とされてきた内容は科学的なようでありながら、実際はそうではありません。当たり前と思って誰もが疑問に思わなかったことを、見直してみる必要があるのではないでしょうか。
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