すべり症でやってはいけないストレッチとは?注意点や効果的な運動を解説!
公開日:2025.02.17
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
「病院に行ったらすべり症と診断された」「何か運動やトレーニングをした方が良いの?」とお悩みの方はいらっしゃるのではないでしょうか。
何かストレッチなどから始めた方が良いのではないかと漠然とした思いがあるものの、やって悪化するようなことがあっては不安ですよね。
そこで当記事では腰椎すべり症の際に、やってはいけないストレッチについて解説します。
さらにやった方が良い運動やストレッチも合わせて解説していますので、ぜひ最後まで目を通していただき取り組んでいただけたら幸いです。
過去にすべり症と診断された方は、症状が落ち着いていたとしても再発予防のために取り組んでいただけると良いでしょう。
そもそもすべり症とは?
すべり症とは、背骨を構成する「椎骨(ついこつ)」が本来の位置から前方もしくは後方に滑ってしまう状態を指します。特に腰部に起こることが多く、その場合を腰椎すべり症と言います。
すべり症は病因により以下の5つに分類されます。
・タイプⅡ:分離(何らかの原因で関節突起が欠けている)
・タイプⅢ:変性(年齢などが原因で関節がすり減る)
・タイプⅣ:外傷性(怪我や事故などが原因)
・タイプⅤ:病的(がんや感染症などが原因)
なかでも「分離」や「変性」が一般的です。特に分離性すべり症の多くは、体が柔らかい中学生頃にジャンプや回旋を行うことで起こり、変性すべり症は、妊娠や閉経など女性ホルモンの影響を受けるため、圧倒的に女性が多いと言われます。1)2)
すべり症の症状について解説
腰椎すべり症は軽度の場合、無症状のことも多々あります。進行すると腰痛や足の痺れ、痛麻痺などが起こることもあるのです。
同じような症状を持つ疾患に、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と呼ばれるものがあります。脊柱管とは背骨の中心にある管のことを指し、その中を神経が通っています。その神経が何らかの原因で圧迫されることで、痺れや痛み、麻痺などが起こることを脊柱管狭窄症と言います。
また脊柱管狭窄症で代表的な症状に「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれるものがあります。間欠性跛行は、少し歩けますがしばらくすると痛みが強くなり、しばらく休むとまた歩けるようになる症状です。
腰椎すべり症の場合にも、背骨がずれることによって脊柱管の中を走っている神経を圧迫し、脊柱管狭窄症と同様の症状を呈することもあります。さらに腰椎すべり症から脊柱管狭窄症に移行するケースもあるのです。
腰椎すべり症の方が避けるべき動作や習慣
腰椎すべり症の方は、腰椎のアライメント(骨の位置)が悪く神経を圧迫し症状が出ています。そのため、そのアライメントをさらに悪化させないことや、神経や関節に負担が掛からない状態を作ることが重要です。
以下に日常生活で気をつけたい動きを具体的に解説します。何気なくやってしまう動きばかりですので、すべり症をお持ちの方は必ず確認してくださいね。
過度に腰を反らしたりひねる動き
腰椎すべり症の方は、腰を過度に反ったりひねったりする動きに注意が必要です。特に腰椎すべり症の方の多くは、前方に背骨がずれています。その状態で腰を反ってしまうと、背骨の後方に圧が掛かり脊柱管をさらに狭めてしまう可能性があるのです。
また本来、体をひねる時には腰は大きく動きません。しかしすべり症の場合、背骨が不安定な状態になっているため、ストレスの大きいひねる動きは避けた方が良いでしょう。
激しい運動
すべり症は背骨が不安定な状態なので、スポーツなどの激しい運動を行うことで症状が悪化する可能性があります。
たとえ一度やって症状がなかったとしても、繰り返し行うことで負荷が掛かり続けていますので無理に行わないことを推奨します。スポーツを再開したい場合には、必ず専門家の指示を仰ぐようにしましょう。
長時間の同一姿勢
長時間の同一姿勢は、腰に負担が掛かります。特に座っている姿勢は腰に負担が掛かります。仕事をしている方などは気がつくと1日中、同じ姿勢になっていることもあると思いますが、こまめに立ち上がったりするなど姿勢を変えることをおすすめします。
重いものを持ち上げる動作
重いものを持つ動きも、腰に負担が掛かります。特に腰を曲げて床から荷物を持ち上げるような動作は、腰へのストレスがかなり大きくなるため注意が必要です。
なるべく重いものを持ち上げることは避け、どうしても持ち上げる必要がある場合には、膝を曲げしゃがみ込んだ姿勢から、背骨をまっすぐにした状態で持ち上げることをおすすめします。この時、腰は反らないように意識しましょう。
腰椎すべり症の方がやってはいけないストレッチ
それでは次にストレッチをする際の注意点です。適切な方法で行えば効果的なストレッチも沢山ありますが、闇雲に行い、やり方を間違えてしまうと、かえって症状を悪化させるケースもあるのでぜひ知っておいていただきたいポイントです。
体を反らせるストレッチ
動作時の注意点と同じになりますが、過度に腰を反らせるようなストレッチは避けましょう。さらに背骨が前方にずれる可能性があります。
また腰を反らせるストレッチをしているつもりがなかったとしても、気がついたら腰を反ってしまっているというケースも多いので、フォームに注意をしながら行うことをおすすめします。できれば専門家に見てもらいながら行うと、より安全に行えるでしょう。
過度に腰をひねるストレッチ
腰を過度にひねるストレッチも、腰椎に負担が掛かるため避けた方が良いでしょう。特にヨガやゴルフなどは腰をひねる動きを伴うため注意が必要です。
また腰ではなく胸をねじるようなストレッチを行っているつもりでも、胸の背骨が硬いために腰椎にねじりの負荷が掛かっている場合もあるため気をつけましょう。
腰椎すべり症の方に効果的な運動やストレッチはあるの?
腰を反らせることやひねる動きに気をつけたいことがわかりましたね。しかし、そのような動きを意識的に行なっていなくても、気がついたら腰を反ったりひねったりしてしまっていたというケースも多いのが事実です。その典型的なパターンとしては、反り腰の方です。普段の姿勢から腰が反ってしまっていると、特にすべり症の方は腰に負担が掛かるため、反り腰を改善するような運動、ストレッチを行なっていきましょう。
具体的には、反り腰の方は股関節前面の腸腰筋や大腿直筋が硬くなっていて、後面の大殿筋やハムストリングスが弱くなっていることが多いです。そのため、股関節前面を伸ばし、後面を使っていくような運動、ストレッチを紹介します。
腸腰筋ストレッチ
まずは股関節前面の「腸腰筋(ちょうようきん)」をストレッチしていきましょう。この筋肉は骨盤を前に傾ける働きがあるため、短縮すると反り腰方向に骨盤を引っ張ってしまいます。ストレッチをして伸張することで、骨盤の位置を整えやすくしていきましょう。
⒈四つ這いになり右足を一歩前に出しましょう。
⒉胸を前に向けていきます。
⒊左の股関節前面が伸びる感覚を持ちながら行いましょう。
⒋腰は反らないように注意します。
大腿四頭筋ストレッチ
次に「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」のストレッチを行います。大腿四頭筋は、太ももの前の四つの筋肉(大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋)に分かれています。その中でも、大腿直筋(だいたいちょっきん)は、骨盤に付着していて、短縮すると骨盤を前に傾ける作用があります。そのため、しっかり伸張していきましょう。
⒈横向きに寝ましょう。下の足は、膝・股関節を曲げた状態にします。
⒉上の足を手で持ちましょう。足を後ろに引いていきます。
⒊腿の前が伸びる感覚を持ちながら行います。腰が反らないように気をつけましょう。
ショルダーブリッジ
次に後面の大殿筋、ハムストリングスを使う運動を行います。腰が反らないように行いたいため、注意事項をしっかり確認しながら行なってみてください。
⒈仰向けで寝ます。足、膝の間は拳1個分にします。
⒉骨盤の前を自分の顔の方に向け、ゆっくりとお尻を持ち上げていきましょう。まずは少しお尻を上げるところから行なっていきましょう。
⒊必ず腰が反らないように意識します。骨盤を自分の方に向けることで腰が反りにくくなります。腰を反らないように行えるようであれば、肩から膝が一直線になるところまで上げていきます。
⒋ゆっくりと背中の上の方からお尻に掛けて順番に下ろしていきます。
腰を反っていないと思っていても、実は反っているケースも多いので、鳩尾の裏を床から離さないような意識で行なってみてください。
まとめ
腰椎すべり症は、腰の背骨が主に前方にずれる疾患です。そのタイプは主に、変性と分離に分かれます。症状がないことも多いですが、進行すると脊柱管狭窄症と同様に痺れや痛み、麻痺や間欠性跛行などが生じることがあります。
腰を反ったりねじるなど背骨に負担が掛かると悪化する可能性が高いため、日常生活やストレッチをする際には避けていきましょう。また普段から腰が反りやすい方は、腸腰筋や大腿直筋など股関節前面の筋肉を伸張させたり、大殿筋やハムストリングスなど後面の筋肉を使うなどして姿勢を整えることも効果的です。
やり方があっているのか不安な場合や痛みがある場合には、専門家に見てもらうことをおすすめします。無理のないように行いましょう。当記事がすべり症の方の不安軽減に繋がれば幸いです。
参考文献
1)日本整形外科学会:腰椎分離症・分離すべり症
2) 若見朋晃,井口哲弘,栗原 章・他:腰椎多椎間変性すべり 症でのすべり発症因子のX線学的検討.臨整外,2001,36: 181-186.

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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