ハーフデッドリフトは意味ない?鍛えられる部位や正しいやり方を解説!
公開日:2025.02.12
文:加藤 尚也(理学療法士)
「背筋をしっかり鍛えたいけど、腰痛にならないか心配」という方には、デッドリフトより腰を痛めにくいハーフデッドリフトがおすすめです。
通常のデッドリフトは床からバーベルをもち上げますが、ハーフデッドリフトは台からバーベルをもち上げるため、可動域が少なく、腰への負担を大きく軽減できます。
さらに、可動域を減らすことでより集中的に上半身を鍛え、けがのリスクを減らすこともできます。
この記事では、ハーフデッドリフトで効率的に鍛えたい方へ向けて、鍛えられる部位や正しいやり方を解説します。
ハーフデッドリフトとは?鍛えられる部位
ハーフデッドリフトとは、セーフティーバーなどを使用して通常のデッドリフトと同様の動作を行うトレーニングです。
床よりも高い位置からバーベルをもち上げることで可動域を減らし、下半身よりも上半身を集中的に鍛えることができ、より高重量のバーベルを使用できます。
また、可動域が少なくなる分フォームが崩れにくく、腰への負担も少ないメリットがあります。
ハーフデッドリフトでは主に広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋を鍛えることができます。
広背筋
広背筋は背中の外側に広がっている筋肉です。主に腕を引く動作を行う際に使います。広背筋を鍛えることで広く大きな背中に近づくことができ、たくましい逆三角形の体型を目指せます。
また、女性の場合はウエストのくびれをつくるためにも必要な筋肉です。
僧帽筋
僧帽筋は背中の上部から内側にかけて大きく広がっている筋肉です。上部・中部・下部にわかれており、ハーフデッドリフトでは主に上部と中部を鍛えられます。
上部は肩甲骨を引き上げる動作、中部は肩甲骨を内側に引き寄せる動作に使います。
僧帽筋を鍛えると厚みのある背中に近づけるだけでなく、肩こりの緩和や姿勢の改善にも役立ちます。
脊柱起立筋
脊柱起立筋は背骨に沿って走行している大きな筋肉です。複数の筋肉によって構成されており、協調して働くことで背中を反らす動作を支えます。
脊柱起立筋を鍛えると胸を張ったきれいな姿勢を保てるようになり、腰痛の予防や改善効果も期待できます。
ハーフデッドリフトの効果5選
ハーフデッドリフトでは、さまざまな効果が期待できます。主な効果は①理想的な体格の獲得、②姿勢の改善、③腰痛や肩こりの緩和、④スポーツでのパフォーマンス向上、⑤ダイエット効果の5つです。
理想的な体格の獲得
ハーフデッドリフトで主に鍛えられる広背筋は、背筋の中でもとくに背中の見た目に関わる筋肉です。
そのため、男性では逆三角形のたくましい体格、女性ではくびれのあるメリハリのついた体型を手に入れることが期待できます。
姿勢の改善
背筋の筋力が弱いと胸を張ることが難しくなり、猫背や首が背中より前に出てしまうストレートネックなどになりやすく、姿勢がくずれてしまう場合があります。
ハーフデッドリフトで背筋を鍛えることで胸を張ったきれいな姿勢をキープしやすく、猫背やストレートネックの緩和も期待できるでしょう。
腰痛や肩こりの緩和
猫背やストレートネックは、肩や背中に負担がかかりやすく腰痛や肩こりの原因になることがあります。
背中をしっかりと鍛えて正しい姿勢が保てるようになると、肩や背中にかかる負担が少なくなり、腰痛や肩こりの緩和が期待できます。また、背筋の筋力を鍛えることで肩や腰が疲れにくくなる効果もあります。
スポーツでのパフォーマンスの向上
背筋は日常生活だけでなく、スポーツで高いパフォーマンスを発揮する際にも重要です。パフォーマンスを最大限に発揮するためには体幹が安定している必要があります。
ハーフデッドリフトで背筋を鍛えることで効果的に体幹を安定させ、より高いレベルでのパフォーマンスを発揮します。
また、背筋の筋力トレーニングを行うことは体幹が安定しスムーズに動けるようになるため、スポーツ中のけがの予防にも効果的です。
ダイエット効果
ハーフデッドリフトにはダイエット効果もあります。1日で消費されるカロリー数は基礎代謝によって決まりますが、基礎代謝は筋肉の量に比例します。
ハーフデッドリフトで鍛えられる広背筋は、体の中でも大きな筋肉であり、鍛えることで効率よく基礎代謝を高めることができ、ダイエット効果も期待できるでしょう
ハーフデッドリフトのやり方
それでは、ハーフデッドリフトのやり方を解説します。
セーフティーバーを設定する
はじめに、バーベルを置くためのセーフティーバーを設定します。高さはひざのやや上くらいに設定してください。設定できれば、セーフティーバーの上にバーベルを置きます。
腰を屈めた状態でバーベルを握る
ハーフデッドリフトの開始姿勢は股関節とひざを曲げ、少し屈んだ状態です。この姿勢で準備ができたら、肘を伸ばした状態でバーベルを握ります。
この際に肩甲骨が外に開かないように注意しましょう。
バーベルを引き上げる
次にバーベルを上に引き上げます。バーベルを引き上げる際は肘を曲げずにできるだけ体に沿ってまっすぐ引き上げ、体幹がまっすぐになっていることを意識します。このときも肩甲骨が外に開かないように注意しましょう。
バーベルを下ろす
最後に、上げたときと同じ軌道を通ってバーベルを下ろします。勢いよく下ろしてしまうと腰への負担が大きくなるため、スピードをコントロールしながらゆっくりバーベルを下ろしましょう。
ここまでの動作を複数回繰り返します。
ハーフデッドリフトの注意点
最後に、ハーフデッドリフトを行う際の注意点を解説します。
負荷量の設定に注意する
ハーフデッドリフトはデッドリフトと比較すると可動域が少ない分、腰への負担を減らしながらトレーニングができます。
しかし、引き上げる重量が軽すぎるとトレーニングとしての質が低くなります。時折「ハーフデッドリフトは意味ない」との意見を目にすることがありますが、これは負荷量の設定が間違っている場合がほとんどです。
筋力アップを目指したい方は5〜6回程度、背筋の筋肥大を行いたい方は10回前後で上げられなくなる重量で行いましょう。逆に重すぎる負荷でトレーニングを行うと腰を痛める原因になるためご注意ください。
背中が丸まらないように行う
バーベルを引き上げる際に背中が丸まっていると、背中に強い負荷がかかり腰痛や場合によってはヘルニアなどの疾患を発症してしまう可能性があります。
ハーフデッドリフトを行う際は背中が丸まらないように背筋を伸ばし、胸を張った状態で行うことを意識しましょう。
首だけが上に上がらないようにする
バーベルを引き上げるときに背中がまっすぐ伸びず、首だけが上を向いてしまうことがあります。首だけが上を向いてしまう際は胸を十分に張れていないことが多いです。
正しいフォームで行うことで背筋に負荷をかけられるため、首だけが上を向く場合は胸を張るように意識するか、意識してもできない場合は重量を軽くしましょう。
まとめ
この記事ではハーフデッドリフトの効果ややり方について解説しました。ハーフデッドリフトはデッドリフトよりも安全であり、さらに高重量を扱えるため、より背筋を鍛えることに特化したトレーニングです。
デッドリフトを行ったことがない初心者から背筋を集中的にトレーニングしたい上級者まで、幅広い方々におすすめの筋トレです。しかし、方法を間違えるとけがのリスクがあり、重量が軽すぎるとハーフデッドリフトが意味のないトレーニングになってしまう可能性があります。
ぜひ、この記事を参考にして正しいやり方でハーフデッドリフトにチャレンジしてみてください。ハーフデッドリフトで背筋を鍛えて、すらっと伸びた背筋やスポーツでの高いパフォーマンスを手に入れましょう。
セラピストプラスでは他にも背中を鍛えるエクササイズやストレッチを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
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<参考文献>
望月 久 (編集), 山田 茂 (編集) 「筋機能改善の理学療法とそのメカニズム ─理学療法の科学的基礎を求めて─ 【第3版】」(ナップ)2014

加藤 尚也
理学療法士として総合病院と整形外科クリニックに勤務し、スポーツ整形を担当している。普段の診療業務からどのように指導を行えば患者様が適切な筋力トレーニングを行えるかを意識して指導をしている。また、けがの再発予防も重要視し、運動時のフォームチェックなども行っている。毎年、学会発表や市民公開講座など病院以外の場での活動も精力的に実施。ライターとしては医療・健康分野での執筆活動を中心に行っている。理学療法士歴は10年以上。
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