【怪我予防&パフォーマンスアップ】運動前に取り入れたい動的ストレッチ5選
公開日:2025.02.16
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
あなたは『動的ストレッチ』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ストレッチは大きく分けて『動的ストレッチ』と『静的ストレッチ』の二種類あります。特に動的ストレッチは、運動前のウォーミングアップにおすすめのストレッチ方法で、怪我の予防にもなるのです。
そこで当記事では動的ストレッチの効果や具体的な方法について解説します。今まで運動前にストレッチをしていなかったという方や、動的ストレッチを知らなかったという方はぜひ最後まで目を通していただけると、今後のトレーニングの方法や効果が変わってくるかもしれません。あなたの健康やパフォーマンスアップにお役立ていただけますと幸いです。
動的ストレッチとは?どんな効果があるの?
動的ストレッチとは、体を大きく動かして筋肉を伸ばすストレッチです。「バリスティックストレッチ」と「ダイナミックストレッチ」の二種類があります。
「バリスティックストレッチ」は、反動を利用しリズミカルに動かすことで筋肉を伸張させる方法です。体育の授業などで行ったストレッチやラジオ体操などをイメージするとわかりやすいでしょう。反動をつけて行うためやり方によっては怪我をしてしまうリスクも高いため、注意が必要です。
もう一つの「ダイナミックストレッチ」は、伸ばしたい筋肉と相反する筋肉に力を入れながら行う方法です。この方法では反動は使わず、相反抑制(そうはんよくせい)という体の反応を利用して筋肉を伸張させます。
相反抑制とは、「ある筋肉に力を入れると、その反対の役割を持つ筋肉が緩む」という性質です。この方法を用いることで、安全に筋肉を伸張することが可能です。
動的ストレッチと静的ストレッチの違い
それでは次に「動的ストレッチ」と「静的ストレッチ」の違いについて解説します。
動的ストレッチの中のバリスティックストレッチの場合、関節を大きく動かすため、スポーツの動作に合わせた可動域を事前に準備する働きがあります。その結果、動作時の怪我を予防することに繋がります。
また、動的ストレッチの中のダイナミックストレッチは、筋肉の低下が少ないという報告があります。そのため、ウォーミングアップに効果的なのです。ちなみに、最大筋力を必要とする10分前にダイナミックストレッチを行うことで、より高いパフォーマンスを発揮することができるというデータもあります。1)
静的ストレッチは、反動をつけずに姿勢を保持したままゆっくり筋肉を伸張させていく方法です。反動をつけず姿勢も変わらないため、安全に行うことが可能です。
しかし静的ストレッチを行った後に、筋力低下が起こることが指摘されているため、ウォーミングアップには向いていません。逆に静的ストレッチは、筋肉の緊張を緩和するため、運動によって生じた疲労物質を除去する役割を持つと言われ、クールダウンに効果的な方法です。
【丸パクリOK】ウォーミングアップにおすすめな動的ストレッチ7選
動的ストレッチの効果がわかりましたね。それでは実際にウォーミングアップで効果的な動的ストレッチを紹介します。全身を動かせるようなメニューになっているので、ぜひ参考にしてください。
⒈キャットアンドカウ
⒈四つ這いの姿勢になりましょう。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにセットします。
⒉背骨を丸めていきます。お尻の穴を下に向け、腰骨、鳩尾の順に丸めていきます。
⒊次に背骨を反らします。お尻の穴を上に向け、胸を上に向けていく意識です。
⒋できる方は呼吸にも意識を向けていきましょう。息を吸いながら反らし、吐きながら丸めていきます。
⒉ダウンドッグ
⒈四つ這いの姿勢になりましょう。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにセットします。
⒉お尻を踵に近づけ、膝を浮かし、お尻を天井に向けて持ち上げていきましょう。
⒊上半身、下半身、床で三角形をつくるイメージです。
⒋踵を上げたり下げたりすることでふくらはぎのストレッチも行えます。
⒊ツイストストレッチ
⒈四つ這いの姿勢になりましょう。そこから右足を右手の外に一歩出します。
⒉左膝を床から浮かし、左腿の前が伸びるように意識します。
⒊右手を持ち上げ、右に体を捻りましょう。右手の指先は天井に向かって伸ばします。
⒋元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう。
⒋腸腰筋ストレッチ
⒈立った状態から、左足を一歩前に出しましょう。
⒉踏み込みながら右手を持ち上げ、体を左側へ倒します。
⒊右の股関節前面、脇腹が伸びているのを感じます。
⒋呼吸を止めないように意識して行いましょう。
⒌前面のストレッチ
⒈立ち上がりましょう。肘を軽く曲げ、肩を軽く開きます。
⒉肘を後ろで合わせるように、肩甲骨を寄せます。この時、胸の前が伸びているのを感じましょう。
⒊元の姿勢に戻ります。
⒋繰り返し行いましょう。
⒍肩周りのストレッチ
⒈立った状態または座った状態で、肩に手を当てていきます。
⒉肩をぐるぐると回していきましょう。
⒊反対回しも行います。
⒎股関節ストレッチ
⒈立った状態で足を骨盤幅の2倍程度に開きましょう。
⒉肩を入れるようにして上半身をねじります。
⒊内腿が伸びているのを感じながら行いましょう。可能な方は少し反動を入れてみましょう。
動的ストレッチをする際の注意点
動的ストレッチの具体例を紹介しましたが、実際に行う際には注意が必要な点もありますので紹介します。特に運動に慣れていない方はしっかりと確認していきましょう。
まずは小さな動きから始める
動的ストレッチは、普段から運動をしていない方にとっては関節や筋肉に負担が掛かる可能性があります。そのため、まずは小さな動きから始めてみましょう。そして慣れてきたら徐々に動きを大きくしていくことをおすすめします。
動きや部位によっても人によってそれぞれ得意、不得意があると思いますので、できそうなものからやってみるというのも一つの方法です。
痛すぎるところまではやらない
ストレッチは少し痛いところまでやらないといけないと思っている方もいらっしゃいますが、痛みが強すぎるところまでやることはやめましょう。
痛みを感じるところまでストレッチをしてしまうと、防御性収縮という体の反応が起こります。防御性収縮とは痛みから体を守る反応です。筋肉を無理に引っ張ろうとすると、筋肉は「これ以上引っ張られると傷ついてしまうかもしれない」と思い、筋肉を縮めて守ろうとします。そのため、より硬くなってしまうので注意をしましょう。
自己流にならないようにする
自己流でストレッチをしている方も多いと思いますが、それでは怪我をする可能性もあります。どこの筋肉を動かしているか学んだり、鏡を見ながら行う方法もいいと思いますし、可能であれば個別で見てもらえるような施設に行き、姿勢ややり方などを確認してもらえると良いでしょう。
まとめ
今回は動的ストレッチについて解説していきました。動的ストレッチは、関節を大きく動かし可動域を拡大したり、パフォーマンスアップにも効果的なストレッチです。
動的ストレッチは主にウォーミングアップ、静的ストレッチはクールダウンにおすすめですので、状況に応じて使い分けられると良いですね。
そして、実際にそのまま使える動的ストレッチのメニューを紹介しましたので、ぜひご自身の運動前の準備体操として導入していただけたらと思います。当記事があなたの怪我を予防し、パフォーマンスアップへの向上に繋がれば幸いです。
参考文献
1)土井眞里亜:静的および動的ストレッチング後に生じる足関節可動域と筋力の経時的変化,理学療法科学 25(5),785-789,2010

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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