【疲れやすい方必見】自律神経を整える簡単ストレッチ3選
公開日:2025.05.05
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
「なんだか最近疲れやすい」「眠りが浅くてぐっすり眠れない」「ストレスが解消されなくて困っている」といったお悩みはないでしょうか。
これらの症状は、自律神経の乱れが原因かもしれません。
自律神経は、私たちの体の調子を整える働きを持ちます。
しかし、慢性的なストレスや生活習慣の乱れなどが原因で、心身の不調を引き起こす可能性があります。
当記事では、自律神経を整えるために自宅で簡単に行えるストレッチ方法を解説します。
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そもそも自律神経って何?
自律神経とは、体の中のホルモンや血管、内臓などの働きを調整している神経です。自律神経は、交感神経と副交感神経という二つの神経に分けられます。
交感神経は、体の活動を高める時に優位に働く神経で、心拍数を上げたり筋肉を緊張させる働きを持ちます。
副交感神経は、リラックスした時に優位に働く神経です。心拍数を落ち着かせる働きなどに加え、腸の動き(蠕動運動)を活性化させるなど消化機能にも関わります。
つまりその時の状態に応じて、交感神経と副交感神経がお互いにバランスを取りながら、全身の機能を調整しているのです。
自律神経が乱れると起こる主な症状
現代人は、デジタルデバイスの使用や運動不足などの影響から、自律神経が乱れやすい傾向にあります。
特に交感神経が優位になっている時間が長く、緊張状態で活動モードになっていることが多いのです。その結果、どのような症状が起こるのか具体的に解説します。
ストレスや不安感
交感神経が優位になると、体は常に活動的な状態になります。具体的には、心拍数が上がったり筋肉が緊張するため、ストレスや不安を感じやすくなるのです。
一時的に交感神経が優位になることは、人間が活動するために必要な反応ですが、長時間に渡り交感神経優位な状態が続くと、精神的に不安定になってしまいます。
睡眠障害
自律神経は、睡眠と大きく関係しています。本来、副交感神経が優位になりリラックスした状態が続くと、眠気が生じ入眠することができます。
しかし自律神経が乱れ交感神経が優位になっていると、活動モードのままとなり、なかなか寝付くことができなくなるのです。
仕事で疲れていたりストレスが溜まっていると眠りが浅いという方も多いと思いますが、それは自律神経の乱れが原因となっている可能性もあります。
消化器官の不調
本来、副交感神経が働くことで腸の動きが活性化されます。
しかし自律神経が乱れ、交感神経が優位になる時間が長いと、消化液の分泌が減ってしまうのです。
そのため、便秘になったり排泄が困難になる可能性があります。
頭痛や肩こり
交感神経が優位に働くと、筋肉が緊張したり、血管が収縮し血流が悪化します。
その結果、酸素や栄養素が供給されにくくなり、乳酸などの老廃物が蓄積し、痛みに繋がるケースがあります。
また緊張した筋肉が神経を圧迫し、痛みをさらに引き起こす場合もあるのです。
疲れやすさや倦怠感
交感神経が優位な時間が続くと、体が活動モードになっているため、エネルギーを多く消費しやすくなります。
また、ストレスや睡眠不足なども合わさってより疲れやすくなるのです。
体が疲れている訳ではないはずなのに、なんだか疲れがとれないという方は、自律神経の乱れが影響しているかもしれません。
自律神経が乱れた時の対処法
自律神経は、食事や睡眠、ストレス、運動など、日常生活のさまざまな要因によって乱れます。
なかでもデスクワークの時間が長い方は注意が必要です。デスクワークをしていると、猫背姿勢で背骨が固まり、神経に負担がかかったり呼吸が浅くなります。
また、同じ姿勢が続くことで、血流が悪化します。これらはすべて自律神経が乱れる要因なのです。
そうは言っても仕事を辞める訳にはいかないですし、姿勢や環境を変えることも難しいでしょう。
そのため、自律神経が乱れた時に、どのように対処したら良いのか具体的に解説します。
深呼吸
まず簡単に行える方法として、深呼吸があります。場所を選ばずに行えるので誰でも簡単に行えます。
具体的な方法は以下の通りです。
・4秒で息を吸い、8秒で息を吐き切る5)
普段、私たちは特に意識をしていなくても、無意識的に呼吸をすることができます。それは、自律神経が無意識的に働き調整しているからです。
同時に、呼吸に関わる筋肉(横隔膜など)は、意識的に動かし調整することもできます。
実際に、横隔膜を意識してゆったりとした呼吸を行うと、副交感神経は優位になると言われているのです。1)2)3)
ストレッチやヨガ・ピラティス
ストレッチやヨガ・ピラティスは、筋肉の緊張をほぐし、副交感神経を活性化させる働きがあります。
特にピラティスでは、背骨を動かしたり呼吸に意識を向ける動きが多く、自律神経のバランスを整えるのにぴったりです。
さらに姿勢を整える効果もあるため、背骨や神経への負担も軽減することができます。
またヨガのレッスンでは、瞑想やマインドフルネスの要素を取り入れいているものも多く、副交感神経を活性化させるために有効的です。
具体的な方法は最後に解説していますので、ぜひ一緒に見ながら取り組んでみてください。
お風呂に浸かる
温かいお風呂に浸かることも、自律神経を整えるために効果的です。
具体的には、39〜40程度のお湯に浸かることで、副交感神経を活性化させると言われています。6) ぬるめのお湯に10〜20分ほどゆっくり浸かることで、血行を促進し筋肉を緩め、全身をリラックスさせる働きもあります。
普段、忙しくてシャワーで済ませてしまう方も多いかもしれませんが、ご自身を労わるためにもぜひお風呂に浸かってみてくださいね。
長時間お湯に浸かるのが苦手という方は、アロマオイルやキャンドルなどを持ち込むこともオススメです。
規則正しい生活
人間には、「サーカディアンリズム」と呼ばれる生体内時計が存在します。
サーカディアンリズムは、自律神経と密接な関係を持つため、規則正しい生活を送ることは非常に大切なのです。
例えば、以下のようなことを意識してみましょう。
・規則正しい時間に食事を取る
・休日も平日と同じ時間に起きる
特に、休日も平日と同じような生活をするのは難しいかもしれませんが、疲れにくい体を作るためには実はとても重要なポイントです。
自然のある場所で歩く
森林や公園の中で過ごすことで、心拍数や血圧を落ち着かせ、交感神経と副交感神経のバランスを整える効果があります。
さらに自然の中でウォーキングをすると、その効果は向上すると言われているのです。
なかなか近くに森林がないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし大きな森林までいかなくても、近くの公園などでも効果はあると言われています。
ぜひ家から出て近くの公園まで行き、ウォーキングをしてみてください。
簡単にできる!自律神経を整えるストレッチ&ヨガ・ピラティス3選
日常生活でも意識できる対処法をお伝えしてきました。
毎日の生活の中で意識していただくことはもちろん大切ですが、もし今すでに自律神経の乱れにお悩みの方は、ケアする時間を取っていただけるとより快適に過ごせるようになります。
それでは具体的に、自律神経を整えるストレッチとヨガ・ピラティスを紹介します。
キャットアンドカウ
自律神経を整えるために、まずは背骨を動かしていきましょう。首から腰までたくさんの背骨が積み重なっていますので、猫の伸びをイメージしてしなやかに動かします。
特に、猫背姿勢の方は、首の下から肩甲骨の間のあたりにかけて(上位胸椎)の動きが悪くなっている方が多いので、意識していきましょう。
⒈四つ這いになります。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにします。
⒉息を吐きながら背骨を丸めます。
⒊次に息を吸いながら、背骨を反らしましょう。
⒋繰り返し行いましょう。
ショルダーブリッジ
次に、背骨を柔軟に動かしながら姿勢を整えるエクササイズを行います。現代人は、肋骨が開いていたり、お尻が前に出やすい姿勢の方が大変多い印象です。
どちらのパターンにも効果的ですので、ぜひすべての方に取り組んでいただきたい運動です。
⒈仰向けになり、足の幅は拳1個分にしましょう。
⒉骨盤を自分の方に傾けます。
⒊背骨が少しずつ床から離れるように、お尻を上げていきましょう。
⒋脚が開きたくなる方は内転筋が使えてないケースが多いです。膝の間にボールを挟み、落ちないように意識してみましょう。
⒌つま先と膝を一直線に保つことがポイントです。
チャイルドポーズ
最後に、呼吸を深めるヨガのポーズを紹介します。特に交感神経が優位になっている方は、肋骨が開き、背中に呼吸が入りにくい方が多いです。
そのため背骨を丸くし、背中に呼吸を促していきましょう。
⒈正座になります。
⒉前に身体を倒して、手を頭の下にいれます。
⒊背中側に空気を入れる意識で、呼吸をしましょう。可能な方は、4秒で息を吸い、8秒で吐くことができるとより効果が高まります。
まとめ
今回は、自律神経を整えるためのストレッチを紹介しました。
自律神経が乱れると、ストレスや睡眠障害、頭痛や肩こりなど心身ともに不調を引き起こす可能性が高まります。
自律神経を整えるためには、深呼吸を促したり背骨を動かすことがとても重要です。普段から姿勢が悪かったり、運動不足が続いている方は意識的に行なっていけると良いでしょう。
またそれ以外にも、普段からストレスを溜めないように工夫したり、お風呂に浸かるなどすることも効果的です。
デジタルデバイスや不規則な生活が原因で、自律神経が乱れている方も沢山いらっしゃるので、不調が出る前に日頃からケアをしていけると良いですね。
あなたの健康な体作りのお手伝いができましたら幸いです。
1)Hayano J, Mukai S, Sakakibara M. Effects of respiratory interval on vagal modulation of heart rate. Am J Physiol 1994 ; 267 : 3-40.
2)Sakakibara M, Hayano J. Effect of slowed respiration on cardiac parasympathetic response to threat. Psychosom Med 1996 ; 58 : 32-37.
3)福本真理,坪井かほる,大海理香,他.腹式呼吸は心筋梗塞急性期の副交感神経を賦活させる.心臓リハビリテーション.1998;3:97-100.
4)Chalaye P, Goffaux P, Lafrenaye S, Marchand S. Respiratory effects on experimental heat pain and cardiac activity. Pain Med. 2009 Nov;10(8):1334-40.
5)Thayer, J. F., & Lane, R. D. (2012). Respiratory sinus arrhythmia: A predictor of health and resilience. Biofeedback, 40(1), 9-23.
6)Kojima, S., & Uchiyama, M. (2011). Effects of bathing on the autonomic nervous system and physical relaxation: A review of the literature. Journal of Physiological Anthropology, 30(5), 239-248.

服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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