表現力アップ! 言語聴覚士への表情筋トレーニングのススメ
公開日:2016.09.23 更新日:2016.10.03
言語聴覚士は、言葉だけでのコミュニケーションが難しい人たちとよく関わります。会話以外のアプローチとして、表情を通してのコミュニケーションスキルは必須といえるのではないでしょうか? 顔の筋肉を鍛え、表情を豊かにすることで、患者さんへの伝わり方も変わりコミュニケーションもスムーズになるはず。表現を豊かにする表情筋トレーニングをはじめましょう!
伝わる「表情」になっていますか?
コミュニケーションといえば、言葉による理解と認知を重視しがちです。しかし実際には、話し手が聞き手に与える影響には言葉以外の要素が多く含まれています。ビジネス書でよく取り上げられる心理学者アルバート・メラビアン博士の研究によると、話し手に対して「言葉以外の非言語的な要素で93%の印象が決まってしまう」とのこと。好悪といった感情と態度についての研究で、態度と言葉が矛盾する場合においてのものなので、全てに適用できるわけではないですが、裏を返せば言葉による影響は思っているより小さいのです。この研究の対象は健常者であり、言語聴覚士が関わる中で言葉の理解に遅れや障害のある人たちを思えば、さらに低い数字になるのが想定できるのではないでしょうか?
また、印象づける非言語的要素のうち、顔の表情としぐさなどの視覚情報によるものが55%、声のトーンなどの聴覚情報が38%と報告されています。健常者にとっても視覚情報による影響は50%を超えることから、話し手の表情は、言葉の通じにくい相手にとってはかなり重要な要素として受け取られるはず。言葉が伝わりづらい分、表情やしぐさに敏感になるのは当然のことなのです。
そうした背景を踏まえ、改めてリハビリ中の自分の表情を思い返してみましょう。笑顔を意識しているつもりでも、寒さで顔がこわばったり、嫌なことがあって、知らず知らずに不機嫌な思いが表情に出てしまったりしているかもしれません。伝えたい内容とは裏腹に、顔は違うメッセージを出しているかもしれません。鏡を見ながら、目的に合った表情がキープできるようにトレーニングを行ってみましょう。
顔のウォーミングアップでよりよいセラピーに
言葉の通じにくい相手に対して、わかりやすく伝えるスキルは言語聴覚士として腕の見せどころ。環境に左右されずよりよいコンディションを保ちながら、非言語的メッセージを使ったコミュニケーションを行いたいものです。そこでおすすめなのが、表情筋トレーニング。
顔の筋肉をトレーニングすることで、表情筋が動きやすくなります。毎日続ければ、より表情が豊かになり、伝えたいメッセージを明確に表せるようになるでしょう。毎朝の習慣に、そしてリハビリ前のウォーミングアップに、取り入れてみてはいかがでしょう。
1回5分の表情筋トレーニングを
表情筋トレーニングは1回につき5分。自宅でも勤務先でも、スキマ時間に行ってみましょう。
- 前頭筋、皺眉筋・咬筋、胸鎖乳突筋を鍛える
顔は正面に向けたまま、目線をできるだけ上にします。額のシワをつくりたくない人は、手を額にあて、額にシワがよらないようにおさえるとよいでしょう。
そのまま、「イ」の口をつくり、耳の付け根から鎖骨に向かって伸びる胸鎖乳突筋を縮めるように引っ張ります。このとき、上下の歯が当たらないようにすること。これで10秒間キープ。 - 眼輪筋、皺眉筋を鍛える&側頭筋、咬筋、小頬骨筋、大頬骨筋を鍛える
目を力いっぱい見開きます。このときも、気になる人は額をおさえます。
同時に左の口角だけを手を使わず上に引っ張ります。そのまま10秒間キープ。続けて、右の口角も同様に行います。 - 眼輪筋を鍛える&口輪筋、オトガイ筋を鍛える
目をギュッと閉じます。目じりのシワが気になる人は手でシワを伸ばしながら。
そのまま「ウ」の口をして、口の周りに力を入れます。そのまま10秒間キープ。 - 眼輪筋を鍛える &咬筋、口輪筋を鍛える
目は閉じたまま、今度は「オ」の口をして、口の周りに力を入れる。このまま10秒間キープ。 - ほほの内側にある筋肉口輪筋を鍛える
自然な状態で軽く口を閉じ、上唇と下唇を内側に丸め込みます。口をむすんでほうれい線を意識しながらU字型に口角を上げます。そのまま10秒間キープ。
1日3回の習慣を!
表情筋トレーニングは1日3回程度を目安に継続させるのが理想です。表情筋トレーニングを行うことで表情が豊かになるだけでなく、顔の血流やリンパの流れがよくなります。女性にとっては顔のたるみをひきしめ、若々しくなるといううれしい効果も! 患者さんに伝わる表情づくりを意識しながら、非言語要素のスキルを高めていきたいですね。
【参考URL】
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