リハビリ前に確認! 作業療法士が知っておきたい正しい靴の履き方、選び方
公開日:2016.09.16 更新日:2016.09.26
リハビリを進めるにあたって、患者さんの靴選びはチェックしておきたいところ。軽作業であっても、足の動きを制限するようなポイントを見逃すわけにはいきません。身体を正しく支える靴の選び方と履き方について理解し、患者さんへの指導を強化しましょう。
作業を支える足元をチェックしましょう
リハビリの前の確認で意外と盲点になりがちなのが、患者さんの足元チェックです。作業中だけではなく、普段の生活を支えてくれる足だからこそ、ちょっとしたことで全身に影響するトラブルを招きます。
人間の最大の特徴である二足歩行。この動作を支えるために、くるぶしから下だけで、片足大小28本の骨があり、両足であれば52本もの骨で支えられています。人体の骨総数は206本前後といわれますから、全体の1/4を足の骨が占めていることがわかります。また、へそから下に全体の75%の筋肉があるとされ、足の筋力低下は全身の稼働力低下につながります。このように足の骨と筋肉の観点からも、足の制御は難しく、理想の状態を保つためのケアはとても大切なものです。しかしながら、日本人全体の8割の人が外反母趾や扁平足、かかとの骨の歪みや魚の目、タコ、浮き指など何らかの不調を抱えているといわれており、患者さんの状態も例外ではありません。日常生活の中で欠かせない靴だからこそ、足トラブルを改善し、リハビリを順調に進めてくれる靴選びを指導してみましょう。
サイズは合っている? 患者さんに伝えたい靴の選び方
作業療法を必要とする患者さんの多くは指先動作ができなかったり、片麻痺で自由に動かせなかったりして、靴ひもを結ぶことも難しい状況にあります。靴を履くのにもそれなりの動作が必要ですから、簡単に履けるようサイズが大きくぶかぶかの靴を選んでいる患者さんもいるようです。自立のためには仕方ない部分もありますが、そのままでは足からくるトラブルによって、さらに身体的な不調が起こってしまう可能性もあります。靴の履き方のリハビリを含め、患者さんに合った靴の選び方も伝えていきましょう。足のかたちはそれぞれ違いがあり、自分にぴったりの靴を探すのは意外と難しいものです。以下を参考に「良い靴」を探してみましょう。
- かかとがしっかりしているもの(ぎゅっと押してもかたちが崩れないもの)
- 鳩目(靴ひもをとおすところ)が5つ以上あるもの。
- 靴底にシャンク(ねじれ防止の金属)が入っており、ねじってもかたちが崩れないもの
(軽量の靴はリハビリや運動には不向きです。靴底がかたく、足指部分だけが曲がるものがよいでしょう) - 靴から中敷を取り出して足をのせてみたときに、足全体が中敷におさまるもの
(つま先に1.0cmほどの余裕をもつことが大切)
リハビリに取り入れたい靴の正しい履き方
靴の履き方も、大切な生活動作のひとつ。時間をとってリハビリを行いましょう。特に、靴ひもタイプの着脱は、指先の機能訓練と合わせて行うのがおすすめです。
正しい靴の履き方
つま先を30度ほどあげて、足のかかとを靴のかかとにぴたっと合わせる。
かかとをしっかりつけ、固定することで指は圧迫されません。
靴が足の甲にぴったりつくよう、痛くならない程度で靴の紐をきつめに締める。
指先の細かい作業が難しい患者さんには、マジックベルトタイプの靴を提案してみましょう。足にしっかりフィットさせるためには、マジックテープが2本以上あるものを選ぶのがポイントです。
足の運動を取り入れてみましょう
靴の履き方と一緒に、簡単な足の運動をすることもおすすめです。足裏や指先の筋肉が使われることで、足のアーチ崩れを防ぎます。また、足指の感度が上がり、バランス感覚も向上します。
取り入れやすい体操として、足指じゃんけんがあります。「グーチョキパー」と10回1セットを目安に行い、ゲーム感覚で楽しく運動が行えます。最初はできない方でも、練習することで少しずつ足の機能が回復します。足の指を動かすだけでも刺激になりますので、手を使って足指を曲げたり伸ばしたりするだけでもよいでしょう。動かしにくい小指は寝指や浮き指になることも多いため、重点的に行ってみてください。ただし、足がつりやすい人は無理をせず、麻痺の方には療法士の手技として足先を刺激してみましょう。
自分自身の靴のチェックも忘れずに
身体を支える足を安定させることは、リハビリでも大切な要素です。患者さんだけではなく、自身の靴選びもしっかり行いましょう。いい靴を選び、足先を動かすことで足の疲れを軽減させてくれるかもしれません。患者さんといっしょに健康的な足を手に入れましょう。
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