アキレス腱炎のストレッチと再発予防法を徹底解説!
公開日:2025.04.12
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
あなたは、「アキレス腱が痛い」「ストレッチをした方が良さそうな気がするけどどうしたら良いの?」とお悩みではないでしょうか。また、「ストレッチをしてみたけどよくならない」という方も多いかもしれません。
アキレス腱に痛みが出る方で多いのが、アキレス腱炎です。アキレス腱に炎症が起こっている状態ですが、アキレス腱が上に引っ張られることで痛みが出ているケースを散見します。そのため、ただストレッチをするだけではかえって悪化させてしまう場合もあるのです。
またアキレス腱炎は、アキレス腱に負担が掛かり起こります。そして普段から知らないうちに慢性的な負担が掛かっているケースが多いので、その原因を解消していくことが再発予防に繋がります。
当記事では、アキレス腱炎に効果的なマッサージ方法と再発予防するための方法を合わせて解説します。あなたのアキレス腱の痛みや症状緩和にお役立ていただけますと幸いです。
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アキレス腱が痛くなる原因は?
アキレス腱が痛くなる主な原因は、アキレス腱炎です。アキレス腱の周囲に炎症が起こり、痛みを引き起こすものをアキレス腱炎と言います。
他には、アキレス腱周囲炎やアキレス腱断裂などが考えられます。
アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱の周りを覆っている組織に炎症が起こる病態です。周囲の組織だけに損傷が起こっている場合は少なく、アキレス腱炎を併発しているケースを散見します。
アキレス腱断裂は、スポーツ中に起こることが多いです。高齢者の場合は、腱が変性(老化現象)しているため、日常生活の中で起こる場合もあります。バスケやサッカーなどのジャンプや蹴り出しで、膝が伸びた状態でふくらはぎの筋肉が急激に収縮した際に起こるケースを散見します。
アキレス腱炎やアキレス腱炎は、日常的な繰り返しの負荷による炎症が原因の場合が多いです。しかしアキレス腱断裂は、スポーツや日常生活中の外傷が原因となります。
アキレス腱炎のメカニズムを簡単に解説!
アキレス腱の痛みの主な原因であるアキレス腱炎についてさらに詳しく解説します。
アキレス腱になぜ炎症が起こるかというと、
アキレス腱に負荷が掛かるのは、下腿三頭筋が収縮・短縮した状態で、アキレス腱が急激に伸張される。
アキレス腱炎になってしまった時の対処法
アキレス腱炎は炎症が起こっている状態なので、痛みが出た直後には炎症を抑えることが重要です。そのためストレッチなどをいきなり行うのではなく、以下のような方法を取りましょう。
安静にする
痛みや熱っぽさがある場合は、まずは安静にしましょう。無理に動かしてしまうと炎症が悪化したり、回復が遅れてしまいます。
運動や歩行などはもちろんですが、姿勢が悪い場合には、立っているだけでもアキレス腱に負荷が掛かっている可能性もあります。座って過ごすことができれば良いですが、どうしても立たなければいけないという場合には、正しい姿勢を意識しましょう。
正しい姿勢は、太ももの骨が床に垂直になっていることや、くるぶしの前と大転子(股関節の横のでっぱり)が縦一直線上にあるかなどを目安にしてみてください。
冷やす
症状がある場合は、氷嚢などで冷やすこともオススメです。冷やす時間は、15〜20分を目安に冷やしましょう。
冷やすことで血管が収縮し、炎症を悪化させる物質が、炎症部位に流れ込むことを防ぎます。また炎症を引き起こす細胞などの活動を抑えることができるのです。
足を挙げて寝る
腫れを抑えるために、足を心臓よりも高い位置に保つことも効果的です。寝る際には、足を積み上げた枕やクッションの上に置くことをオススメします。
アキレス腱炎にオススメなストレッチ
アキレス腱炎になっている方は、アキレス腱の伸張性が低下していることが多いです。さらにアキレス腱周囲の組織の滑りが悪い結果、アキレス腱に負荷が掛かっている可能性があります。そのためそのままストレッチをしてもさらに負担が掛かってしまうのです。
そのため痛みが落ち着いてきたら、まずはアキレス腱周辺の組織の滑りを改善させます。その後、ふくらはぎのストレッチを行います。それでは具体的な方法を解説します。
アキレス腱モビライゼーション
まずはアキレス腱周辺の組織の滑りを改善するために、手を使ってほぐしていきます。
⒈座って痛みのある方の足を反対の足に乗せます。(ここでは右足に痛みがあることを想定して記載します。)
⒉アキレス腱を両手の親指、人差し指で挟みます。
⒊アキレス腱を握った右手を上に、左手を下に動かします。
⒋反対方向にも動かしましょう。
⒌少しずつ位置をずらしながら万遍なくほぐしていきましょう。
足首の運動
次に、アキレス腱のあるふくらはぎの筋肉を動かし、周りの筋肉との滑りを良くしていきます。ここでは、後脛骨筋(こうけいこつきん)、長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)、長趾屈筋(ちょうしくっきん)という三つの筋肉のストレッチを行います。
後脛骨筋
後脛骨筋は、つま先を下に向ける動き(足関節底屈)と、足の裏を内側に向ける動き(内返し)をします。
⒈座って足を前に出しましょう。
⒉足の指を曲げ、つま先を反らします。足の外側を持ち上げる意識で行います。
⒊つま先を下に下げます。足の裏を内側に向けていきましょう。
⒋繰り返し実施します。
長母趾屈筋
長母趾屈筋も、ふくはらぎにある筋肉です。足の親指を曲げる働きやつま先を下げたり、足裏を内側に向ける働きがあります。
また、足の内側アーチをつくる筋肉でもあります。アーチが崩れると、衝撃を十分に吸収できず、アキレス腱への負荷が大きくなる可能性もあるのです。
⒈座った状態で、片足を前に出します。
⒉踵をつけたまま、つま先を反らします。
⒊手でつま先を包み込み、親指を反らします。
⒋次に、手で抵抗を加えながら親指を曲げましょう。
⒌親指を反らす動きと曲げる動きを繰り返し行います。
長趾屈筋
長趾屈筋は、足の人差指〜小指を曲げる動きやつま先を下げる動き、そして足裏を内側に向ける働きがあります。
⒈座った状態で、片足を前に出します。
⒉踵をつけたまま、つま先を反らします。
⒊手でつま先を包み込み、人差指〜小指を反らします。
⒋次に、手で抵抗を加えながらを人差指〜小指を曲げましょう。
⒌人差指〜小指を反らす動きと曲げる動きを繰り返し行います。
ふくらはぎの運動
アキレス腱の周りの筋肉を動かした後に、アキレス腱が付着しているふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)のストレッチをしていきます。
ヒラメ筋
ヒラメ筋は腓腹筋と合わせて下腿三頭筋と言いますが、腓腹筋とは異なり膝関節をまたいでいない筋肉です。ヒラメ筋は姿勢を支えたり、歩行やランニングの際など日常的に使われる筋肉でもあります。
⒈座った状態で、片足を前に出します。
⒉足の指は曲げ、つま先を反らします。
⒊次に、足の指を曲げたままつま先を下げましょう。
⒌繰り返し行います。
腓腹筋
腓腹筋は、太ももの裏から踵にかけて走っている筋肉です。つま先を下げるだけでなく、膝を曲げる働きもあります。
⒈椅子に座った状態で、片足を前に出します。膝を伸ばしましょう。
⒉足の指は曲げ、足首を反らします。
⒊次に足の指を曲げたまま、つま先を下げましょう。
⒋繰り返し行います。
アキレス腱炎の再発予防トレーニング
前方重心になると、ふくらはぎの筋肉が常に頑張りすぎてしまい負担が掛かります。反り腰になると、下腿三頭筋が頑張っているケースが多いです。そのため、反り腰を改善することは、アキレス腱への負荷を軽減する一つの方法です。
また、股関節や膝関節などが硬いと、足首にも負担が掛かるので、可動域を保つことも予防に繋がります。
ハンドレッド
筋肉や腰が反らないように腹圧を保つ筋肉を使います。
⒈仰向けになって寝ていきます。股関節、膝関節は90度です。
⒉上体を持ち上げていきましょう。
⒊できる方は手を身体の横に下ろし、水面を優しく叩くように手を動かします。
腸腰筋ストレッチ
腸腰筋は、骨盤を前に傾ける作用があります。そのため反り腰の方は硬くなっている方が多いです。先ほど使ったお腹の感覚を意識し、腰が反らないよう気をつけながら、股関節の前面にある腸腰筋のストレッチを行いましょう。
⒈膝立ちになり右足を一歩前に出しましょう。
⒉左手を持ち上げて、身体を右へ倒します。
ダウンドッグ
腿裏のハムストリングスとふくらはぎの下腿三頭筋をストレッチしていきます。ハムストリングスは、デスクワークの方が硬くなっているケースが多い筋肉です。ハムストリングスの緊張が高まると、股・膝関節の動きが制限されたり、ふくらはぎの筋肉とのバランスが崩れる可能性があります。
このストレッチは負荷が高いストレッチになので、痛みが治ってから様子を見て行うようにしてくださいね。
⒈四つ這いの姿勢になりましょう。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにします。
⒉股関節を引き込むようにお尻を後ろに下げましょう。
⒊ゆっくり膝を浮かして、お尻を天井に向かって引き上げます。腰が丸くならないように意識しましょう。
⒋踵を上げたり下げたりすることでふくらはぎのストレッチも行えます。
まとめ
今回は、アキレス腱炎にオススメなストレッチ方法やマッサージを紹介しました。アキレス腱炎の原因は、アキレス腱の動きが悪くなることで痛みに繋がっているケースがあります。
その状態で、アキレス腱のストレッチをしてしまうと、さらに痛みが悪化してしまったり改善しない場合も多いです。
まずは、アキレス腱の周りの筋肉や組織の滑りを滑らかにし、アキレス腱を動かした際の負担を減らしていきましょう。
また、アキレス腱に負担が掛かっている原因を解消し、再発予防することが重要です。反り腰や関節が硬い方、足のアーチが低下している方などは、トレーニングやストレッチをすることで、アキレス腱の負担を減らしていけると良いですね。
あなたの健康な体作りのお手伝いができましたら幸いです。

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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