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作業療法士が年収600万円を目指すには?年収アップのための選択肢

公開日:2022.05.16

作業療法士として年収600万円を目指すには?収入の実態と年収アップの方法を紹介

文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)

身体的・精神的負担が大きい専門職である作業療法士。苦労して取得した国家資格でもあり、キャリアを重ねればそれなりの年収アップを目指したくなるものです。

一般的に、仕事とプライベートを両立し、経済的に余裕のある生活を送るには、年収600万円がひとつの目安といわれます。とはいえ、「仕事にやりがいはあるけれど給料が少ない……」といった、現役作業療法士からの切実な声も聞こえます。

そこで今回は作業療法士の収入の実態を解説するとともに、年収600万円を目指した年収アップの方法についてお伝えします。

作業療法士の平均年収は約420万円

まずは作業療法士の平均年収について、年代別に確認してみましょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2020年度)」によると、作業療法士を含むコメディカル(※1)の平均月収は29万600円。年間賞与などを加えた平均年収は418万9,400円(※2)で、大まかな目安として約420万円となります。

年代別にみると、作業療法士の平均年収は50~54歳の約570万円がピークであり、600万円にはあと一歩届いていない状況です。

※1:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士が含まれる
※2:平均勤続年数6.5年、平均年齢33.9歳の数値

【年代別】作業療法士の平均年収

平均年齢
(歳)
勤続年数 きまって支給する現金給与額
(月額)
年間賞与 その他特別給与額
(年額)
平均年収
20-24歳 23.5 1.5 24.3万円 39.1万円 330.8万円
25-29歳 27.4 3.8 26.1万円 66.2万円 380.0万円
30-34歳 32.5 5.9 28.6万円 67.0万円 409.7万円
35-39歳 37.4 8.7 30.9万円 82.9万円 454.0万円
40-44歳 42.5 10.2 33.4万円 84.7万円 485.8万円
45-49歳 47.3 11.9 35.1万円 92.5万円 513.2万円
50-54歳 52.4 16.1 38.8万円 107.6万円 573.6万円
55-59歳 57.2 18.2 38.5万円 104.9万円 566.4万円
60-64歳 62 16.1 31.7万円 65.0万円 445.9万円

※理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士を含む数値
※平均年収=きまって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額
※百円単位四捨五入
参照:令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

働く場所や働き方を工夫すれば、作業療法士も年収600万円を目指せる

上で示した表をみると、キャリアを重ねても平均年収は600万円に満たない状況です。しかし、作業療法士も年収600万円を目指すことが可能です。

というのも作業療法士の年収は、勤務先の経営状況や自身の働き方により、大きく変わるからです。例えば、筆者自身の経験に基づくと、リハビリ病院として同じような施設基準を届け出ている医療機関であれば、経営状況の良し悪しで、作業療法士の年収にも数百万円の違いがあります。また、複数の医療・介護事業所をかけ持ち、収入アップを図っているという作業療法士も少なくありません。

このように、作業療法士は資格をうまく活かして働く場所や方法を工夫すれば、高収入も目指すことができるのです。ただし、平均年収よりも約200万円高い金額を目指すとなれば、自身のキャリアや働き方をしっかりと考える必要があります。

作業療法士として年収600万円を目指すための4つの方法

では作業療法士として年収600万円を目指すには、どうすればよいのでしょうか?ここからは、年収600万円を目指すための具体的な方法を4つ紹介します。

1.勤務先で役職を目指す

現在の勤務先で収入アップを考えるなら、役職を目指す方法があります。医療機関・介護施設の事務長やリハビリ部・介護課の部長、課長などになれば、月額数万円の役職手当がつきます。

それに加え、勤続年数に伴った昇給と年間賞与を含めば、数十万~数百万円の年収アップが期待できるでしょう。

もちろん、役職に昇進すればリハビリの実務のほかマネジメント業務も担うことになります。役職を目指すなら現場の仕事だけでなく、事業所経営や後進育成といったマネージャーとしての知識を研鑽する努力も必要です。

2.副業をする

近年、デイサービスやデイケアなどの介護施設では、機能訓練に加え、生活能力向上のリハビリが重要視される傾向にあり、作業療法士の需要が増加しています。年収アップのためには、休日を利用して、介護施設で副業をするのもひとつの方法です。非常勤作業療法士の求人のなかには、時給2,000円を上回る募集もありました。(※2022年2月28日時点の情報です)

ただし、勤務先により、副業を禁止しているケースもあるので注意が必要です。勤務先が副業禁止ではないことを、事前に確認しておきましょう。また、トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則をチェックしたり、上司に確認をとったりしてから副業をはじめましょう。

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3.転職をする

現在の勤務先で、大幅な収入アップが見込めないのであれば、給料条件の良い職場への転職を検討するのもよいでしょう。給料面を重視するなら「訪問リハビリ分野」への転職がおすすめです。なぜなら訪問リハビリ分野は、訪問件数に応じてインセンティブ(報酬を上乗せする制度)を設けている職場が多く、作業療法士の年収が高くなる傾向にあるからです。

また、近年では、認知症や精神疾患を持つ利用者さんが増え、作業療法士による心身両面からのアプローチが求められています。収入アップはもちろんですが、利用者さんの動向を踏まえると、訪問リハビリは作業療法士としてのスキルを存分に活かせる分野といえるでしょう。

4.起業する

作業療法そのものを提供するような開業はできませんが、健康・スポーツ美容分野等であれば、作業療法士も開業することができます。例えば、整体院を開院したり、リラクゼーションサロンを運営したりする方法があります。最近では、キャリアを活かして、個人で起業する作業療法士も増えています。

個人で起業すると、サービス価格を自由に設定できるため、事業が成功すれば年収アップが期待できます。ただし、事業が失敗すれば、かえって年収が下がってしまいかねません。開業を目指すなら、事業失敗のリスクを最小限にするために、しっかりとした計画性を持って臨みましょう。

臨床業務がおろそかにならないよう、計画的な年収アップを

年収600万円となれば、経済的に余裕のある生活が送れることでしょう。しかし、転職や起業活動などで収入アップに注力しすぎると、本業に集中しづらく、臨床業務がおろそかになるかもしれません。

副業が忙しければ、心身の負担も大きくなるでしょう。「心ここにあらず」といった状態では、患者さんに対して十分にコミュニケーションがとれず、結果、効果的なリハビリができなくなってしまいます。

年収アップを目指す際は、本業に支障がないように、無理のない範囲で進めることが大切です。作業療法士として、自分のキャリアをしっかりと積み重ねながら年収アップを目指しましょう。

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参考

厚生労働省|令和2年賃金構造基本統計調査
厚生労働省|令和3年度介護報酬改定の主な事項について

田口 昇平

田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。

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