腎臓リハビリテーションとは?(前編) 腎疾患の患者さんへ、運動時の注意と必要性
公開日:2015.10.26 更新日:2015.11.05
運動器や脳血管疾患、呼吸器や心大血管疾患のリハビリテーションはよく知られていますが、近年注目されはじめている腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)をご存じでしょうか。腎臓リハビリは腎不全の患者さんに対して、運動療法、教育、食事療法、精神的ケアなどを行う、内部障害へのリハビリです。今回の前編では、腎臓リハビリの概要から、腎疾患をもつ患者さんの身体状況、透析患者さんを除いた、保存期腎不全患者さんへの運動の必要性とリハビリ時の注意点について紹介します。
腎臓リハビリとは
腎臓リハビリは1994年に米国で始まり、国内では2010年ごろから広がりを見せています。2011年1月に日本腎臓リハビリテーション学会が発足し、効果を検証する研究を行いながら、指針作成や保険適用を目指しているとのこと。
腎臓リハビリは腎機能の改善や回復を図るものではなく、慢性腎臓病の予防、腎疾患の進行抑制(透析療法までの期間延長)、人工透析患者さんの生活の質や生命予後の改善などが目的です。近年、透析患者さんの多くが糖尿病や高血圧、動脈硬化などの、いわゆる生活習慣病を原疾患としており、それらに対する運動療法や包括的介入の効果が見込まれています。
腎臓リハビリの対象者について
主に人工透析の患者さんや腎疾患の患者さんが、腎臓リハビリの対象となります。透析の患者さんについては後編で述べるとして、ここでは慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)について紹介しましょう。慢性腎臓病は5つのステージに分けられます。
・ステージ | 1~2 | : | 無症状 ※早期発見で回復の余地あり |
・ステージ | 3 | : | 夜間尿、軽度の高窒素血症、高血圧(軽症) |
・ステージ | 4 | : |
多尿、貧血、中等度の高窒素血症、代謝性アシドーシス、 高リン・低カルシウム血症、高血圧(中等度) ※保存期腎不全であり、治療としては現状維持が目標 |
・ステージ | 5 | : |
著明な高血圧、浮腫、肺水腫、貧血、消化器症状(悪心、嘔吐など)、 循環器症状(うっ血性心不全、不整脈、胸痛など)、 皮膚症状(かゆみ、色素沈着など)、神経症状などの尿毒症症状 ※人工透析が必要(詳細は後編でお伝えします) |
これらすべてのステージで腎臓リハビリは適応となりますが、ステージ4の患者さんへのリハビリについては特に注意が必要です。
保存期腎不全の運動について
腎臓は、大量の血液を必要とする臓器です。ステージ4(保存期腎不全)については、激しい運動により、筋肉、肺、心臓への血液の配分率が高まることで、腎機能が増悪する危険性があります。実際に腎機能が急速に悪化した例もあり、これまで保存期腎不全の患者さんは、運動を制限されることが多いことが現状でした。しかし、過度の安静では運動耐容能や日常生活動作能力の低下を引き起こしてしまうこともわかっています。最近になり、適度な運動は、腎機能には悪影響を及ぼさずに、糖・脂質代謝の改善などのメリットをもたらす可能性があるため、活動を過度に制限すべきではないことが示唆されるようになりました。また、各種腎不全動物モデルラットでの研究では、長期的運動の腎機能保護作用とそのメカニズムも解明されてきているようです。
運動の負荷量については、心不全の患者さんへのリハビリを参考に、運動強度や頻度を決定することが増えています。具体的な例は以下の通りです。
・運動の種類 | : | 有酸素運動、低強度レジスタンストレーニング |
・運動強度 | : |
最大能力の40~50%の運動(心拍数の上昇に注意) ボルグ指数11~13 |
・運動時間 | : | 30~60分(15~30分×2回でも可) |
・頻 度 | : | 週3~7回(重症例では週3~5回、少なくとも週1回) |
以上を参考に、リハビリを実施してみましょう。
後編では、人工透析患者さんに対象を絞って紹介します。
【参考URL】
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