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芸術の秋! 作業療法士だからこそできる絵画療法を取り入れよう

公開日:2015.10.21 更新日:2015.10.29

芸術の秋。いつものリハビリに、アートを使ったプラスαの楽しみ方を取り入れてみてはいかがでしょうか。芸術といっても書道や音楽などさまざまですが、今回は絵画をテーマにした絵画療法を紹介します。

リハビリにおける芸術療法とは

幼いころに経験する「ごっこ遊び」や「なぐり描き」、「ねんど遊び」や「砂遊び」といった表現活動には、成長・発達を促しながら、心身に刺激を与えるという重要な役割があります。同様の刺激を与えるものとして、絵画や音楽などを取り入れた作業を行うのが芸術療法です。芸術療法は言葉ではうまく説明できない患者さんの心理状態を感じ取れるものとして、心理療法のひとつとしても古くから活用されてきました。表現活動を通して問題解決への糸口を見出し、自己実現への道を開くという精神的アプローチができる一面もあります。
リハビリにおいても楽しみながら、身体的・肉体的なアプローチを可能にするアクティビティとして、ぬり絵やちぎり絵などの絵画療法を取り入れる施設も増えているようです。歩行訓練と同時に写生を行うなど、PTとOTが同時に刺激を与えることもでき、さらなる可能性も考えられます。アートによるリハビリはやり方次第。芸術の秋にプラスαの刺激を加え、ひと味違った創作アートを患者さんと楽しんでみてはいかがでしょうか。

脳全体を刺激する絵画療法「文章を絵に」

絵画療法は創造性を高めるとともに、指先の機能回復にもつながります。心理的にアプローチできるケアとして、実際に活用している現場も多いことでしょう。また施設や介護現場を中心に、多く取り入れられているのが「ぬり絵」です。下絵を準備すれば患者さんへの指示も少なく、簡単に進められるという特徴があります。
ぬり絵は色の選択や指先動作が中心ですが、「写生」はさらに脳へ刺激を与える絵画療法といえます。「モデルや静物を見て絵を描く」という単純作業ですが、上手に描けないと苦手意識を持つ患者さんもいるようです。

本来リハビリでは患者さんに、上手・下手にとらわれず楽しんでほしいところですが、そうもいかないのが現状です。そこで、写生を苦手とする患者さんにおすすめしたいのが「文章を絵に描く」というリハビリです。正解がないイメージの世界を創造できるため、見たものに似せて描くのが難しいと感じている患者さんでも、取り組みやすい手法といえるでしょう。絵に描く題材とする文章は、童話や童謡などの慣れ親しんだものから始めるのがおすすめです。

好きな絵を描くわけではないので、患者さんによっては自由度が少ないと感じるかもしれません。しかしながら、普段は使わない記憶や感情を表現することで、創造的な課題にもなりえます。同じ文章を題材にして描いたものでも、視点や解釈が異なれば多様な表現がみられるでしょう。水彩、油彩、色鉛筆やクレパスなど好きな画材道具を患者さんが選ぶことで作業の幅が広がり、機能改善面での効果を高めることも可能です。

また、制作後に作品を掲示したり発表したりすれば、患者さん同士のコミュニケーションツールのひとつとしても役立ちます。絵画療法は絵を描くという目的以上に、その過程が重要です。精神機能を活性化させ、自発性、集中力や意欲の向上といった効果が期待できる芸術療法は、脳機能にも大きな刺激を与えます。

絵画から見える患者さんの変化

絵画療法の影響は患者さんが持つ症状によって異なります。例えば、認知症をもつ患者さんの場合、脳への刺激を与えることで、集中力や意欲面の向上が期待できるとされています。また脳こうそくによる片麻痺の患者さんが、ぬり絵によるリハビリを行うことで左半側視空間無視が改善し、左側を意識できるようになったという事例もあります。

症状の違いはあれど、絵画療法を行うすべての患者さんによい影響としてみられるのが感情面の変化です。環境の変化に乏しい入院生活では、患者さんの感情が停滞してしまうことも少なくありません。しかし絵画療法を行うことで自己認識に変化を与え、感情の変化として表れやすくなります。

ある事例では、はじめは弱々しいタッチの絵を描いていた患者さんが、徐々に感情を素直に表現した絵を描くようになり、入院生活を楽しめるようになったとのこと。思うようにいかないリハビリに挑戦している患者さんは、どうしてもストレスがたまりやすいものですが、絵画は心を落ち着かせ、ゆとりや潤いをもたらしてくれます。継続するうちに、問題行動の減少にもひと役買ってくれるようです。

芸術の秋に絵画を楽しもう

芸術は、数学のように正解や不正解がなく、勝ち負けもありません。楽しさや感動、心の安らぎをもたらし、日々を豊かにしてくれます。創造性を働かせながら、機能訓練にもなり、作業の過程で多くの刺激が得られるでしょう。作業療法士だからこそできるサポートで、患者さんと一緒に楽しみながら、芸術の秋を彩ってみてはいかがでしょうか?

 

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