患者さんに価値あるリハビリを! 「生活行為向上マネジメント」を活用しよう
公開日:2015.10.19 更新日:2015.10.26
近年、認知度が高まりつつある「生活行為向上マネジメント」。一般の人や患者さんに向けて、作業療法士が進める支援内容をわかりやすくまとめたもので、患者さん自らが決めた目標の達成に向け、より最適な方法を選択しやすくするツールです。作業療法士と患者さんだけでなく、医療の現場や入所施設、介護スタッフが連携しながら活用するケースが増えています。今回は、生活行為向上マネジメントとその効果についてお伝えします。
患者さんが作業療法の内容を把握できる3つのアプローチ
リハビリの現場で実際に活用するために、まずはどのようなものであるかを知っておきましょう。生活行為向上マネジメントは、以下の3つのシートを用いて進められます。
- 生活行為聞き取りシート
- 生活行為アセスメント演習シート
- 生活行為向上プラン演習シート
リハビリは患者さん自身が目標を立て、やる気をもって取り組んでもらうことで大きな成果につながります。3つのアプローチを取り入れることで、患者さんがリハビリにやりがいを感じ、課題を意識しながら取り組めるようになっています。
生活行為向上マネジメントのメリットは、患者さん自身がリハビリを行う目的や必要な作業を把握しやすいこと。作業療法士が一方的な目標を掲げるのではなく、患者さんの意志を尊重したプログラムを作ることで、リハビリの意味が理解してもらいやすくなるのです。
3つのアプローチから有意義な目標を設定する
リハビリの要となるのが目標設定です。患者さんのニーズを聞きながら、現状で実現可能な目標を決める必要があります。3つのアプローチを使うことで、作業療法士の考えを織り込みながら、患者さんにとって有意義な目標設定を実現できます。
それでは、使用する3つのシートが持つ役割や使い方を見ていきましょう。
生活行為聞き取りシート
患者さんにとって作業の意義を意識化するために使われるのが、生活行為聞き取りシートです。患者さんが困っていることや、問題を感じていることをヒアリングすることで、生活行為の目標を明確化するのが目的です。同時に、目標に対してどの程度実行できているか、どのくらい満足しているかといった現状を答えてもらうことで、目標設定が具体化しやすくなり、患者さんにとって本当に必要なサポートを見つけ出すのに役立ちます。
生活行為アセスメント演習シート
生活行為聞き取りシートで得た作業目標の達成に向けて、作業を遂行する際に問題となる要因を分析できます。シートには、心身機能・構造、活動と参加、環境因子の3つの項目があり、現状からどの程度目標が達成できるかについて、作業療法士によるアセスメントを行います。この段階を経ることで、達成できそうな生活の課題を確認し、利用者自身が目標の阻害要因を自覚できます。最終的に、解決策を意識しながらリハビリに取り組むよう導くためのシートです。
生活行為向上プラン演習シート
目標の遂行工程を分析できるシート。生活行為の工程分析に基づき、基本的プログラム、応用プログラム、社会適応プログラムと段階をつけ、在宅での実践を視野に入れたプランを作成できます。結果につながる工程分析のなかには、現時点でできる動作、できない動作が混在します。患者さん本人が求める結果に向けて、現段階ではできない動作を見極め、リハビリプランを考察しましょう。
目標達成によって期待できる効果
生活行為向上マネジメントの効果は、身体機能の改善はもちろんですが、精神的な満足度を高めることにあります。患者さん自身の考えをシートに書き、実現に向けて意味のある作業を確認できることで、リハビリへの意欲が高まるからです。さらに、生活行為向上マネジメントを活用しながら目標を達成すれば、自ら考えたプランを成し遂げられた喜びを感じられます。早く実現したい目標があっても、療法士と患者さんで意志の共有ができなければ、実現まで遠回りになることもありえます。生活行為向上マネジメントを取り入れることで、患者さんが求める結果により近づけるリハビリが可能になります。
患者さんの目標は「家族のお祝いをしたい」「外泊をしたい」など、曖昧なものでも構いません。大切なのは、“夢を叶えたい”という気持ちです。作業療法士がそのためのプログラムを考案・提案し、目標達成に向けて団結して取り組むことで、効果的なリハビリが実現できるのです。
患者さんにとって価値あるリハビリを追求しよう
生活行為向上マネジメントは、患者さんにとってリハビリの意義を確認できるツールです。生活行為向上マネジメントを活用し、患者さん、ご家族、関連スタッフ、そして作業療法士が連携した効果的なリハビリに取り組んでみませんか?
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