食事による回復効果も期待! 料理リハビリを取り入れるには
公開日:2016.07.22 更新日:2016.08.01
在宅復帰を目指すためには、生活に即したリハビリを取り入れたいものです。家事を使った生活リハビリにはさまざまな種類がありますが、料理を取り入れたものが行われることは少ないようです。一見手間がかかりそうな料理リハビリも、やり方次第で大きな効果が期待できます。健康維持に役立つ食事メニューを取り入れた、リハビリとしての料理活用法を紹介します。
料理リハビリに取り組んでみましょう
生きていく上で欠かすことのできない日々の食事。在宅復帰を目指すとき、患者さん自身が簡単な調理をできるよう、料理リハビリを取り入れて生活をサポートしてみましょう。
料理は多くの工程や作業を含むため、作業療法士を含め医療スタッフ側の事前準備や工夫が必要です。例えば、患者さんの身長に合った作業台や、けがをしにくいセラミックの包丁やキッチンばさみ、皮むき器などを準備しておきましょう。
包丁を使う場合は、野菜を固定し、片手だけで切るためのくぎ付きまな板が市販されています。柔らかい野菜は固定しにくかったり、くぎでのけがに注意が必要だったりしますが、動作の程度に合わせて活用できます。料理メニューは動作可能な作業範囲内でできるものを前提とし、簡単なものから始めましょう。
患者さん同士で和気あいあいと料理を作る時間は、作業療法としての一面だけでなく、楽しいコミュニケーションの場となります。また、自分たちで作ったおいしい料理を食べることで気分転換にもなるのではないでしょうか。
おすすめはたんぱく質を多く含む食品
料理リハビリのもうひとつのメリットは、食生活改善に役立つことです。単なる作業だけでなく、栄養素を意識したメニューを考えてみましょう。おすすめなのは「たんぱく質」が豊富なメニューです。加齢とともに不足しがちなたんぱく質は、筋肉、骨、内臓、血液、皮膚など、身体の大部分を構成しており、身体を作るもとになります。健康維持のために積極的に摂取したい栄養素ですが、たんぱく質を多く含む肉や魚は調理に手間がかかりやすいもの。調理に不安や大変さを感じている患者さんでも安心できるような調理法を紹介し、料理リハビリで不安感を払拭(ふっしょく)しましょう。
手軽にできる料理術
限られた動作で調理をする場合には、できるだけ作業工程を減らしたレシピを考えたいですね。そんなとき、大いに活躍してくれるのが「オーブントースター」。調味料で味を整えタイマーをセットして焼くだけという簡単な工程で、おいしい料理が作れる優れもの。
例えば、食べやすいように一口大に切った肉や魚に、オリーブオイルとスパイスやハーブソルト、塩麹などで下味をつけましょう。耐熱皿に盛り、オーブントースターで15分ほど焼けば完成です。
ただ、患者さんの状態にもよりますが、肉や魚は衛生面からも取り扱いが難しいという一面があります。そのため、野菜の調理からリハビリを進めてみましょう。レタスを一口大にちぎったり、キャベツやきゅうりをキッチンばさみでカットしたりして、メインディッシュに添えるサラダにします。また、しめじやえのきたけを指先でほぐしたり、玉ねぎやなすを包丁で切り、メインディッシュと一緒にオーブンで焼いたりしてもおいしく食べられます。かぼちゃや芋類、根菜類などのかたい野菜は、一度火を通し柔らかくしてから切るようにすると安全です。
環境によってオーブントースターが使えない場合におすすめなのは「汁物」です。煮干しからだし汁をひくことで、アミノ酸や微量ミネラルを効率よくとることができます。豚汁のようにたんぱく質を含む食材と野菜をたっぷり入れれば、それだけで立派な一品のおかずにもなります。汁物はやけどに十分な注意が必要ですが、オーブントースターの扉の開け閉めや温度調節、時間の設定といった調整が不要です。電気コンロでもできるので、手軽に行える料理リハビリになるでしょう。
料理リハビリを取り入れることによる在宅復帰後のメリット
身体機能の回復と食事の質は、密接な関係があります。在宅復帰後の機能低下を回避するために、バランスの良い食事が必要です。入院中とは異なり、家庭での栄養バランスは偏ることも多く、改善に必要なたんぱく質や各種ビタミン、ミネラルが不足していれば、回復してきた機能も低下するかもしれません。在院中に料理リハビリを行うことによって、家庭内での食事も整いやすくなり、健康維持にも一役買ってくれることでしょう。
生活に取り入れられる料理を伝えましょう
思うように動かない身体であっても工夫をし、リハビリを重ねることで、料理に取り組みやすくなるのではないでしょうか。生活意識を高めるためにも、自立を進めるのはとても大切なこと。身体を作る食事の質を意識して、在宅復帰後も元気に過ごせるサポートをしていきたいですね。
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