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痛みが取れない!? 失感情症から慢性疼痛の原因を考える2016.10.03

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骨折や手術後から数ヵ月が経過し、創部は完治しているはずなのに、患者さんが痛みを訴え続けるケースがあります。実際に気づきにくい炎症が慢性化している可能性もありますが、もしかしたら「失感情症」と呼ばれる心身症が影響しているのかもしれません。器質的、機能的疾患による痛みを基礎として発症した慢性疼痛の中でも、継時的に心理的要素が持続、増悪することで、難治性の疼痛となることがあります。こうした症状を訴える患者さんについて、考えられる要因を探ってみましょう。

疼痛の定義

まずは痛み、疼痛の定義について確認しましょう。
国際疼痛学会によると、「痛みとは実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験」と定義されています。つまり、痛みとは不快な「感覚系」と「情動系」に分けて考えることができます。感覚系とは、各感覚受容器から伝達される痛み刺激であり、情動系は感情から発生するものです。この情動系の痛みが、慢性疼痛を考えるうえできわめて重要であり、慢性疼痛を伴う患者さんには失感情症が伴っていると考えられるとされています。

失感情症とは

では失感情症とはどういったものでしょうか。
失感情症とは、

  1. 自分の感情を言葉で表現することや、情動が喚起された場合に伴う、感情と身体感覚を区別することが困難な状態
  2. 感情を他者に言葉で伝えることが困難な状態
  3. 空想力や想像力が低下、もしくは制限された状態
  4. 自己の内面に比べ、より刺激のある外的な事実に関心が向かう状態

以上、4つに特徴づけられる人格特性が当てはまります。例えるなら、自分への感情の気づきが減弱した状態と言い換えることができるかもしれません。失感情症の患者さんは情動の表現や葛藤の解消困難、共感性の低下といった状態にあります。こうした失感情症の患者さんにおいて、他人やセラピストとのコミュニケーションがうまく行えていない場合、痛みを訴えることが唯一の会話の方法として機能することも考えられます。周囲との交流手段として疼痛行動が強化されていき、痛みが持続してしまうことがあるようです。

こうした理由から、失感情症の患者さんには、

  • 重要な人物からの注目、関心、擁護的関わりを求める
  • 家庭、または社会生活への再適応の回避
  • 怒り、不満、罪悪感といった心理的苦痛の抑圧

などの特徴的な行動が見られます。

こうした不安定な状態は情動的な側面から見れば、社会的な孤立感や仲間外れにされているという感覚、劣等感などの苦しみや痛みが背景にあると考えられます。また、器質的な側面からとらえた場合、脳の『身体の痛み』という不快な情動処理を行う部位と、『社会的痛み』からくる不快な情動処理を行う部位とが、共有になっていることも原因のひとつかもしれません。失感情症傾向の強い患者さんが、その両側面の痛みを同時期に持った場合、それぞれの不快な情動がどこからきているか、認知的に理解して区別することは困難になっているといえるでしょう。

慢性疼痛を考える

以上のことから、慢性疼痛の治療は痛みというものを『痛み感覚』+『痛みに付随する情動的な不快感』+『社会的な苦痛の不快感』ととらえ、生物、心理、社会的視点で分けて考えることが重要といえます。
この3つの原因から何が一番の問題点なのか全体を評価し、その問題点に優先的にアプローチしていくことによって、早期に患者さんの痛みを取り除くことが可能になることでしょう。治療においては、患者さんの自己否定的な感情や、種々の疼痛体験を誠実に受け止め、そこから得た情報から問題点の解消を図るべく、内面の意識を調整していくことが必要です。

よりよく生きるために

痛みは器質的なものだけではなく、患者さんに認知面や自身の行動パターン、他者との関係性や、生活様式を考え直す必要性を伝えるサインでもあります。痛みを一概に悪いものだと考えず、上手に“活用”し、リハビリに生かしていきたいですね。

 

【参考URL】

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