呼吸療法認定士とはどんな資格?取得メリットと認定までの流れ
公開日:2022.03.11
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
高齢化が進む一方、急性期や在宅対応などの医療が進歩するなかで、呼吸療法の重要性が注目されるようになりました。「呼吸療法認定士」は、呼吸管理やリハビリなどを習得した人が認定される資格です。
理学療法士や作業療法士のなかには、呼吸療法認定士の資格を取得し、呼吸療法の知識や技術を深めたいという方もいるでしょう。そこで今回は、呼吸療法認定士の資格を取得するメリットを説明した上で、資格の取得方法や更新制度についてお伝えします。
目次
3学会合同呼吸療法認定士(呼吸療法認定士)とは?
呼吸療法認定士は「特定非営利活動法人日本胸部外科学会」「一般社団法人日本呼吸器学会」「公益社団法人日本麻酔科学会」が合同で創設した認定資格であり、正式には「3学会合同呼吸療法認定士」といいます。
医療技術の進歩や人口の高齢化にともない、急性期や在宅医療の分野を中心に、重症者に対する呼吸療法が重要視されるようになりました。しかし、多くの医療介護施設では、吸入療法や酸素療法、呼吸理学療法、人工呼吸といった呼吸療法に精通した医療従事者が不足しているのが現状です。
患者さんが必要な治療を受けられるように、呼吸療法に関する専門的な知識・技術を持つ「呼吸療法認定士」のニーズは高く、今後の増加が期待されています。
理学療法士・作業療法士が呼吸療法認定士の資格を取得するメリット
呼吸療法認定士の認定試験を実施する(公財)医療機器センターによると、2021年10月現在、呼吸療法認定士の資格を持つ理学療法士は15,551名、作業療法士は1,724名となっています。
では理学療法士・作業療法士が「呼吸療法認定士」の資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか? 続いて、呼吸療法認定士の資格を取得するメリットを紹介します。
リスク管理を徹底し、安全で効果的なリハビリができる
患者さんの病態を把握し、運動強度を適切に調整するためには、呼吸機能に関する知識が不可欠です。例えば、人工呼吸器を装着した患者さんのリハビリを担当するケースで考えてみましょう。
呼吸機能の視点で血液ガスデータを読み取ることができれば、「患者さんの離床を促すべきか」どうかを適切に判断し、しっかりと評価した上で、座位や立位・歩行訓練などの運動強度の高いリハビリを選択できるようになります。もし、呼吸機能を正確に評価できずにリハビリを進めてしまうと、病態悪化のリスクを恐れて十分なリハビリを提供できないかもしれません。
理学療法士・作業療法士として呼吸療法認定士の資格を取得すれば、リスクを最小限に留めながら、患者さんに効果的なリハビリが提供できます。
給料アップや呼吸ケアサポートチームへの参加が期待できる
職場によっては、呼吸療法認定士の資格取得が待遇面にプラスに働く場合があります。例えば資格手当として、基本給に毎月数千円が加算されるなど、収入アップにつながることもあるでしょう。また、人工呼吸管理や呼吸ケアを集中的におこなう呼吸ケアサポートチームに参加できるようになる職場もあり、やりがい向上につながります。
いずれにしても、呼吸療法認定士の資格を保持していれば、呼吸療法に関する専門的な知識・技術を持つ理学療法士・作業療法士として、自分の強みを増やすことができるでしょう。
呼吸療法認定士の資格を取得する方法
理学療法士・作業療法士が呼吸療法認定士の資格を取得するには、実務経験年数が2年以上あることに加え、次の3つのステップが必要です。
②「3学会呼吸療法認定士認定委員会」が主催する認定講習会を修了する
③「3学会呼吸療法認定士認定委員会」が主催する認定試験に合格する
講習会・認定試験の内容
呼吸療法認定士の資格取得の条件となる学会や講習会では、呼吸療法の歴史から呼吸機能の解剖生理・検査やデータの解釈・呼吸リハビリなど、基礎から実践的な知識までさまざまな内容を学びます。その他、関連する知識や技術も学べますが、認定試験には「3学会呼吸療法認定士認定委員会が主催する認定講習会」の講義内容から出題されます。
実際に受験する時は、認定講習会の講義内容をしっかりと復習して認定試験に臨みましょう。なお、2020年の呼吸療法認定士認定試験の合格率は69.1%となっています。
呼吸療法認定士は5年ごとに更新が必要
理学療法士・作業療法士免許と異なり、呼吸療法認定士の資格は5年ごとに更新が必要です。資格更新の条件として、必要なポイントを満たすことになります。
具体的には下記のいずれかの方法により、総得点50点以上を獲得する必要があります。
・認定委員会が主催する更新のための講習会に出席
・呼吸療法に関連した医学雑誌や学会誌に寄稿
例えば、委員会が認める学会(総会または地方会)への出席では20点、講師として講義・講演した場合には30点などが定められています。
リスクを最小限に抑えながら、効果的なリハビリを
呼吸器疾患の患者さんはもちろん、高齢者や身体障がい児・者のリハビリでも呼吸療法の知識や技術が求められます。呼吸状態を十分把握せずに訓練すれば、患者さんの病態を悪化させていまいかねず、リスクを恐れて負荷の低い訓練だけをしていても、リハビリの効果が上がりません。患者さんの呼吸機能をしっかりモニタリングできれば、理学療法士・作業療法士として、より積極的に効果的なリハビリが提供できるでしょう。
呼吸療法について、知識や技術を深めたい方は、呼吸療法認定士の資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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参考
「3学会合同呼吸療法認定士」認定制度(公益財団法人医療機器センター)

田口 昇平
作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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