スポーツトレーナーに関する資格とは?取得するメリットや将来性などについて解説
公開日:2021.11.17 更新日:2023.09.06
文:rana(理学療法士)
スポーツに関わる仕事の一つに、「スポーツトレーナー」があります。
過去に部活動などでスポーツに熱心に取り組んでいたからこそ、自身の過去のスポーツ経験が生かせるスポーツトレーナーになりたいという人も多いのではないでしょうか。
スポーツトレーナーとして活躍するために役立つ資格は多く、さまざまな分野に分かれています。
今回は、スポーツトレーナーになるために必要なことや資格を取得するメリット、将来性などについてお伝えします。
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目次
スポーツトレーナーとは?アスリートをサポートする専門職
スポーツトレーナーとは、スポーツをする人が最大限のパフォーマンスが発揮できるよう、コンディション調整、ケガの予防、リハビリなどのサポートを行う専門職です。
スポーツトレーナーになるには
スポーツトレーナーになるルートとしては、スポーツトレーナーの資格、あるいは医療系の国家資格を取得した後、病院や治療院などで経験を積み、スポーツトレーナーとして活躍するというのが一般的です。
場合によっては資格がなくても、スポーツトレーナーとして働くことができます。しかし、しっかりサポートをするためには専門知識が必要です。スポーツや体調管理の専門家として認められるためにも、関連する資格を把握しておきましょう。
スポーツトレーナーを目指す一般的なルートについて
スポーツトレーナーを目指すには、大学や養成校でスポーツやトレーニングに関する専門的なカリキュラムを学ぶのが一般的です。スポーツトレーナーになるための一般的なルートを紹介します。
大学や短大で学んで目指す
まず、医療系や体育系の大学または短大で学んでからスポーツトレーナーを目指していくルートがあります。スポーツトレーナーを目指すなら、スポーツ科学科やスポーツ健康科学科といった学科を設けている大学や短大を選ぶとよいでしょう。
また、大学や短大ではスポーツ系の部活やサークルも多く、実際にスポーツトレーナーを配属していることも少なくありません。そうした活動に参加していれば、学生のうちからトレーナーの実践的な活動を体験することができるのもメリットといえます。
専門学校で学んで目指す
近年、スポーツトレーナーを養成する専門学校が増えています。実際にスポーツトレーナーとして活動している講師も多く、より実践的な学びを得られたり、人脈を広げたりすることも可能でしょう。通学期間中に、アマチュアチームやジムなどに実習にいけるケースもあり、より実践的な経験を積めるのが特徴です。
医療系の学校で学んで目指す
理学療法士や柔道整復師といった、医療系の学校で学んでからスポーツトレーナーを目指すのも一つの方法です。スポーツ分野だけではなく、医学的な深い知識が身につき、国家資格を取得できることが大きなメリットです。実際にJリーグやプロ野球のチームにも、医療系の国家資格を取得してからスポーツトレーナーとして活躍している人も大勢います。
海外留学を経て目指す
海外でスポーツに関する学びを経てから、国内でスポーツトレーナーを目指すルートもあります。特にアメリカはスポーツトレーナーの認知度や評価も高いため、アメリカの大学で学ぶことは大きな武器となるでしょう。難易度は高いものの、日本では経験できない本場の学びを得られるのが最大のメリットです。
スポーツトレーナーとして就職したいなら、有資格者が有利になる
スポーツトレーナーの仕事に就くには、求人に応募するほか、人脈をたどって仕事に就くなどの選択肢があります。いずれにせよ、関連する資格を取得することで就職先の選択肢が広がることでしょう。
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スポーツトレーナーを目指すなら資格を取得しよう
スポーツトレーナーとしての専門的な知識を深める資格は複数あり、「国家資格」と「民間資格」の2つにわけられます。
国家資格は国の法律に基づいた試験や基準が設定されており、知識や技術が一定水準以上あると国が認める資格です。そのため、認知度や社会的な信頼性においては民間資格を上回ります。
一方、民間資格は、民間団体や企業が設ける独自の試験や基準を満たすことで取得できます。民間資格には多くの種類がありますが、内容によって社会的な認知度や信頼性に差が見られます。
今回は民間資格と国家資格にわけて、おすすめの資格をまとめました。
・理学療法士
・柔道整復師
・あん摩マッサージ指圧師
・鍼灸師(はり師、きゅう師)
▼おすすめの民間資格
・JSPO(日本スポーツ協会)公認アスレティックトレーナー
・JATAC-ATC(ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチックトレーナー)
・NATA-BOC公認アスレティックトレーナー
スポーツトレーナーに関する国家資格一覧
後述する民間資格は、あくまでスポーツトレーナーとしての知識を深めるものであり、治療に携わることはできません。スポーツ選手をサポートする際には、ケガや不調などの対応ができる医療系の国家資格があると安心です。
以下に紹介するいずれの資格も、文部科学省または厚生労働省が認定する養成校にて、3年または4年間学び、卒業後に国家試験に合格しなければなりません。難易度が高いものの、就職先においても、選択肢が大きく広がります。ただし、スポーツトレーナーとしての知識は、別に学ぶ必要があるでしょう。
スポーツトレーナーを目指すうえで役立つ「理学療法士」「柔道整復師」「あん摩マッサージ指圧師」「鍼灸師(はり師、きゅう師)」の4つの資格を紹介します。
理学療法士
理学療法士は、主に立つ、歩くといった機能面の回復を目的にリハビリを行う専門家です。一般的には病院やクリニック、老人保健施設などに勤務して、患者さんにリハビリを提供しています。
勤務先によって、スポーツのケガによるリハビリを担当できるため、スポーツトレーナーに通ずる経験を積むことができます。
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柔道整復師
柔道整復師は、骨折や捻挫、脱臼といった外傷に対して、応急処置や治療を行う施術の専門家です。一般的には、接骨院や整骨院、整形外科などに勤務して、患者さんの治療に携わります。
接骨院のなかには、地域のスポーツチームと提携して、選手のケアを行っている施設もあるため、トレーナーに通じる経験を得ると同時に、人脈作りが可能でしょう。
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あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師は「あん摩」「マッサージ」「指圧」といった手技を用いて、患者さんに施術を行う専門家です。
一般的には、鍼灸院や整体院、治療院、介護施設などで施術を行います。マッサージ師として名乗れる唯一の資格であり、スポーツマッサージを主として活動したい人は必須の資格です。
鍼灸師(はり師、きゅう師)
鍼灸師は「鍼(はり)」「灸(きゅう)」を用いて、体にあるツボを刺激して患者さんの自然治癒力を高めていく専門家です。※本来、鍼灸師という名称は「はり師」と「きゅう師」を有している人のことを指します
一般的には鍼灸院や接骨院、介護施設などで施術を行います。スポーツ選手の怪我に対して、鍼や灸が用いられることも多いため、環境によってはスポーツトレーナーとしての経験を積むことができるでしょう。
スポーツトレーナーに関する民間資格一覧
次に紹介する民間資格はスポーツトレーナーとしての専門知識を身につけるのに役立つものばかりです。ただし、スポーツトレーナー以外の仕事に応用しづらく、国家資格と比べて社会的な信頼性に欠けるのが難点です。トレーナー資格として代表的な民間資格を3つ紹介します。
JSPO(日本スポーツ協会)公認アスレティックトレーナー
JSPO(日本スポーツ協会)が設けているアスレティックトレーナーの資格です。
公認スポーツ指導者制度に基づき、JSPO公認スポーツドクター及び公認コーチとの緊密な協力のもとに、競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレティックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニング等にあたる。
JSPOの養成講習会を受講するには、満20歳以上が対象となり、関連団体の推薦とJSPOの認可が必要なため、誰でも受けられるわけではありません。スポーツトレーナーに通ずる仕事の実績を積んで推薦を受けるか、養成校を卒業して資格取得を目指す必要があります。
JATAC-ATC(ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチックトレーナー)
ジャパン・アスレチック・トレーナーズ(JATAC)が認定するもので、資格取得というよりも、同協会の正会員になることで名乗れる仕組みになっています。
正会員になる要件は以下のとおりです。
BOC-ATC(米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)
NATA(National Athletic Trainer’s Association:全米アスレティック・トレーナーズ協会)-BOC公認アスレティックトレーナーは、アメリカでは国家資格に認定される資格です。
アメリカに留学し、アスレティックトレーニング教育認定委員会によって認定された大学のカリキュラムを受講後、学士を取得することで、BOC Examという国家試験の受験資格を得られます。業界内での認知度は高いものの、日本では民間資格扱いになります。
スポーツトレーナーに関する資格を取得するメリット
スポーツトレーナーとして活動する際、資格は必須ではありません。ですが、資格取得にはさまざまなメリットがあります。スポーツトレーナーに関する資格を取得するメリットについてまとめました。
専門知識を身につけることができる
資格取得に向けて勉強することで、その資格に特化した専門的な知識を身につけられます。スポーツトレーナーに関連する資格は、養成校で講義を受けたり、講習会に参加したりする必要があり、集中して学ぶ環境も整っています。スポーツトレーナーとして即戦力で働くための知識を身につけることができるでしょう。
就職や仕事獲得に有利になる
資格は、自分の専門性やスキルの高さを客観的に証明するものです。無資格者との差別化が図れるため、就職や仕事獲得に有利になることも多いでしょう。就職先によっては資格が必須となる場合もあり、働き先の選択肢が広がります。
セルフブランディングにつながる
スポーツトレーナーとして、独立を考えている人も多いのではないでしょうか。企業に雇用されていれば、セルフブランディングは必要ありませんが、独立したら自分でアピールしながら、仕事を得ていかなければなりません。資格はセルフブランディングの一部として、アピールポイントになります。
スポーツトレーナー求められる知識とは?
スポーツトレーナーに関する資格はいくつかありますが、求められる土台となる知識は共通しています。スポーツトレーナーとして必須となる知識について確認しておきましょう。
体の解剖運動生理学
スポーツは体を使って動作を遂行することが基本です。そのため、解剖運動生理学の知識はスポーツトレーナーにとって必須となります。骨や筋肉の名称や位置、関節の構造を学ぶ解剖学、生体のメカニズムを学ぶ生理学、物体の運動を力学的な視点で捉える運動学の基礎は押さえておきましょう。
栄養学
スポーツをしている人を支えるためには、栄養のサポートも欠かせません。運動に必要なエネルギー源、効率的に筋肉をつけるために必要な栄養素など、選手の食事指導までサポートできるのが理想的です。
スポーツ障害
スポーツトレーナーは怪我の応急処置や復帰に向けたケアにも携わります。実際の現場ではスポーツで生じやすい怪我の種類、特徴、避けるべき動きなどを把握していないと適切なサポートはできません。スポーツ障害の土台となる基礎的な部分は押さえておきましょう。
今後スポーツトレーナーの需要は高まっていく
今後、スポーツトレーナーの需要は高まっていくことが予想されます。その理由として、以下のような点が挙げられます。
健康ブームでジムに通う人が増えている
最近では健康意識の高まりから、年齢を問わず、ジムに通う人が増えています。ジムに通う人が増えれば、指導をするスポーツトレーナーの需要も高まります。今後もスポーツクラブやパーソナルジムなど、スポーツトレーナーが必要となる場所は増えていくことでしょう。
部活やアマチュアチームなどでトレーナーの需要が増える
プロのスポーツチームでは専属トレーナーを配置していることがほとんどですが、最近では高校の部活動やアマチュアスポーツにおいても需要が増えています。年々競技レベルが向上していくことに比例して、サポートを手厚くしたいというチームも増えているからです。レベルを問わず、今後もスポーツトレーナーの需要は高まっていくと考えられます。
運動指導を必要とする高齢者が増えている
超高齢社会を迎え、高齢者数が増えています。健康維持や健康寿命の延伸を考える高齢者も多く、運動を始める人が増加することが予想されます。高齢者への運動指導を行う専門家としてもスポーツトレーナーは活躍が期待できます。高齢者を対象する運動指導は、今後も需要が高まっていくことになるでしょう。
資格取得は自分の将来を見据えて
スポーツトレーナーとして活躍したいなら、資格があると有利です。ただし、資格の種類は多く、どんな仕事に就きたいかによって役立つ資格が異なります。
民間資格と国家資格のいずれもスキルアップのためにおすすめの資格であることには変わりありません。両方の資格を取得すれば、より活躍の場が広がるでしょう。
将来のビジョンを見据ながら、自分に合った道を選択してみてはいかがでしょうか。

rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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