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セラピストが知っておきたい「せん妄」の原因と患者との関わり方

公開日:2023.01.27 更新日:2023.01.30

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文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

せん妄とは何か?

せん妄とは、何らかの原因により脳機能が低下し、軽度の意識障害を起こした状態を指します。高齢者に多く発症しますが、高齢であるだけではなく、もともと慢性的な脳疾患をお持ちの方にも発症しやすいと言われています。

長時間にわたる手術の後にICUへ移る、あるいはICUのような閉鎖的な空間から病棟へ移動したときなどに、せん妄をきたすケースも少なくないという報告があります。身体機能だけではなく、環境の変化やそれに伴う大きなストレスも、せん妄を引き起こす誘因となり得るということです。場合によっては、錯乱状態(幻覚、妄想、暴言、興奮状態)に陥りますが、原因がわかり、適切に対応すれば、数日から数週間で落ち着くのが通常です。

せん妄は高齢者に多いため、認知症に伴う症状と混同されやすいのですが、認知症の診断基準では、せん妄を除外するのが必須条件となっています。緩徐にあらわれる認知症に伴う症状と異なり、注意や記憶、見当識の障害、行動・心理面の問題が急激に悪化した場合は、一過性である「せん妄」である可能性が高いです。

作業療法士の国家試験では、せん妄について以下のような問題が出題されています。

《問題》入院患者のせん妄発症を予防するための取り組みとして適切なのはどれか

【作業療法士】第56回 午前 47
入院患者のせん妄発症を予防するための取り組みとして適切なのはどれか。2つ選べ。

<選択肢>

  1. 1. 処方内容を確認する。
  2. 2. 家族との面会は謝絶する。
  3. 3. 病室移動の頻度を増やす。
  4. 4. 多職種で関わるのを避ける。
  5. 5. 本人が見える位置に時計を置く。

解答と解説

正解:1,5

せん妄は、薬剤の副作用や離脱症状によっても誘発されます。そのため、薬剤による影響を医師・薬剤師とともに確認しておくことがせん妄の予防に欠かせません。また、せん妄の症状として表れやすい見当識障害を防ぐためにも、時計やカレンダーを本人が見える位置に置いておくことも有効な手段のひとつです。

せん妄予防と改善に向けたケアでは、本人の不安をどれだけ回避できるかが重視されます。なかでも、家族や医療者とのコミュニケーションは大切と言われています。そのため、「2.家族との面談は謝絶する」は不適切です。また、「3.病室移動の頻度を増やす」のは、環境の変化によって生じるストレスがせん妄を誘発しやすくなるので、避けたほうが良いでしょう。

実務での活かし方

せん妄を有する患者に対しては、適度な刺激や、不安や恐怖を誘発するような言動は厳禁です。否定的な言葉はできるだけ避け、安心感を与えるような接し方を心がけることなどが肝心です。ご本人の訴えに真摯に耳を傾け、望んでいることや感じていることを見極めましょう。興奮が激しい場合は、いったん離れて落ち着くまで待ったほうが良いこともあります。セラピストとして留意するだけではなく、ご家族にも理解と協力を求めることも必要です。

せん妄ケアの統一化を図るためにも、多職種でのチームアプローチが重要になります。セラピストもチームの一員として、リハビリの成果や気づきなどを多職種間で共有したり、ご本人やご家族の不安軽減に努めたりする役割が必要になることもあるでしょう。こうしたチームアプローチにより、せん妄の兆候や変化を早期に発見し、環境調整や早期治療につなげることが可能になります。

[出典・参照]
稲本俊,他:術後せん妄の発症状況とそれに対する看護ケアについての臨床的研究.京都大学医療技術短期大学部紀要,第21号,2001,11-23.

中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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