理学療法士になるのは難しい?学校・国家試験難易度・資格取得後に分けて解説
公開日:2021.09.08 更新日:2023.08.07
文:rana(理学療法士)
これから理学療法士を目指す人のなかには、資格取得までの難易度や仕事の大変さが気になる人もいることでしょう。理学療法士は国家資格であり、誰でも簡単に取得できるものではありません。また医療に携わる仕事であり、責任も問われます。
では「理学療法士になるまで」と「理学療法士の資格取得後」において、実際にどのような点が難しいと考えられるのでしょうか。
今回は理学療法士として13年目を迎える筆者が、自身の経験を元に理学療法士の難易度について解説します。
目次
理学療法士の養成校(専門学校・大学)の難易度・偏差値の違い
理学療法士になるには、高卒以上から文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校で学び、受験資格を得る必要があります。養成校には次の4種類がありますが、いずれも入学するには受験をして合格しなければなりません。
・4年制大学
・短期大学
・専門学校
・特別支援学校(視覚障害者が対象)
受験科目は、理数系科目、文系科目、小論文などが主で、養成校によって異なります。なかには社会人入試を行っている養成校もあります。
養成校によって受験者人数が違い、合格倍率も養成校によってさまざまです。比較的学費の安い国公立大学は偏差値が高い傾向にあり、入学の難易度が高くなります。
一方で、定員割れの傾向がある専門学校は入学の難易度が低くなりやすいでしょう。
理学療法士養成校における授業の種類とその難易度
理学療法士の養成校ではさまざまなカリキュラムを通し、国家試験の合格や合格後の活躍を目指して実践的に学びます。まずは養成校で取り組む内容について見てみましょう。
授業内容
養成校での授業で学ぶ内容は大きく、基礎科目と専門科目の2つに分けられます。
<基礎科目>
医学や医療に関する基礎的な知識を学びます。具体的には、骨や筋肉など人間の身体構造を学ぶ「解剖学」、体の諸機関の働きを学ぶ「生理学」、関節や筋の働きや運動力学を学ぶ「運動学」などです。
<専門科目>
より専門性の高い知識として「整形外科学」「神経内科学」といった科目別の授業や、「理学療法評価学」「運動療法学」「物理療法学」といった理学療法に特化した内容を学びます。
一年次は基礎科目の授業が主となり、学年が進むにつれて専門科目の授業がはじまります。
定期テスト
一般的な学校と同様に、養成校では決まった時期に授業内容を元にした定期テストが行われます。テストでは筆記だけでなく、関節可動域測定や筋力テストなど実技形式の内容も含まれます。
基準の点数に満たないと、単位を修得できず、養成校のカリキュラムを修了することができません。しっかりと準備をしてテストに臨む必要があります。
実習
3年次や4年次には、実際に病院やクリニックといった施設に行き、患者さんと直接関わりながら学ぶ「実習」が行われます。
実習は見学が中心の「見学実習」と、理学療法評価までを行う「評価実習」、理学療法評価に加えて治療介入も行う「臨床実習」に分けられ、合計で20単位(1単位が40時間以上)以上学ばなければなりません。時間にすると800時間以上となるので、一日8時間の実習を20週以上こなす計算となります。
慣れない環境で患者さんと関わるため、多くの学生が実習に苦手意識を持ちやすい傾向にあります。しかし、養成校で学んだことを実践できる貴重な機会であり、学びも多く、自分が理学療法士として働くイメージを持てる時間です。カリキュラムのなかでも、最も重要といえるでしょう。
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理学療法士の国家試験(国試)の難易度と合格率
養成校でのカリキュラムを修了すると、国家試験を受験する資格が得られます。国家試験に合格すれば、理学療法士として第一歩を踏み出せます。国家試験は、年に1回、2月下旬または3月下旬に行われ、マークシート式の選択問題です。
一般問題が160問、実地問題が40問の計200問が出題され、午前と午後にわかれて100問ずつを解答します。(不適切などで採点除外された問題がある場合、年によって問題数のばらつきがあります。)
一般問題は、解剖学、生理学、運動学、病理学などから、実地問題は臨床心理学、リハビリテーション医学、運動学などから構成され、出題範囲はかなりの広範囲となります。
なお、過去5年の理学療法士国家試験の受験者数と合格率は以下のようになっています。
理学療法士国家試験 過去5年間の合格率の推移
過去4年間は8割程度の合格率となっていますが、年度によってやや差があります。出題範囲が広く、問題数が多いため、しっかりと事前準備、試験対策を行うことが重要です。
理学療法士になってからの難易度は?資格取得後にも継続した学びが必要
理学療法士免許を取得後は、いよいよ施設への入職です。リハビリを担当するとしても、新人の頃はわからないことも多く、戸惑うこともあるでしょう。
国家試験に合格したからといっても、理学療法士として一人前というわけではなく、臨床に出てから継続した研鑽を積んでいくことが必要となります。
患者さんをより良い状態にするため、自分が理学療法士として成長するには、それぞれが自覚を持って研鑽を積むことがとても大切です。講習会やセミナーに参加したり、書籍から知識を深めたりと方法はさまざまですが、自分の目指す方向性のスキルや知識を深められるようなものを選択するとよいでしょう。
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実習・国家試験・臨床後、それぞれの研鑽がポイント
理学療法士を目指すなかで、難易度が高いと感じるのは「実習」、「国家試験」、「資格取得後の研鑽」の3つでしょう。
実習は知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力、社会人としてのマナー、忍耐力などさまざまなことが求められるため、多くの理学療法士が大変さを実感しています。
国家試験は合格率だけを見ると安易なイメージを持ちやすいですが、試験に臨むまでには多くの時間を割いて、勉強をする必要があります。臨床後の研鑽については、学ぶ内容や量に個人差がありますが、理学療法士として意識高く働くためには必須のことです。
難易度も高く、難しいからこそやりがいのある仕事
理学療法士になることも、その後も仕事についても決して簡単で楽なことではありません。ですが、理学療法士は医療に携わり、患者さんの人生に大きく関わる国家資格であり、当然のことといえるでしょう。
だからこそ、やりがいがあり、自分が大きく成長できる仕事です。患者さんに喜ばれる理学療法士を目指して、日々研鑽していきましょう。
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参考
理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会報告書(厚生労働省)
国家試験合格発表|厚生労働省
rana
理学療法士
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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