【理学療法士・作業療法士1年目で辞めたい人へ】退職前に考えてほしいこと
公開日:2021.02.16 更新日:2022.02.03
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
セラピスト1年目。目標をもって仕事を始めたものの、実際に就職してみたら業務内容や労働環境になじめないと感じることがあるかもしれません。そうした新人作業療法士・新人理学療法士のなかには、仕事を辞めたいと考える人もいるのではないでしょうか。
私は作業療法部門の人事担当者として、職員の退職相談を数多く受けてきました。なかでも入職したての新人の方は「退職を考えても、先輩や上司に相談しづらい」という声をよく聞きます。
そこで今回は人事担当者としての経験を踏まえて、仕事を辞めたい新人療法士に向け、いま辞めるべきか今後どうすべきか、キャリアパス形成のポイントについて解説します。
目次
退職を希望する新人作業療法士・理学療法士は多い
社会人1年目の退職は、今後のキャリアに影響する可能性もあるため、実行に移せないと感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、実際には、セラピストが1年目で退職するケースは少なくありません。とりわけ退職理由でよく聞かれるのが、次のようなケースです。
・職場の人間関係が合わない
・先輩や上司の指導が厳しい
・業務に必要な知識・技術を指導してもらえない
就職前は自分の希望に近い職場のように思えても、実際に働いてみると、「自分には合わなかった」ということもありえます。
もちろん、職場が合わなければ退職するのも1つの方法です。しかし、退職がもっとも良い選択であるとはかぎりません。
自分が成長するために、どのような選択をするべきか。退職を決断する前に、自分のキャリアプランをしっかり考えることが大切です。
作業療法士・理学療法士の仕事を辞める前に考えたいキャリアプラン
これからのキャリアを見据えながら、今後の方向性を考えてみましょう。考えられる選択肢として、主に以下の4つがあります。
1)現職での働き方を見直す
いきなり退職を考える前に、まずは、現職での働き方を見直してみましょう。
新人のうちは、うまくリハビリがおこなえなかったり、職場になじめなかったりすることもよくあるものです。特に、自分1人で悩みを抱えている場合、退職するしか問題解決の方法がないように思えるかもしれません。
しかし、退職しても次の職場で同じような悩みを抱える可能性もあります。まずは、リハビリのやり方やコミュニケーションの仕方を見直し、働きやすい環境に近づけてみましょう。
退職を決断する前に、まずは上司や先輩に相談しながら自分の働き方を見直すことが大切です。
2)同じグループの施設に異動する
体調を崩したり、複雑な人間関係に対応できなかったりするなど、今の職場で働き続けるのが難しいと感じた場合には、同じグループ内で施設の異動ができないかを考えてみましょう。
異動によって周囲の環境は変わるものの、同じグループ内であれば施設の方針や業務のやり方が似ているため、仕事になじみやすいというメリットがあります。
勤務地によっては、住居地を変更せずとも通勤しやすいところもあるでしょう。退職ではなく「異動」の選択肢を考えることで、働きやすい環境に変わる可能性があります。
3)作業療法士・理学療法士として別の職場に転職する
グループ内の異動が難しければ、リハビリセラピストとしての資格を活かせる転職先を考えてみましょう。作業療法士や理学療法士の仕事は、職場が変われば業務内容や労働環境も異なります。
転職すると決めたら、業務内容や職場環境、教育体制、給与面など、自分が仕事をするうえで重視したい点に優先順位を決めましょう。
せっかく転職しても「また職場が合わなかった」と悩むことがないように、ポイントを絞って転職先を探すことが大切です。
4)作業療法士・理学療法士以外の職業に転職する
そもそも作業療法士や理学療法士の仕事自体が「合わない」と感じているのであれば、まったく異なる分野に転職するのも1つの方法です。短期間であっても療法士として培った経験を活かすなら、サービス業への転職がおすすめです。
サービス業は接客を伴う業務が多い傾向にあります。患者さんや利用者さんとの関わりのなかで築いてきたコミュニケーションスキルを活かせるでしょう。
選択肢に迷ったら、上司や先輩・同僚に相談しよう
明確なキャリアプランが描けず、これからどんな働き方をすればよいのか迷ったら、周りの人に相談してみましょう。
1人で悩んでいると、「無理してでも続けるしかない」、「退職しかない」といったように、自分の進退を極論で考えてしまいがちです。
今の職場に信頼できる上司や先輩・同僚がいるのなら、気軽な気持ちで相談するとよいでしょう。同じ職場の人だからこそ、働きにくさを解消する具体的なアドバイスをもらえるかもしれません。
職場に相談できる人がいないなら、家族や友人に話をしてみてはいかがでしょうか。
職場の状況を知らない相手であっても、悩みを打ちあけるだけでも状況を整理したり、冷静な判断をしたりするのに役立ちます。1人で抱え込まないことが、とても大切です。
退職を決めたときの上司への伝え方と退職理由
今の職場から離れることを決意し、退職に至る場合には、まず直属の上司に報告する必要があります。退職を報告する際には、基本的に次の順番で伝えるとよいでしょう。
1)部門の責任者
2)リハビリ科の責任者
3)病院または介護施設長
勤務先の管理体制により、退職を報告する相手は異なりますが、どのような職場であっても、まずは作業療法部門・理学療法部門の責任者に報告するのがマナーです。直属の上司を飛び越えて、リハビリ科の責任者や病院・介護施設長に退職を報告してしまうと、トラブルになりかねません。
また、上司に退職理由を伝える時には、印象が悪くならないように言葉や表現を選ぶことが重要です。もし「人間関係が合わない」「教育体制に不満がある」といった理由で退職を決めたとしても、できるだけ違う言葉に置き換えましょう。
そのまま伝えてしまうと、上司としてはマネジメントを否定されたような気分になるものです。そうした場合には、例えば、「職場の雰囲気になじめなかった」「他に学びたい事ができた」など、視点を変えて伝えることで職場を否定することなく、良い関係を保ったままで退職に踏み出せます。
作業療法士は、退職後も、前の職場の上司や先輩・同僚と、研修会や学会などを通じて顔を合わせる機会があります。できるだけ円満な関係を保つには、角が立たないよう工夫しながら、退職希望を伝えましょう。
将来を見据えたキャリア形成を考えよう
今の働き方にストレスを感じていたとしても、必ずしも退職がベストな選択とは限りません。新卒1年目の時点では、まだまだ知らないことも多いでしょう。
まずは、今の職場での働き方を見直したり、同じグループ施設への異動を考えたりしながら、無理なく働き続けられる方法を模索してみましょう。
悩みがあれば、職場の人や家族・友人に相談し、自分の状況を整理することも大切です。そのうえで、仕事を辞めざるを得ないと判断したら、転職を検討すると良いでしょう。
自分は、どのようなキャリアを積んでいきたいのか、将来を考えながら今後の働き方を選びましょう。
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2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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