バックプレスの正しいやり方は?効果や鍛えられる部位について解説!
公開日:2025.02.11
文:柴田 太資(トレーニング指導者 大分高校・中学校サッカー部トレーナー)
丸みを帯びた大きく立体感のある肩や、逆三角形に鍛え上げられたボディラインに憧れて、筋トレを始めた方は多いのではないでしょうか。
そんなたくましい体型をつくるために欠かせないトレーニングが、バックプレスです。三角筋のボリュームアップに必須と言える種目の1つですが、間違ったやり方で行うと、けがをする可能性も少なくありません。
この記事では、バックプレスを正しく理解し、安全に短期間で効果を出すためのポイントをお伝えします。
バックプレスとは?鍛えられる部位
バックプレスは肩を鍛えるショルダープレスの一種で、頭の後ろから頭上までバーベルを上げ下げするトレーニングです。慣れてくると高重量で行えるようになるため、肩のボリュームアップに大変有効です。
顔の前でバーベルを上げ下げするフロントプレスに比べ、バックプレスは三角筋の前部(三角筋は大きな筋肉で前部・中部・後部にわけられる)を集中的に発達させることができます。
また首の根元から背中の中央までの筋肉「僧帽筋(そうぼうきん)」や、二の腕の外側「上腕三頭筋」も同時に鍛えられるため、たくましい肩周りや逆三角の体型づくりには欠かせません。
三角筋、僧帽筋、上腕三頭筋を効率的に鍛えるために、これらの筋肉の特徴を十分理解してからトレーニングに入りましょう。
三角筋
三角筋は鎖骨や肩甲骨から上腕にむかって走る筋肉で、肩全体を覆うような形をしています。しっかり鍛えることで、上半身最大の体積を持つようになるため、発達次第で体のシルエットは劇的に変わります。
バックプレスは、三角筋の中でも特に前部を鍛えられます。鍛えることで前から見たときの立体感や、横から見たときの肩の丸みを形成し、ボリュームアップに効果的です。
三角筋は肩甲骨に付着するため、トレーニング中に肩や肩甲骨が動きすぎると、効果的に鍛えることができません。肩や肩甲骨は下げた状態のままトレーニングするように意識しましょう。
僧帽筋
バックプレスで腕を上げ下げするとき、三角筋を補助する形で僧帽筋(そうぼうきん)が鍛えられます。継続することで主に僧帽筋の上部(首から肩にかけて)が発達していきますが、肩甲骨を固定するために、僧帽筋の中部と下部も重要な働きをしています。
僧帽筋の中部と下部が適切に働くことで肩甲骨は固定され、猫背を予防するとともに、肩関節のけが予防にもつながります。肩甲骨を下げて、胸を張ることを意識してトレーニングしましょう。
上腕三頭筋
上腕三頭筋は、上腕から肘をまたいで前腕につながる筋肉で、力をこめて肘を伸ばす動作で鍛えられます。そのためバックプレスでは、頭上にバーベルを持ち上げるときはゆっくりとスピードをコントロールしながら、下ろすときは上腕三頭筋を意識することが重要です。
またバーベルを下ろしすぎると、肩関節へ過度な負担がかかってしまいます。バーベルを下ろすのは肘が90度に曲がるところまでとし、それ以上は下ろさないように注意しましょう。
上腕三頭筋のトレーニングとしては、可動域が物足りないと感じられるかもしれません。しかし重量を上げてスピードをコントロールして行えば、十分に効かせることが可能です。
バックプレスの効果3選
バックプレスの一番の特徴は 、高重量でトレーニング ができるという点です。高重量でトレーニングを行うことで、三角筋などの筋肉を効率よく鍛えられます。
また高重量のウエイトを扱うためには、姿勢を安定させる必要があります。姿勢を維持するための筋肉が鍛えられることで、姿勢改善や腰痛予防にもつながります。以下で詳しく見ていきましょう。
肩を効率よく鍛えられる
バックプレスは肩を鍛えるトレーニングの中で、最も高重量を扱える種目です。
筋肥大のためには筋肉に負荷を与える必要がありますが、負荷は『重量』と『回数』の掛け合わせで決まります。
【 トレーニングの負荷 = ウエイトの重量 × 回数 × セット数 】
トレーニングは高重量になるほど回数が減少する傾向にありますが、短時間でも筋肉に強い刺激を与えられるため、時間効率は良くなります。
短時間のバックプレスで強烈な負荷を与えることができれば、サイドレイズやアップライトロウなど、ほかの肩トレを並行しやすくなります。肩トレの効果と効率を上げたい方は、バックプレスを高重量で行うことをおすすめします。
姿勢改善
バックプレスで高重量のウエイトを上げ下げするためには、体幹の強度や姿勢がポイントになります。腰や背中、おなかなど体幹の筋力が不足していると、体がぐらついて重いバーベルを頭上まで持ち上げることはできません。
また猫背では腕がまっすぐ上がりにくいため、胸を張って背筋を伸ばした姿勢でバーベルを上げる必要があります。
ある程度高重量でバックプレスが行えるようになると、体幹が強化されている1つの指標になり、姿勢も改善されているはずです。
ただし背中が丸まった間違ったフォームでは、これらの効果は期待できません。ポイントを押さえて、正しいやり方で実施することが重要です。
腰痛予防
正しいフォームでのバックプレスは、腰痛予防にも有効です。正しい姿勢で継続的にバックプレスを行うことで、腹筋や背筋の強化に加え、骨盤を前傾させすぎない(腰を反りすぎない)ニュートラルポジションへと導くことができます。
ニュートラルポジションとは、本来あるべき位置に骨盤を含む体の配列があることで、関節が上下左右に偏りがなく機能的にニュートラルな状態です。ニュートラルポジションをとれるようになると、体への負担が少なく、運動機能もスムーズに発揮しやすくなります。バックプレスを安全に実施できるだけでなく、腰への負担も減少し、腰痛予防効果も期待できます。
バックプレスのやり方
バックプレスの効果をより多く引き出すためには、フォームが大変重要です。バックプレスは立ち姿勢で行う場合もありますが、今回は安全性を考慮して、インクラインベンチで実施する方法をお伝えします。
セッティング
⒈インクラインベンチの背もたれを80〜90度まで起こし、ラック上のバーベルの下に設置する。
⒉上腕が床と平行になる位置で肘を90度に曲げ、その手幅でバーベルを握り頭上に持ち上げる。
肩幅の約1.5倍の広さになる。
トレーニング
⒈息を吸い、上腕が床と平行かつ肘が90度の位置まで、バーベルをゆっくり下ろす。
⒉上腕が床と平行かつ肘が90度の位置で、一旦停止したのち頭上まで持ち上げる。
⒊動作のスピードは『4秒でおろして一旦停止し、2秒で上げる』を目安にしましょう。
重量と回数の設定
ウエイトの重量は男性は20kg、女性は10kgくらいから始めて、回数は15回3セットを目安にしましょう。上記の重量が問題なく行える場合は『15回が限界がくる重さ』に重量を上げます。
2ヶ月ほど継続して慣れてきたら、筋肥大に効果的な『8〜12回で限界がくる重さ』に重量を上げましょう。回数は8〜12回、3セットを目安に実施してみてください。
※バーベルで行うのが難しい場合は、バーベルがレールで固定されている「スミスマシン」の使用をおすすめします。
バックプレスの注意点
バックプレスは高重量を扱う点や、肩の可動域や柔軟性などの観点から、安全に注意が必要な種目です。以下の3点に特に注意して取り組みましょう。
重量は徐々に上げる
高重量が扱えて筋肥大に大変有効なバックプレスですが、慣れるまでは徐々に、ゆっくりすぎるくらいのペースで重量を上げていくことがポイントです。
トレーニング中に多少余裕があっても無理はせず、2〜3日後の筋肉痛などの状態を見たうえで、重量を上げるか否かを判断します。関節や腱(けん)などのけがは、筋肉のけがに比べて、治るまでに時間がかかります。
筋肉への負荷は、回数やセット数でも増やすことができるので、重量アップは慎重に行いましょう。
手幅と肘の位置
バーベルを握る手幅は、上腕が床と平行かつ肘を90度に曲げて握れる位置で、だいたい肩幅の1.5倍程度の広さに設定します。
トレーニング中、肘は常にバーベルの真下にある状態が望ましいです。バーベルは肘が90度に曲がる位置まで下ろしたら、それ以上は下げないようにしましょう。
もし肘の位置がバーベルの真下を維持できなかったり、肘が90度の位置までバーベルが下ろせない場合は、肩の可動域や柔軟性に問題がある可能性があります。
その場合は一旦バックプレスは中止し、肩のストレッチと、ダンベルなどを使用して負荷を下げた「ショルダープレス」に切り替えることをおすすめします。
骨盤のニュートラルポジション
バックプレス中は、腰が反りすぎないよう注意しましょう。高重量を扱うバックプレスでは、回数が増すごとに疲労がたまり、挙上するときに腰が反りやすくなります。
反り腰でバックプレスを繰り返すと、腰への負担は大きくなっていきます。腰の反りすぎにブレーキをかけられるよう、バーベルを上げる際は腹筋に力を入れて、息を吐きながら挙上しましょう。
腰の反りを予防し、骨盤をニュートラルポジションに保つトレーニングとして、「ドローイン」や「ブリージング」「デッドバグ」などの補強エクササイズを並行して行うのもおすすめです。
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まとめ
バックプレスは、立体感のあるたくましい肩周りをつくるために、外すことのできないトレーニングです。高重量を扱うため、けがに注意する必要がありますが、逆三角形の体型を目指すのにこれほど有効な種目はありません。バックプレスの注意点やポイントを押さえて、正しいフォームで行い、焦らず地道に継続することが大切です。
ぜひ今日からバックプレスを取り入れて、理想のボディラインを手に入れてくださいね。
<参考文献>
Clem W. Thompson/ R. T. Floyd「身体運動の機能解剖」(医道の日本社)2002

柴田 太資
プロアスリートのトレーニング指導、放課後等デイサービスセンターや学童保育など子どもの運動指導、健康増進のためのパーソナルトレーニングなど、幼児から高齢者まで幅広い世代を対象にトレーニングを指導する。専属契約する大分高校サッカー部はプロ選手も多数輩出する全国大会常連の強豪校。パーソナルトレーニングジムの経営や24時間型フィットネスクラブの運営にも携わる。
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