言語聴覚士は残業が多い?STのリアルな働き方とお休み事情を紹介
公開日:2024.08.12
文:菅野えりさ(言語聴覚士)
言語聴覚士の勤務先には、学校、保健所、研究・教育機関などがありますが、なかでも多いのが、病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、老人福祉施設などの医療機関です。
この記事では、医療機関である病院と訪問看護ステーションに勤めたことがある私が、それぞれの勤務先での言語聴覚士の残業時間、年間休日、1日のスケジュールなどをまとめてみました。
それぞれの働き方の違いを知って、ぜひ勤務先選びの参考にしてみてください。
言語聴覚士の残業は月5時間程度?
そもそも、言語聴覚士はどれくらい残業をしているのでしょうか。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の調査によると、言語聴覚士を含むリハビリ職の残業時間は月に5時間程度となっています。
しかし実際に働いてみると、勤務先によって残業時間はかなり異なっています。そこで、私が経験した勤務先別の残業時間とその理由についてまとめてみました。
回復期は残業が多く維持期は定時帰宅が多い
残業が多い職場かどうかは、勤務先の状況や方針などによってかなり違うと思います。そのため、これから述べるのはあくまでも私自身の経験として捉えていただけたらと思います。
私は4つの病院と1つの訪問看護ステーションに勤めてきました。そのなかで、一番残業が多かったのは回復期リハビリテーション病院でした。
私が勤務していた回復期リハビリテーション病院では担当の患者さんの数が多く、カルテ記入が業務時間内に終わらない状態でした。そのため教材準備も業務時間に終えることはほぼできませんでした。さらに、リハビリ科内の勉強会が週1〜2回ありました。そのため、定時で帰れるのは外部の研修会があるときか、忘年会などのイベントがあるときのいずれかでした。
一方で、残業がほとんどなかったのは療養型病院でした。寝たきりの患者さんがほとんどなので教材準備やカルテ記入も時間がかからず、ほぼ定時で帰宅できていました。
訪問看護ステーションは訪問件数が少なめであれば、合間に記録することができるので、毎日の残業はそれほど多くはありませんでした。しかし、月末から月のはじめにかけては書類作成業務が多く、その時期は1日1〜2時間ほど残業していました。
言語聴覚士の年間休日数は平均110日前後
次に言語聴覚士の年間休日日数ですが、110日ほどといわれています。
110日は毎週2日休みがあり、そのほかに年間1週間ほど休みがあるイメージです。そのため、基本的に祝日は休みではありません。
ただし、これも勤務先によって異なってきます。次に私の勤務先の例を紹介します。
勤務先による休日数の違い
私が勤めてきた病院の年間休日数は110〜120日でした。120日休みがあると完全週休2日+祝日休みのイメージです。
一方で、訪問看護ステーションは平日の勤務が基本で、年末年始の休みも確保されているところが多いので、年間休日は120日以上のところが多く、私が勤務していた訪問看護ステーションも年間休日数はそれくらいでした。
勤務先で少し変わる言語聴覚士の1日の働き方
次に具体的な1日のスケジュールを見ていきます。実際に私が働いていた病院と訪問看護ステーションの1日をご紹介します。
回復期病院の1日のスケジュール
回復期病院の1日のスケジュールの1例は次のとおりです。
8:30 | 朝礼 |
---|---|
9:00~ | 言語訓練などを4~5名の患者さんに行う |
12:00~ | 嚥下訓練など1~3名(看護師と連携が必須)の患者さんに行う |
13:30~14:00 | お昼休憩 |
14:00~ | カンファレンスまたは言語訓練など |
17:00 | 終業 |
~18:00 | カルテ記入など残業 |
*適宜嚥下造影検査などあり
**全体・部門別の勉強会が週1回あり、その場合は20時くらいまで残業することもあり
療養型病院の1日のスケジュール
療養型病院の1日のスケジュールの1例は次のとおりです。
8:30 | 朝礼 |
---|---|
9:00 | 言語訓練などを4~5名の患者さんに行う |
12:00~ | 嚥下訓練など1~3名(看護師と連携が必須)の患者さんに行う |
13:00~14:00 | お昼休憩 |
14:00~ | カンファレンスまたは言語訓練など |
16:30 | 病棟業務終了 |
17:00 | カルテ記入し終業 |
*月1回程度研修会などあり
**基本残業なし
訪問看護ステーションの1日のスケジュール
訪問看護ステーションの1日のスケジュールの1例は次のとおりです。
8時半 | 朝礼 |
---|---|
9時~ | 言語訓練など2~3名の患者さんに行う |
12時~13時 | お昼休憩 |
13時~ | 言語訓練など2~3名の患者さんに行う |
16時 | 事務所に帰宅 |
17時 | 記録し掃除などして終業 |
*直行直帰あり
**月末は書類作成業務により1~2時間残業あり
勤務先によって1日のスケジュールが大きく変わることはありませんが、教材準備や書類作成などの時間が大きく異なることがあり、それによって残業時間も変わってきます。
言語聴覚士が残業を減らす工夫
自分のやりたいことをやれる勤務先でも、残業が続くとさすがに疲れてしまいます。
そこでここからは、私が残業を減らすために工夫していたことをいくつかご紹介します。
タブレットの活用
言語聴覚士はリハビリのために教材を準備する必要がありますが、私はタブレットを活用して教材準備の手間を削減していました。
病院勤務だと使用が難しい場合がありますが、訪問看護ステーションに勤めていたときは大変助かりました。
訪問看護ステーションではその日に使う物をすべて持って移動しなければいけないため、持ち物が多くなると重く管理が大変です。その点、タブレットであれば軽くて済み、データを入れておけばいつでも取り出せるので便利でした。
管理者との相談
上のタブレットの利用ともリンクしますが、管理者との相談はとても重要になります。言語聴覚士は教材作成という作業があるため、その準備にどれくらいの時間をかけてしているのかを知ってもらうことで、タブレット購入の理解へとつなげることが残業時間削減の近道になります。
テンプレートの作成
さらに残業時間を減らすためにはテンプレートの作成も有効です。
リハビリではさまざまな項目で評価することが大切になりますが、項目などを列挙したテンプレートをつくっておくことでアウトプットが早くなり、訓練結果の分析もしやすくなります。
まとめ:人生の充実のために仕事とプライベートの両立を
言語聴覚士の残業時間や休日日数、1日のスケジュールなどを見てきました。
いくら言語聴覚士の仕事が好きだとしても、残業が多かったり休みが少な過ぎたりすると、疲れがたまるだけでなく、プライベートの時間も少なくなり、人生の充実度も低くなってしまいます。
そうならないためにも、ぜひ業務の効率化を考えましょう。業務時間内に終了できるように現状について管理者と話し合いをもち、業務時間内に教材作成するなどの配慮を得られると、残業も少なくなるはずです。
もし話し合いでも現状が変わらない場合は、残業が少ない職場に転職するのも1つの選択肢として考えてもよいでしょう。
充実した人生を送るためにも、仕事とプライベートのバランスを常に考えていきたいところです。
菅野えりさ(言語聴覚士)
病院や訪問看護ステーションなどに13年間以上勤務。自分の経験が誰かの参考になればと思い、病院勤務のかたわらライターとしても活動中。今後、「絵本カフェ兼ことばの相談室」を開くべく奮闘中。
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