【理学療法士が解説】ヒラメ筋の起始・停止や作用は?腓腹筋との違いも解説
公開日:2025.04.28
文:内藤 かいせい(理学療法士)
ヒラメ筋には、どのような作用や役割があるのか詳しく知りたい方はいませんか?この筋肉は下腿についており、足関節の運動や姿勢維持などのさまざまな役割を担っています。
この記事では、ヒラメ筋の概要や具体的な役割、腓腹筋との違いをご紹介します。ヒラメ筋の特徴を知ることで、効果的なアプローチにつなげられるでしょう。
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ヒラメ筋とはどんな筋肉?
ヒラメ筋とは、下腿後面についている筋肉です。ヒラメ筋の起始・停止や支配神経について、以下の表にまとめました。
起始 | 腓骨頭、腓骨後面 脛骨のヒラメ筋線、内側縁 腓骨・脛骨間のヒラメ筋腱弓 |
---|---|
停止 | 途中で踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部に付着 |
作用 | 足関節の底屈(かかとの挙上) |
支配神経 | 脛骨神経(L2〜S2) |
ヒラメ筋は腓腹筋の内側についている筋肉で、この2つをまとめて「下腿三頭筋」と呼びます。ヒラメ筋の触診方法としては、まず被検者に腹臥位になってもらい、膝関節を90度屈曲します。その状態で足関節の底屈運動をしてもらうと、腓腹筋の両側からヒラメ筋の筋収縮の視認および触知が可能です。
ヒラメ筋の役割
下腿の筋肉であるヒラメ筋には、どのような役割があるのでしょうか。ここでは、具体的な役割を解説します。
足関節の底屈
ヒラメ筋のおもな作用が足関節の底屈運動です。この底屈運動は、普段の生活でも頻繁に行われています。ヒラメ筋が使用される動作の代表例は、以下のとおりです。
● 階段の上り下り
● ジャンプ
● つま先立ち
このように、ヒラメ筋は普段何気なく行っている動作に強く関わっている筋肉といえます。
立位姿勢の維持
ヒラメ筋はさまざまな動作に関わっているだけでなく、立位姿勢を維持する役割もあります。普段から意識していなくても、立った状態を維持するために足関節の筋肉が常に働いているとされています。
この働きにヒラメ筋も関わっており、身体が前後に傾かないように調整しているのです。
また、ヒラメ筋は赤筋(遅筋)線維が多く含まれているとされているため、長時間の持続的な運動に適しています。
このヒラメ筋の特徴によって、立位時の長時間の姿勢維持に貢献しているのです。
筋ポンプ作用
ヒラメ筋は、筋ポンプ作用によって下半身の血液の循環を促す働きがあるとされています。
ヒラメ筋を含めたふくらはぎの筋肉が収縮すると、その周辺の血管が押し縮められて、血液が心臓に向かって流れやすくなります。
このポンプのような動きによって、血液循環をサポートしているのです。この特徴から、下腿三頭筋は「第二の心臓」と呼ばれることもあります。
もしヒラメ筋が衰えて筋ポンプ作用が弱まると、血液やリンパ液がうまく循環せず、足のむくみの原因となります。むくみ予防のためには、ヒラメ筋の筋力維持が重要です。
ヒラメ筋と腓腹筋の違い
腓腹筋は、ヒラメ筋を覆うようについている筋肉です。どちらも同じ下腿筋ですが、作用や筋線維に違いがあります。腓腹筋の起始・停止や支配神経は、以下のとおりです。
起始 | 外側頭:大腿骨外側上顆 内側頭:大腿骨内側上顆 |
---|---|
停止 | 途中で踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部に付着 |
作用 | 足関節の底屈(かかとの挙上) 膝関節の屈曲 |
支配神経 | 脛骨神経(S1、S2) |
腓腹筋は大腿骨に起始しているため、足関節底屈の作用だけでなく、膝関節屈曲にも働きます。
また、赤筋線維が豊富なヒラメ筋とは異なり、腓腹筋は白筋(速筋)線維が多く含まれているのが特徴です。
そのため、腓腹筋はダッシュやジャンプなどの瞬発的な運動で優位に働く傾向にあります。
ヒラメ筋の鍛え方
ヒラメ筋を鍛えるには、どのようなトレーニングを行えばよいのでしょうか。ここでは、具体的なトレーニング方法をご紹介します。
カーフレイズ
カーフレイズは、シンプルなかかと上げのトレーニングです。
【カーフレイズのやり方】
2. 足を肩幅程度に広げ、つま先を前向きにする
3. かかとをゆっくり上げる
4. かかとを上げきったらゆっくりと下ろす
5. 3〜4の手順を15〜20回×2〜3セット行う
ワンレッグカーフレイズ
ワンレッグカーフレイズは、片足で行うカーフレイズのことです。通常のカーフレイズよりも、ヒラメ筋や腓腹筋に強い負荷をかけられます。
【ワンレッグカーフレイズのやり方】
2. 片足で立つ
3. かかとをゆっくり上げる
4. かかとを上げきったらゆっくりと下ろす
5. 3〜4の手順を15〜20回×2〜3セット行う
シーテッドカーフレイズ
シーテッドカーフレイズとは、座った状態でかかとを上げるトレーニングです。膝を曲げて行うため、腓腹筋よりもヒラメ筋が優位に働きやすくなります。
【シーテッドカーフレイズのやり方】
2. かかとを上げる
3. ゆっくりかかとを下ろす
4. 2〜3の手順を20回×2〜3セット行う
負荷量に物足りなさを感じた場合、手で膝をおさえたり、重りを乗せたりしてみましょう。
ヒラメ筋のストレッチ方法
ヒラメ筋の柔軟性を高めるためには、ストレッチの実施も大切です。ここではヒラメ筋のストレッチ方法をご紹介します。
【ヒラメ筋のストレッチのやり方】
2. 立てた足のかかとを床につける
3. 少しずつ前傾姿勢になり、立てた足を背屈させる
4. かかとが離れない程度に背屈させた状態を20秒ほどキープする
5. 反対の足で行う
ヒラメ筋の特徴をおさえておこう!
ヒラメ筋は下腿三頭筋の1つで、足関節の底屈に働く筋肉です。底屈運動だけでなく、姿勢の維持や筋ポンプ作用などの役割もあります。
ヒラメ筋の機能を維持するためには、トレーニングやストレッチを行うことが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、ヒラメ筋の特徴やアプローチ方法をおさえておきましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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