ショルダープレスの効果的なやり方は?鍛えられる部位や重量について解説
公開日:2024.12.24
文:中村 直樹(理学療法士/パーソナルトレーナー)
男性のしっかりした肩と広い肩幅、女性の無駄のない肩のラインを手に入れるために有効なのが「ショルダープレス」です。ショルダープレスは、三角筋を鍛えられる代表的なトレーニングですが、間違った方法で行うと効果が出にくいばかりか、けがのリスクもあります。
今回はショルダープレスの正しい方法と注意点について、専用マシンを使う方法と、ダンベルを使う方法の両方で解説します。この記事を読めば、初心者の方でも安全かつ効率的に三角筋を鍛えられるでしょう。正しくショルダープレスを行い、理想の肩のラインをつくっていきましょう。
ショルダープレスで鍛えられる部位について
ショルダープレスで鍛えられるのは、次の筋肉です。
・大胸筋鎖骨部
・上腕三頭筋、僧帽筋
・ローテーターカフなど
これらの筋肉は肩関節の運動と筋力発揮、安定性に大きく貢献しています。とくに、三角筋は大きな筋肉で、前部・中部・後部で働きが違うほか、ショルダープレスマシンを使用した際の効果にも差があります。
三角筋前部
三角筋前部は、肩の前方部分にある筋肉です。肩を上に上げたり、腕を水平かつ内側に曲げたりする動きに関与しています。ショルダープレスマシンを使うと、三角筋前部をとくに強く収縮させられるため、集中的に鍛えることができます。
三角筋中部
三角筋中部は、肩の側方部分にある筋肉です。肩を横に広げる外転運動に関与しています。ショルダープレスマシンでは三角筋中部も鍛えることができますが、三角筋前部に比べるとやや負荷が小さくなります。
三角筋後部
三角筋後部は、肩の後方部分にある筋肉です。腕を後ろに上げる際の肩関節の伸展や腕を水平かつ後方に引く動作に関与しています。三角筋後部は、ショルダープレスマシンでは鍛えにくい部分です。後部を中心に鍛えたい場合は、ダンベルやバーベルなどを使い、やや後方に腕を上げる運動が効果的です。
ショルダープレスで得られる3つの効果
ショルダープレスにはさまざまな効果がありますが、とくに次の3つが特徴的な効果です。
広い肩幅や美しいスタイル
ショルダープレスにより三角筋のボリュームが大きくなると肩幅が広くなり、格好良い男性のシルエットをつくることができます。また、女性にも、ほっそりした肩のラインや二の腕の引き締めに効果的。さらにショルダープレスでは、体の軸を真んなかに保つことが意識づけられるため、姿勢が良くなり、肩こりや腰痛の改善にも効果が期待できます。
三角筋の筋力アップ
ショルダープレスは、肩の筋肉を総合的に鍛えることができるため、三角筋の筋力アップに効果的です。重いものをもち上げたり、腕を速く振ったり、倒立をする際の安定性を向上させたりすることができます。
肩の安定性の向上
肩関節は、体のなかでもっとも可動域が広い関節である一方、不安定でけがをしやすい部位でもあります。ショルダープレスでは三角筋と同時に肩の深部に位置するローテーターカフと呼ばれるインナーマッスルも鍛えることができるため、肩関節の安定性が向上し、けがの予防に繋がります。
ショルダープレスのやり方
ショルダープレスのやり方について、マシンを使う方法とダンベルを使う方法に分けて解説します。
マシンを使ったショルダープレス
ショルダープレスマシンの使い方は、マシンによって多少の違いがありますが、一般的には以下の手順で行います。
1.マシンの調整
個人の体格にあわせて、シートの高さや背もたれの傾きを調整します。シートの高さは、グリップが首の高さになるようにし、背もたれはなるべく垂直に近くすることで三角筋を優位に働かせることができます。
2.ウエイトの調整
個人の筋力や体調にあわせて調整します。負荷量については後述しますが、初心者の方なら、男性は10~20kg、女性は5~10kgが目安です。
3.開始肢位
シートに座り、背もたれに背なかをしっかりとつけます。グリップを握り、肩幅より少し広めに腕を開きます。開きすぎると肩を痛める原因となるため、肘の位置は真横よりも少し前方になるようにしましょう。このとき、肘の位置はグリップの真下になるようにします。
4.動作
息を吐きながら、肘が伸びきる手前までゆっくりとバーを上げ、ゆっくりと元の位置に戻します。このときのポイントは以下の3つです。
・肘を完全に伸ばし切らないように気を付けましょう。
・呼吸を止めずに、筋収縮している間は吐き続けるようにしましょう。
ダンベルを使ったショルダープレス
ダンベルを使うショルダープレスは、以下の手順で行います。、マシンを使う場合に比べ肩を損傷しやすいので、注意して行いましょう。
1.ダンベルの選択
ダンベルは十分に持ち上げられる重量を選択してください。慣れるまでは軽めの重量から始めててください。
2.ベンチの調整
基本的にはベンチに座って行います。ベンチをしっかり起こして、背もたれはなるべく直角に近い状態にします。
3.開始肢位
少し反動を使ってダンベルを肩の高さまでもち上げます。手の向きは、親指側が常に自分のほうに向いている状態にします。肘の位置は常にダンベルの真下に置きます。胸は十分に開きますが、無理に開くと肩を痛めるため、体の真横よりも少し前に肘がくるようにしましょう。
4.動作
ベンチにしっかりと背中全体を当てて、息を吐きながらゆっくりとダンベルをもち上げます。ダンベルの重心線の真下に肘がくるようにして、突き上げるイメージをもつことが重要です。肘が伸びきる手前で、ゆっくりと元の位置に戻します。ダンベルが下がりすぎると肩を痛めるので注意しましょう。逆に下げ足りないと三角筋に負荷が掛かりにくいので、ダンベルの高さが耳より下がることを意識して行いましょう。
ショルダープレスの重量・回数
ショルダープレスの重量と回数は、個人の体力やトレーニング経験、目的によって異なります。
重量(負荷)の決め方
ショルダープレスの重量(負荷)は、人それぞれの体重や経験などで異なります。例えば、20kgを1度だけ持ち上げるのが精一杯という方の場合、20kgの70~80%である14~16kgの負荷を選択します。
この根拠となるのが「RM(repetition maximum)」という単位です。「1回しかもち上げることができない負荷」を「1RM」といい、それを10回持ち上げる10RMよりも多ければけがをしやすくなり、少なければ筋力強化の効果があまり出ません。
ショルダープレスの回数
ショルダープレスは、10回を1セットとして、3~4セット行います。例えば、20kgを1度だけ持ち上げられる人なら、70~80%の力で済む14~16kgの負荷を選択して、10回を3~4セット行います。
筋肉が付き、慣れてきたら徐々に負荷を上げていきましょう。簡単にできる状態では筋肉を大きくすることはできないとされています。最近では、筋ホルモン「マイオカイン」や栄養素が筋肉を大きくすることに影響があるという研究もありますが、筋力が上がることで筋肉を大きくする効果も期待できるため、筋肉を大きくしたい場合は、回数を増やすのではなく、重量を上げていきましょう。
その日の調子や目的に合わせて調整する
10RMとなる負荷がわかっていても、体調によってはきつく感じたり、シェイプアップが目的の方には負荷が大きすぎることがあります。体調がすぐれないときや筋トレの調子が良くないときに無理をするとけがにつながります。負荷量を下げて様子を見ましょう。
また、シェイプアップや肩関節を安定させたいといった目的の場合、負荷量を上げる必要はありません。上げ下げのスピードをゆっくりにしたり、途中で止めたりする方法が効果的です。
ショルダープレスを行う際の注意点
ショルダープレスマシンは比較的安全に三角筋を鍛えることができますが、誤った方法で行うと肩を痛める可能性があります。以下の点に注意が必要です。
肩の痛みがある場合は無理をしない
肩に痛みや違和感がある場合は中止しましょう。無理に続けると症状が悪化する可能性があります。
正しいフォームで行う
間違ったフォームで行うと、肩や腰を痛める原因になります。ベンチにしっかり背中をつけて、肘の位置が開きすぎていないかなど、鏡を見ながら確認しましょう。また、トレーナーがいる場合にはアドバイスを求めるようにしましょう。
無理な重量設定をしない
高重量を扱う際は、正しいフォームを維持することが難しくなり、けがのリスクが高まります。前項で紹介した重量(負荷)の決め方を目安に十分に運動可能な負荷量に調整しましょう。
ダンベルを用いる際に気を付ける注意点
ダンベルを用いてのショルダープレスは、マシンに比較して三角筋に的を絞って鍛えられます。ただしマシンに比べ肩を痛めるリスクが高くなるため、以下のような点に注意が必要です。
・肘の位置は体の真横より少し前に出す。
・常にダンベルの真下に肘が固定されるようにする。
ダンベルを使うトレーニングでは、マシンを使用する場合に比べて、腕を広げすぎたり、反動をつけてしまったりして、肩を痛めることになるだけで無く、筋トレの効果が上がらないこともあります。鏡でダンベルの位置を確認しながらトレーニングを行いましょう。
まとめ
今回はショルダープレスの効果的な方法や注意点について解説しました。ショルダープレスは、肩の筋肉を総合的に鍛えることができ、とくに三角筋の筋力アップや肩の安定性の向上、姿勢の改善に効果的です。正しいフォームで行うことで、肩を痛めるリスクを減らし、効果的に肩を鍛えることができます。ぜひ、この記事を参考にショルダープレスで理想の肩をつくってください。
<参考文献>
Coratella et al.2022
Campos et al.2020
Hernández-Belmonte et al.2021

中村 直樹
理学療法士資格をもち、パーソナルトレーナーとして活躍中。アンチエイジングや健康寿命を延ばすためのレッスンやセミナーも行う。毎週3本以上の科学論文を読み、常に最新の情報を入手することと、科学的な事実に基づいた情報提供を行うことをモットーに活動。社会に情報があふれるあまり、場合によっては「美容や健康を害する可能性のある情報」が話題となる状況を危惧し、科学的根拠にもとづくアンチエイジングを推奨している。
他の記事も読む
- サイドランジの正しいやり方は?効果や鍛えられる部位について解説!
- 【初心者でも安心】自宅で行えるストレッチメニュー・やり方を徹底解説!
- インクラインハンマーカールの正しいやり方と効果を解説|腕を鍛えたい人向き
- デクラインダンベルプレスで美しい胸筋を目指す!効果を最大限に引き出すコツと注意点を徹底解説
- ボールクランチの正しいやり方は?効果や鍛えられる部位について解説!
- ツイストクランチの正しいやり方は?効果や鍛えられる部位について解説!
- 腸腰筋の効果的な筋トレをご紹介!鍛えるメリットやポイントも解説
- インクラインダンベルカールのやり方は?効果や重量・角度について
- サイドベントの正しいやり方は?効果や注意点も合わせて解説!
- ダンベルベンチプレスのやり方は?重量やポイントを徹底解説!
- サイドプランクのやり方は?どこに効くの?効果やポイントを解説!
- シーテッドローのやり方は?どこに効くの?効果やポイントを解説!
- アームカールで引き締まったたくましい腕を手に入れる!正しい方法や注意点を解説!
- プロテインはいつ飲むのがベスト?おすすめのタイミングと効果を出しやすくする方法を徹底解説
- 毎日の筋トレは逆効果は嘘?正しい頻度と即実践できる効果的な方法を徹底解説!
- 筋トレに最適なインターバルは?自分に合った時間を考える方法を解説
- 筋トレはメリットだらけ?その効果とデメリットの解決法もあわせて解説
- フロントレイズの効果的なやり方とは?重量やポイントについて徹底解説
- リバースプッシュアップはどこに効く?正しいやり方や効果を解説
- 懸垂ができない原因と対策を徹底解説!すごい効果を引き出す正しいやり方とは?