懸垂ができない原因と対策を徹底解説!すごい効果を引き出す正しいやり方とは?
公開日:2024.12.16
文:山﨑志緒(理学療法士)
懸垂は、力強く引き締まった逆三角形の体幹を手に入れたい方におすすめのトレーニングです。 しかし、初心者には負荷の強いトレーニングなので、なかなかうまくできない方も多いでしょう。
この記事では、懸垂の正しいやり方と、懸垂がうまくできない原因とその改善方法を詳しく解説します。まだ懸垂ができない方でも徐々にできるようになるためのトレーニング法も紹介していますので、ぜひ実践して力強い上半身を手に入れましょう。
懸垂のすごい効果と鍛えられる部位
トレーニングのなかでもポピュラーな懸垂。実は、握力だけでなく全身の筋肉を鍛える効果があることを、ご存知でしょうか。とくに、懸垂は背中の大きな筋肉「広背筋」を中心とした上半身の筋力アップだけでなく、姿勢改善や代謝アップなど、さまざまな点で健康な体づくりに関与する効果を得ることができます。
懸垂は、引き締まった逆三角形の体型をつくりたい方、猫背を改善したい方、基礎代謝を上げシェイプアップしたい方におすすめです。懸垂で鍛えられる主な筋肉は広背筋、僧帽筋、上腕二頭筋です。
懸垂の主役は広背筋と僧帽筋
広背筋は背中を覆う大きな筋肉です。肩関節を伸展させ、腕を引き寄せる動作で、大胸筋と協力して逆三角形の上半身をつくります。肩幅より広いグリップで行うワイドグリップ懸垂で力を発揮します。
僧帽筋は背中の上部に広く付着しています。上部・中部・下部の筋線維にわかれ、肩甲骨を内側に引き寄せることが重要な作用です。肩甲骨を引き寄せることは、広背筋が力を発揮しやすい姿勢を保つためにも重要です。
上腕二頭筋と菱形筋は重要なサポーター
懸垂において、二の腕の上腕二頭筋と肩甲骨に付着する菱形筋は補助的な存在ですが、効果的なトレーニングを行ううえでは重要な筋肉です。
上腕二頭筋は主に、逆手で肩幅より狭い握りで懸垂を行う際に力を発揮します。菱形筋は握り方に関わらず、肩甲骨を引き寄せ、広背筋や僧帽筋が効率良く働けるようにサポートします。
懸垂の正しいやり方・フォーム
懸垂の効果を最大限に引き出すには、正しいフォームの習得が重要なポイントです。以下に、基本的なやり方と3つのチェックポイントをまとめました。
正しいフォーム
1.手のひらが前を向く順手で肩幅より広めにバーを握る。
2.肩甲骨を寄せながら、肘を曲げて体を引き上げる。あごがバーの高さに達したら、一瞬止まる。
3.広背筋を意識しながら、ゆっくりと1の姿勢に戻す。
3つのチェックポイント
1. 肩甲骨の引き寄せ
肩がすくまないように、肩甲骨を背骨の方向に引き寄せる。
2. 姿勢の維持
腹筋を意識して、体幹を真っすぐに保つ。
3. あごの位置
あごを前に突き出さず、首を反らせないようにし、頭から足まで一直線を意識する。
懸垂ができない原因とは
懸垂は自身の体重を引き上げる、重い負荷のかかるトレーニングであるため、初めて取り組む方にとっては、難易度の高いトレーニングです。懸垂ができない方に多く見られる原因と、その対策をまとめました。
握力不足
懸垂に必要な握力が不足していると、バーをしっかり握れず、十分に体を引き上げることができません。握力を強化するためには、ハンドグリップでの握力トレーニングや、ダンベルなどを使った前腕トレーニングが効果的です。握力を高めることで、懸垂のパフォーマンスが向上します。
広背筋の筋力不足
懸垂では、広背筋が主に働きます。広背筋が弱いと、ほかの筋肉による代償が強くなり、フォームがくずれることがあります。広背筋を強化するためには、次項で紹介している「斜め懸垂」などのエクササイズで、段階的に負荷をかけて筋力を向上させるのがおすすめです。
上腕二頭筋の筋力不足
逆手での懸垂が難しい場合は、上腕二頭筋の筋力不足が考えられます。逆手での懸垂は、順手に比べて上腕二頭筋の筋力が影響しやすいです。上腕二頭筋を強化するために、ハンマーカールやバイセップスエクササイズを取り入れると良いでしょう。
可動域不足
懸垂には、筋力に加えて、肩甲骨や背骨の可動域も重要です。肩甲骨の動きが制限されると、広背筋の効果的な使い方ができません。ストレッチや姿勢改善のエクササイズを取り入れることで、可動域が広がり、懸垂のパフォーマンスを向上させることができます。トレーニング前後で、ストレッチや姿勢改善エクササイズを行ってみましょう。
懸垂ができない方におすすめの練習方法3選
「懸垂を初めてみたけど、なかなかうまくできない」という方に向けて、懸垂を効果的に行うための練習方法を紹介します。段階的なトレーニングで正しいフォームと基本的な体力を身につけていきましょう。
斜め懸垂で基本を習得
斜め懸垂(インバーテッドロウ)は、広背筋を意識するのに最適です。
方法
1. バーの下に立ち、斜め姿勢でぶら下がる。
2. 肘を曲げて体をバーに引き寄せ、胸がバーに触れたら一瞬キープ。
3. ゆっくり肘を伸ばして、1の姿勢に戻る。
ポイント
● 肩甲骨を引き寄せて広背筋に意識を向ける。
● 体を一直線に保つ。
ぶら下がり姿勢で握力を強化
ぶら下がり姿勢をキープする練習は、握力と背中の筋力を高めるための練習です。
方法
バーにぶら下がり、姿勢をキープする。
ポイント
● 握力と背中の筋肉を意識する。
● 目標は30秒間の保持。
ネガティブレップスで筋力アップ
ネガティブレップスは、懸垂のなかでも体を下ろすことに特化したトレーニングで、体重をコントロールしながらゆっくり肘を伸ばしていくための筋力を鍛えます。
方法
1. 台を使ってバーの上にあごを出る姿勢で、バーを握る。
2. ゆっくり体を下ろす。
3. 体重を支えきれなくなったら、地面に降りる。
1~3を繰り返す。
ポイント
● 体を一直線に保つ。
● 背中の筋力を意識して降ろす。
これらのエクササイズを取り入れて懸垂に慣れていきましょう。
懸垂で注意すべき姿勢と強化するべきポイント
誤った姿勢での懸垂は、肩や肘に負担をかけ、けがのリスクを増大させます。以下では、代表的な誤った姿勢の例とその対策を解説します。
また、より安定した懸垂を可能にするために、手首や肘を強化するトレーニングについても紹介していきます。
肩をすくめてしまう
肩が耳に近付くようにすくめてしまうと、肩甲骨の動きが低下します。その結果、肩の安定性が低下し、肩のインナーマッスルが肩の骨にはさまれることで痛みが出るインピンジメント症候群や筋肉や関節の痛みを引き起こす原因となります。
対策
● 懸垂の前に、低重量のダンベルやタオルを使って、肩甲骨の適切な位置と運動方向の感覚をイメージしながら反復運動を行う。
● 動作の初めに、肩甲骨を背骨の方向へ引き寄せる意識をもち、肩関節の安定性を高め、肩にかかるストレスを軽減する。
体幹がまっすぐキープできない
懸垂中に、過度に腰を反らせて胸を突き出してしまったり、背中が丸くなったりすると、腰痛につながるほか、背中の筋肉が十分に力を発揮できない原因にもなります。懸垂では体幹をしっかり固定する意識が重要です。
対策
● 体を引き上げる際には広背筋と同時に腹筋を意識し、体幹を安定させる。
● 懸垂前にプランクトレーニングを行い、体幹を安定させる。
手首や肘を強化しよう
懸垂では、手首や肘に大きな負荷がかかります。これらの関節の筋力を強化することで、関節が安定し、けがをしにくくなります。
対策
● 肘を過度に伸ばしすぎないように注意し、軽重量でアームカールを行って上腕二頭筋を強化する。
● 手首の強化のために、ぶら下がり姿勢の練習やリストカール、逆リストカール、懸垂の上がった状態からスタートしてゆっくり下ろすネガティブレップスなどを取り入れる。手首や肘が不安定な状態では、大きな筋肉(広背筋など)が十分に力を発揮できません。手首や肘の小さな筋肉も重要な役割をもっているため、適切なトレーニングとケアを行いましょう。
まとめ
今回の記事では、懸垂で効果的に広背筋を鍛えるためのポイントや、懸垂ができない原因とその対策、初心者の方におすすめの練習方法について紹介しました。
懸垂ができない主な原因は、筋力不足と、それに伴って正しい姿勢が保てないことです。しかし、段階的に手首や上腕二頭筋などの筋力強化を図ることで、懸垂の正しいフォームに近付けるでしょう。力強くたくましい上半身を手に入れるために、ぜひこの記事を参考にして、効果的な懸垂トレーニングを実践してください。

山﨑志緒
医療福祉に特化した総合大学を卒業後、理学療法士免許を取得。スポーツ整形外科での外来リハビリやスポーツチームでトレーナーとして指導やケアにあたる。その後、高齢者の介護予防事業や回復期リハビリテーションの経験を経て、現在は在宅リハビリテーションに従事。現場歴11年。睡眠改善など海洋リハビリテーションなど幅広い分野に携わりながら、ライターとしても活動している。
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