膝の水を抜くストレッチはあるの?原因や対処法も合わせて解説!
公開日:2025.05.01
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
「膝の水が溜まっている気がするけど、どうしたら良いの?」「こんなことで病院に行くのも大袈裟だし、自分でなんとかできる方法はないの?」というお悩みはありませんか。
膝の水の正体は、関節液(滑液)と呼ばれる液のことを指します。本来、この関節液があることで、膝関節を滑らかに動かすことができます。
しかし膝の使いすぎや摩擦などが原因で炎症が起こり、関節液の分泌量が増えたり、異質な液体(浸出液など)が漏れ出す可能性があります。その結果、関節内に水が溜まってしまうのです。
膝の水が溜まる原因を理解し、適切な治療や予防法を取り入れることで、症状の改善や再発防止に繋がります。
当記事では、膝に水が溜まる原因やその対処法、予防のためのストレッチ方法について詳しく解説します。
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膝の水が溜まる原因
膝の水が溜まる原因は、主に関節内の炎症です。
具体的には、変形性膝関節症による炎症や半月板・靭帯など膝の組織を損傷した際に起こる炎症などが挙げられます。
さらに詳しく解説をしていきますので、あなたの症状と比べながら読み進めてみてください。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が徐々に変形し、すり減っていく病気です。
軟骨がすり減ることで、滑膜と呼ばれる膜に炎症が起こり、痛みや膝の水の貯留といった症状を引き起こします。
また膝関節が変形すると、関節内にかかる圧が不均等になることもあります。
その結果、関節内の圧が高まり、血管やリンパ管などにも影響を及ぼし、関節液が漏れ出すのです。
変形性膝関節症は、中高年の女性に多く見られ、その数は年齢とともに増加します。
以前は「がにまた」ではなかったのに、「気をつけ」の姿勢を取っていると、両膝の間がこぶし一個分ほど離れていたり、正座をすることが難しい場合などは、変形性膝関節症の可能性があります。1)
半月板や靭帯損傷
若い方の場合は、半月板や靭帯損傷により水が溜まることがあります。スポーツなどの大きな衝撃で損傷してしまうと、滑膜に炎症が起こり、膝に水が溜まることがあります。
半月板損傷の場合は、膝を曲げ伸ばしする時に、膝が引っかかるような感覚があったり、膝を伸ばした際にロックされて曲げられなくなる(ロッキング)症状が見られるケースが多いです。
また靭帯損傷の場合は、強い衝撃とともに痛みが走り、関節の動きが制限されます。
サッカーやバスケなどをしている際によく起こり、断裂している場合には、膝が不安定になるため歩けないこともあります。
手術後の反応
膝関節の手術をした後にも、炎症が起こるため水が溜まることがあります。手術後は、数日間に渡り創部の熱感や腫れ、痛みなどが生じ、一般的な反応です。
しかし長引く場合には、細菌感染などが起こっている可能性もあるので、その場合には医療機関を受診しましょう。
膝の過使用(オーバーユース)
膝を使いすぎている場合、膝に負担がかかり炎症を引き起こすことがあります。
日常的に、階段の上り下りを行う機会が多かったり、スポーツ選手などで過度なトレーニングを行う場合には注意が必要です。
関節リウマチ
特に思い当たる外傷や変形などがないにも関わらず、水が溜まっているという場合は、関節リウマチと呼ばれる病気の可能性もあります。
関節リウマチは、関節内の滑膜が異常に増殖することにより、慢性的な炎症を引き起こす病気です。進行すると関節が破壊され、腫れや痛みなどを感じます。
関節リウマチは、どの年代にも起こりますが、特に30〜40歳代の女性に多く発症する病気です。2) 両方の手足の指の関節が対称的に腫れたり、こわばりを感じる場合は、受診することを推奨します。
膝の水を抜くストレッチはあるの?
膝に水が溜まる原因を取り除くためのストレッチは、ある程度効果がありますが、直接的に水を抜くわけではありません。膝の水を抜くためには、医師による治療が必要です。
しかし、膝周辺の筋肉を柔軟に保ったり、体の使い方や骨の位置(アライメント)を整えることで膝への負担を軽減し、水が溜まりにくい状態をつくることはできます。
膝の水が溜まった時の対処法
「膝の水がすでに溜まってしまったんだけど、どうしたら良いの?」「膝の水を抜くとクセになるからよくないって聞いたけど、どうするべき?」という疑問があると思います。
そんな時にどのようにしたら良いのか、具体的な対処法について解説をします。
膝の水を抜く(関節穿刺)
関節液が溜まっている場合、早期に膝の水を抜くことをオススメします。「クセになるからあまり抜かない方が良い」と思われる方も多いですが、その心配は不要です。
膝に水が溜まる要因は、炎症です。そのため炎症が改善しない限りは、水は溜まり続けます。
関節液には、炎症を引き起こすサイトカインと呼ばれる物質が含まれているので、除去することで早期に炎症を抑えたいのです。
また関節液の色や性質を見ることで、炎症の原因がある程度わかるとも言われています。そのため水を抜き、炎症の原因をはっきりさせることで、早期改善に繋がる可能性は多いにあります。
ヒアルロン酸の注入
ヒアルロン酸は、関節の軟骨を保護する働きがあります。そのため異常な関節液を抜いてから、ヒアルロン酸を注入することで、軟骨を守りさらなる炎症を予防するのです。
その方の原因や状態、生活スタイルなどにより最適な方法は異なりますので、主治医に相談することをオススメします。
痛み止めの使用
痛みが強く我慢できない場合は、痛み止めを使用することも検討してください。
痛み止めを使用することは、根本的な治療にはなりませんし、使用したからといって膝の水が減る訳ではありません。
しかし痛みを我慢して過ごすことで、痛みに敏感になり長引いてしまう可能性があります。
そのため、無理に我慢しすぎずに、痛み止めを頼るということも一つの手段としてご利用ください。
リハビリテーション
膝の水が溜まる原因の一つとして、体の使い方や筋肉のアンバランスなどにより膝に負担がかかっていることが挙げられます。そのため医者や理学療法士のもと、膝関節の負担を減らすトレーニングを行なったり、負担のかかりにくい動作方法を教えてもらうことをオススメします。
骨が変形してしまうと、その変形自体をリハビリで改善させることは難しいです。
そのため、なるべく早期からトレーニングを行い、関節に負担の少ない体作りを行っていけると良いですね。
膝の水が溜まるのを防ぐストレッチ&トレーニング
膝の水が溜まるのは、炎症が主な原因でした。そのため水を減らすためには、関節液を抜くことと、さらに膝に負担がかからないようにすることがポイントです。
特に、膝周りの筋肉のバランスが崩れていたり、太ももの骨と膝下の骨の位置が乱れていると負担がかかったり、怪我をしやすくなります。よってここでは、膝周りを整えるストレッチやトレーニングを紹介します。
ハムストリングスストレッチ
ハムストリングス とは、膝関節の後ろ側を通り、膝を曲げる働きを持つ筋肉です。
ハムストリングスが硬くなると、膝周りの筋肉のバランスが崩れるため、負担がかかりやすくなります。
そのため、膝関節に大きな影響を与えるハムストリングスのストレッチを紹介します。

⒉ゆっくりと膝を伸ばし、腿裏が伸びるのを感じましょう。
⒊この時、つま先と膝の方向が一致するように意識しましょう。膝が内側に入ってしまう方は、次に紹介している股関節外旋筋群トレーニングをぜひ取り入れてみてください。
大腿四頭筋トレーニング
大腿四頭筋という太ももの前の筋肉を鍛えていきます。変形性膝関節症の方の多くは、大腿四頭筋が弱くなり、膝関節の安定性が乏しくなっています。
また変形性膝関節症でなくても、大腿四頭筋のうちの一つである内側広筋が弱くなり、太ももの骨と膝下の骨の捻れを生み出している場合もあります。
若い方でも弱くなっていることが多いため、ぜひ取り入れていくことをオススメします。
ただし膝の過使用によって痛みや炎症が出ている場合は、負荷が高くなるケースもあるので無理しないようにしましょう。
⒊前に出した足に体重を掛けます。つま先と膝が一直線になっていることを意識し、ゆっくり膝を伸ばします。
⒋膝の曲げ伸ばしを繰り返しましょう。
股関節外旋筋群トレーニング
変形性膝関節の方は、O脚になった結果、膝の内側に過剰な圧がかかっている方がほとんどです。
若い方でO脚の場合、多くが太ももの骨が内側にねじれて(股関節内旋して)います。
そのため将来、変形性膝関節症になることを予防するために、取り組みたいトレーニングを解説します。
また股関節が内旋していると、膝の靭帯が緩み、関節が不安定になりやすいので、怪我を予防するためにも重要なトレーニングです。

⒉骨盤は真っ直ぐ保ったまま、股関節から開きます。踵はつけたまま維持しましょう。
⒊お尻の奥の方を使っている感覚を持ちながら行います。
ショルダーブリッジ
現代の多くの方は、生活スタイルなどが影響し、腿裏の筋肉や内腿の筋肉が弱くなっている方が多いです。
また特に女性では、膝下の骨が過度に外にねじれている方も多くいらっしゃいます。そういった筋肉のバランスは、太ももと膝下の骨がねじれいている状態(下腿外旋症候群)であり、膝関節に負担をかけているのです。
そのような筋肉のバランスを整えていく運動を紹介します。
⒊背骨が少しずつ床から離れるように、お尻を上げていきましょう。
⒋脚が開きたくなる方は内転筋が使えてないケースが多いです。膝の間にボールを挟み、落ちないように意識してみましょう。
⒌つま先と膝を一直線に保つことがポイントです。
まとめ
今回は、膝の水が溜まる原因と対処法を中心にお伝えしていきました。また膝の水が溜まらないようにするためにはどうしたら良いのかという予防法も合わせて紹介しました。
膝の水が溜まるが起こる主な原因は、炎症です。
そのため基本的に、膝の水が溜まった時は自己流ではなく、整形外科を受診し医師の指示に従うことを推奨します。
またなぜ炎症が起こっているのか、どうしたらその炎症が治るのかという視点で考えていくことが再発や重症化を防ぐポイントです。
外傷などが原因で、やむ終えず起こることもありますが、体の使い方次第で予防できるものも沢山あります。日頃からのケアの積み重ねで、ぜひ予防できる方が増えることを祈っています。
当記事が膝の水が溜まっていたり痛みに悩んでいる方の不安解消に繋がれば幸いです。
参考文献
1)公益社団法人 日本理学療法士協会:理学療法ハンドブック シリーズ 7 変形性膝関節症
2)公益社団法人 日本整形外科学会:関節リウマチ
3)笠原 靖彦ほか.人工関節とスポーツ I.TKAあるいはUKA後のスポーツ活動 TKA後のスポーツ活動-Knee Society scoreによる評価と検討-『関節外科』31(11), pp1295-1298, 2012

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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